※関連記事
まんが劇画ゼミ 7巻(1980年2月25日)
上記関連記事での国立国会図書館で、当たれなかった文献、または所蔵できなかった文献が京都国際マンガミュージアムにないか、事前にメールを通じお伺いしたのだけど、目を通しておきたかった文献が所蔵されているってことだった。そのため、日本マンガ学会海外マンガ交流部会第5回例会「海外マンガの多様性」を聴講するのに京都国際マンガミュージアムの3階 研究室1に赴く用事があったため、それが始まる12:30より前に隣の研究閲覧室を訪ねる。
・京都国際マンガミュージアム
http://www.kyotomm.jp/
・公開研究会/日本マンガ学会海外マンガ交流部会第5回例会 海外マンガの多様性 | 京都国際マンガミュージアム - えむえむ
http://www.kyotomm.jp/event/study/20130310.php
下記関連記事にあるように研究閲覧室の利用登録は済ませていた。もちろん読みたい文献の予約をメールにて済ませていた。
※関連記事
少年ワールド、コミックトム
・研究閲覧室 | 京都国際マンガミュージアム
http://www.kyotomm.jp/collection/
昼前から昼過ぎまで雨が降るかもという予報を気にしつつ、すっかり暖かくなった中、自転車で京都市内を急ぐ。幸い、同日開催の京都マラソン2013のコースに近付く道ではなかった。パラパラと水滴が体に付く感覚はあったものの、特に降られることもなく、開館時間の10時を過ぎたあたりに無事、京都国際マンガミュージアムに到着。直に研究閲覧室を訪ね、早速、件の文献を出して頂く。それは当時、私設だった現代マンガ図書館から刊行された『漫狂』2号「特集・横山光輝」(1979年11月25日)だ。これが事前にも結果としても今回の主目的になったので記事題名にしている。
・明治大学 現代マンガ図書館
https://sites.google.com/site/naikilib/
その雑誌を知った、竹内オサム/著『本流!マンガ学 マンガ研究ハンドブック』(晃洋書房2009年4月)の左綴じの方の「マンガの批評研究誌 もくじ一覧」だった。ちなみにこの雑誌は「まんきち」と読むらしい。下記関連記事で少し触れたが、今では自粛して変更してしまいそうなタイトルだね。
※関連記事
JTB旅物語 蜀の英雄を辿る 三国志浪漫の旅 12日間(2012年10月-)
それでその特集の冒頭はPP.2-7「●特集・横山光輝● インタビュー 生きたキャラクターを生き生きと描きたい」(聞き手・内記稔夫館長)に目を通す。下記に引用するここのP.5でも加来耕三「今なぜ横山光輝「三国志」が面白いか」(『潮』Vol.393 (199112) PP.266-273 潮出版社 )の記載同様に、小説の吉川英治『三国志』のみを参考にしているのは否定されている。
━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
横山 まあ、手塚さんも「西遊記」など描いていますが、「水滸伝」や「三国志」は誰も残していないでしょう。
内記 だいたい吉川英治さんの?
横山 ええ。だけど「水滸伝」の場合は岩波のものをもとにしていますし、「三国志」となると、これはいろんな人が書いていますからね。だいたいみんな同じような話なんですが、人間の幅の広げ方、これが作家によって違う。それを私なりに、選び出して描いているわけです。
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
このインタビューのそれ以外のところでは、今の清岡的に特筆すべきことはなかったので、少々ガッカリした気分でどの雑誌を閉じた。しかし後で念のために読み返すと、重要なことを見落としていたことに気付く。それはPP.10-12の綿引勝美(不知火プロ編集部長)「●特集・横山光輝● エッセイ 編集者からみた横山光輝と横山作品」だ。事前に注釈として書くと、その雑誌にある年表によると、『バビル2世』は1971年、『少年チャンピオン』より連載開始されたそうな。まず、P.10からの引用。下記。
━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
横山さんとのおつきあいは、今から九年前のこと、TVアニメ化もされた、あの『バビル2世』を担当した時からだ。それまでは、私が学漫出身ということもあってか、どちらかというと新人育成係をおおせつかっていた(もっとも、ビッグ作家を担当するほど才能に恵まれていなかったということもあるらしい)ので、横山番という大役に大いに武者ぶるいしたものだ。
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
このように1970年ごろに、『バビル2世』の担当という立場の方がこのエッセイの書き手であると書かれており、そういった立場で語られるのはP.11から下記に引用することだ。
━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『バビル2世』をかきつづけると同時に、横山さんは中国物の傑作を次々にものにしていった。それは『水滸伝』であり、『三国志』である。もちろん『水滸伝』がロスの日系の新聞に英訳され、掲載されたことは、熱心な横山さんのファンの方がたなら先刻ご承知のことと思う。
この二作品は、いずれも、横山さんがご自分のお子さんたちに読んで聞かせるかわりに漫画化したというのが、執筆の動機だそうだ。広大な中国を舞台にくりひろげられるドラマが好きだとは横山さんの弁だが、いっくり腰をおとしてかく態度はライフワークにふさわしいものだ。私も上海で発行されている絵本などをお届けするなど、微力ながらお手伝いできたことが嬉しい。また、この二作品にとどまることなく『西遊記』などの他の中国名作にもとり組んでほしいと思うのは私一人だろうか。
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ここで個人的に価値を見出したのが、「私も上海で発行されている絵本などをお届けするなど、微力ながらお手伝いできたことが嬉しい」というところだ。ここの「上海で発行されている絵本など」というのは、冒頭でリンクした関連記事で触れた手塚治虫・尾崎秀樹・副田義也/企画・監修『まんが劇画ゼミ』7巻 (横山光輝.小島剛夕.ジョージ秋山)(集英社 1980年2月25日発行)のP.62の「上海で発行された絵本」と同じと考えるのが自然で、引いては冒頭の関連記事で書いたように、この絵本は上海人民美術出版社の連環画と考えるのが自然のような気がする。そこから推測するに、上海人民美術出版社の『三国演義連環画』は綿引勝美さんにより、横山先生の下へ届けられたということになる。
※追記
時空をかける三国志(2012年10月18日-11月20日)
※追記。上記記事にある講演を聴講しに2012年10月27日土曜日に国立国会図書館 関西館へ足を運んときに、あきよんさんから見せて貰った『歴史読本』臨時増刊 '81-6号のp.109に「その辺のところでは気苦労が多いのですが、最近は中国に関する書物も多く出版されてますし、知人に中国で出されていた『三国志』の劇画版のような本を見付けてもらったこともあり、前よりは楽になりました」とあり、ここでいっているのはまさしく前述の綿引さんが連環画を渡しているという描写じゃないのかな。中国の「絵本」と「劇画版」で連想するのはやはり連環画かな、と。
※追記
横山光輝マガジン オックス 1・2・3合併復刻号(2004年2月25日)
ここからがらりと話が変わり、以前より『蒼天航路』はいつから『週刊モーニング』で連載開始したか気になっていた。数年前、直に会ったついでに、それを『蒼天航路』中心のサイト管理人さんに、話を振るように尋ねるに正確に何号かは把握していないと返ってきた……と別に伏す必要もないので、書くと「蒼天三国志」の曹徳さん。
・蒼天三国志
http://www.h4.dion.ne.jp/~aruiwa/
そこで良い機会なので、大体の年月は把握していたので、「1994年10月の『週刊モーニング』」として今回、予約しておいた。そこで用意されたのが、『週刊モーニング』1994年42号(10・4号)だった。中を見ると『蒼天航路』が見当たらず、さらに、1994年9月29日発売の43号(10・13号)の次号予告を見ても、『蒼天航路』は見られない。当てが外れたな、と思いつつ、パソコンのtxtファイルにそれぞれ「なし」とメモると、あとで、室員の渡辺先生に尋ねてみると、どうやら所蔵情況は研究閲覧室の南側の窓際に置かれた端末で検索できるようで、検索してみると、それ以外の「1994年10月」のものはなかったものの、「47号 11・10号」は所蔵されていた。念のため、それを書庫から出して貰うことにした。時間は12時だったので件の例会があと30分に迫っていてそれを思わず口に出しつつも待つ。
そうすると、保護のためか透明のビニールに入った形で、1994年10月27日発売の『週刊モーニング』1994年47号(11・10号)を持ってきて下さる。その雑誌表紙には『蒼天航路』の曹操が描かれていて、新連載である旨が記述されていた。思わず、持ってきてくださった渡辺先生に向けて思わず「捜していたのはこれです」と漏らした。
中をみると、雑誌の冒頭からいきなり始まっており、しかも冒頭8ページがカラーとなっており、雑誌によるこの連載への力の入れようがよく表れている気がした…と同時期の他の新連載と比べないと何とも言えないが。また、P.29に「正史『三国志』」表記があった。一応、正史誤認史を調査したい身としてはメモを残しておくが。そいてマンガはP.38まで。ちなみに下記関連記事にあるように、途中で休載を挟みつつ、『蒼天航路』は2005年11月10日発売の『週刊モーニング』50号で無事完結している。
※関連記事
2005年11月10日「蒼天航路」堂々完結
※追記
蒼天航路(2013年5月30日毎週木曜日更新)
※追記
SD三国志(1992年8月15日-1993年1月15日)
この『週刊モーニング』に目を通す前は、『マンガ研究』3号(2003年3月20日)、4号(2003年11月27日)を見ていた。それぞれ日下みどり「中国「新漫画」事情」、日下みどり「香港武侠漫画について」に目を通す。これらの号はそれぞれ「第2回大会特集号」「第3回大会特集号」と銘打たれているように、論文ではなく主に大会での報告をテキスト化したもので、論文とはフォーマットが違っていた。一応、付記するが、4号のP.189から研究論文が出てきていた。
ここで着目するのは連環画が多く刊行されていた時期で、マンガはどうだったかということだ。まず3号の前述の論文、P.128より下記に引用する。
━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
現在中国では、日本生まれのストーリー漫画は「新漫画」と呼ばれて古くからの1コマ漫画や4コマ漫画と区別され、新しい文化として認識されている。但し、これ以外にも「卡通画・故事漫画・新連環画」などの言い方が通用していて統一されてはいない。いわば文化流入の過渡期における混乱状態にあるというのが現状である。
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ここらへんの文化伝達というのは興味深い。さらにPP.129-130には次のように連環画に関する記述もあった。中国におけるマンガも連環画も、図らずとも政治の影響下、というより時代の流れに影響されたってことで。
━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2 「漫画」は日本語である
ここで肝心の「漫画」という語について考えてみよう。そもそも「漫画」という言葉は中国語ではなく日本語であった。これについて、畢克官氏は著書『中国漫画史話』で次のように述べている
「上述したように、中国の古代には“漫画”という呼称は存在しなかった。漫画が飛躍的に発展した清代末期、民国初期においてさえも、まだこの呼称はなかった。では、何時からわが国に“漫画”という呼称が現れたのか。それは1925年のことである。…こうしたいきさつで、豊子愷の作品は『文学週報』に連載され、“漫画”と名付けられた。豊子愷は後に当時を回顧して、「“漫画”の二字はたしかに私の絵に初めて使われたものである。それは私自身が付けたのではなく、編者がこれを『子愷漫画』と名付けたのである」と述べている。この名付け親こそ、編集長鄭振鐸であり、それは1925年5月のことであった。…“漫画”という呼称が最も早く使われたのは日本においてである。日本の徳川時代、葛飾北斎を中心とする八大漫画化が“随意画”という意味で、この呼称を用いたのが始まりといわれている。それ以来、日本ではずっとこの呼称が用いられていた。したがって、“漫画”という呼称が中国で用いられるようになったのは、日本の影響によるものであるということは確かなことである。」(『中国漫画史話』畢克官、落合茂訳、筑摩書房、1984年、86頁)
ここで使われている「漫画」という言葉は、勿論「新漫画」ではなく本来の漫画、すなわち滑稽や諷刺を表す1コマ漫画や4コマ漫画のことである。中国では民国以来、新聞漫画などでかなりの発展をみていた。物語性のあるものもあり、張楽平の『三毛流浪記』などの名作も出ていた程である。ただ、漫画家の数は多くはなく、子供向けのものは皆無といってよい状態であった。
その後、中華人民共和国成立後は、数多くの連環画が出版されたが、大半は政府のプロパガンダや、教育効果の高い「革命的な模範少年」もの、或いは無難な『西遊記』などの古典作品に限られており、娯楽性は乏しく、レベルも低かった。今日では誰も進んで読もうとはしないであろう。
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
※追記
横山光輝『三国志』に見られる連環画の再構築 問題意識と目的 初稿
※続き
・海外マンガあれこれ (※2013年3月10日の個人サイトの雑記)
http://cte.main.jp/sunshi/2013/0301.html#10
※追記
天地を喰らう(1983年6月7日-1984年8月21日)
※追記
メモ:三国志フェス2015 水魚の交わりが始まるまで(2015年1月30日)
※追記
知られざる中国〈連環画 (れんかんが) 〉(2015年4月25日-7月5日)
※追記
メモ:知られざる中国〈連環画 (れんかんが) 〉 ~これも「マンガ」?~ (2015年5月24日30日)
※追記
『日本まんが』第弐巻で三国ネタ
※追記
三國志研究第十号(2015年9月5日)
※追記
メモ:国会図書館から米沢嘉博記念図書館へ(2016年1月9日)
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