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まんが劇画ゼミ 7巻(1980年2月25日)


  • 2013年3月13日(水) 10:55 JST
  • 投稿者:
    清岡美津夫
  • 閲覧数
    2,062
書籍 ・青春18きっぷ無事発売 (※2013年2月15日の三国と無関係の雑記)
http://cte.main.jp/calcio/blog.cgi?n=435

 上記の雑記で書いたように、今季も無事、「青春18きっぷ」が発売され、あれこれ旅立つ機会が出来た。それで移動中は下記のように、あれこれ書籍を読んでいた。

・マンガ関連二種 (※2013年3月2日の三国と無関係の雑記)
http://cte.main.jp/sunshi/2013/0301.html#02

 ちょうど初日は土曜日での移動とのことで、下記関連記事と同様、国立国会図書館が開いているので、また足を向けることに。

※関連記事 三国志ジョーカー 単行本未収録分(2011年7月6日-11月5日)

・国立国会図書館サーチ(NDL Search)
http://iss.ndl.go.jp/

 以下、しばし三国と無関係な記述が続く。

 2013年3月2日土曜日、その日は目覚ましで3時に起きて、とある用事を済ませていたんだけど、それがちょっとショックなことが起き、しばし呆然としていたら、時間が迫っていた。なんとか10分、遅れで出発したが、そのままでは乗ろうと居ていた始発に間に合わない。そこで、断続的に走ることに。ちょうど下にBOJAN KRKIC(n.22)のサード・ユニフォームのレプリカシャツを着ていたので(つまり赤黒縦縞ではなく黒がベース)、心の中で、「ボーヤン・クルキッチ」と叫びながら走った。歩いて35分はかかるところを、25分で走破する。5時21分の始発に間に合い、京都駅に到着し、5:30発の列車に乗る。そこから6:36米原駅6:58 7:29大垣駅7:45 9:44浜松駅9:50 10:34島田駅10:44 12:08沼津駅12:21 12:41熱海駅12:46 14:24新橋でここまでがJRだ。前回、有楽町駅で地下鉄に乗ったら、やたら長いところを歩かされたため変えてみた。今回は銀座線で、赤坂見附駅まで行く。160円。そこから永田町駅まで地下で、繋がっているので簡単に行けると思っていた。ところが、誤って先に地上に出てしまい、しばし迷う。その日は風が強い日で豊橋駅あたりでは確か徐行運転になっていたぐらいで、赤坂あたりでは風に背中を押され心地よく前に進めていた。調子よく行っていたら、どうやら方向が違うことに気付き90°ぐらい方向転換して、結局、何やら坂を上ることに。登り切ると、警備が厳重な国会議事堂近くに出て、それを物見雄山で進み、見覚えのある国立国会図書館近くに出る。

 そんな風に遠回りしたものだから、時刻は15時になっていた。前回は雑誌中心だったので、新館に行ったが、今回は初めての本館に足を踏み入れ端末に利用者カードをセットし、閲覧予約をする。
 20分ほどで端末に準備が出来たという情報が来たので、カウンターに行き、カードを渡し、図書を受け取る。
 まずタイトルにある書籍を確認する前に、下記の書き込みにある、連環画についての長野剛氏のコメントを確認するためだ。長野剛『BIGMANスペシャル 三国志英傑イラスト集』(世界文化社2006年7月発売)という画集。『週刊ビジュアル三国志』の表紙絵を集めた構成だ。

・Re:三国志の時代の陣営について   (※「三国志ファンのためのサポート掲示板」内ツリー)
http://cte.main.jp/c-board.cgi?cmd=one&no=3477

 上記、書き込みを見たとき、てっきりインタビューの企画があってそこで連環画を参考にしている云々をおっしゃっているかと思ったら、そうではなかった。あとがき以外は、ひたすら自作の絵についてコメントされていた。
 それらの中で連環画について出てくるのは、劉備、関羽、張飛の三人(創刊号)の、と馬超(14巻)のところだ。以下。

P.8
━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
問題は普通の兜を被せると特徴がなく誰だかわからなくなってしまうことです。そこで連環画に頭巾を被った劉備が出てくるのを見て、これは面白いかなと思い頭巾を被った劉備ができあがったのです。
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

P.36 馬超(14巻)
━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ファンタジー映画にでてきそうな馬超の兜はかなり特徴的で連環画でもこういう兜を被って登場します。
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 これだと一部でしか連環画を参考にしてなさそうだけど、下記のイベントによると確かに全体的に連環画を参考にしてそうだ。しかし、学術的には後者は使えないし、当てが外れた感じだ。

※関連記事 赤兎馬Presents「三国志の宴3」第1部レポ

 また、コメントを読んでいくと、孫堅、呂布、曹操、関羽(そのうちの一つ)はやのまんの『三國志 赤壁大戦』の流用とのことで。

※関連記事 三国志大戦トレーディングカードゲーム(2012年3月8日)

 あとP.36(17巻)に「時代としては三国時代からずっと後の時」とあった。やはりちゃんと認識されているようで。

 同時に出して貰ったのが、今回の記事タイトルになった、手塚治虫・尾崎秀樹・副田義也/企画・監修『まんが劇画ゼミ』7巻 (横山光輝.小島剛夕.ジョージ秋山)(集英社 1980年2月25日発行)だ。この本を知った、竹内オサム/著『本流!マンガ学 マンガ研究ハンドブック』(晃洋書房2009年4月)の左綴じの方のP39-45「マンガの描き方講座 書目一覧」で、そこにも書いていたが、タイトルの「描き方講座」というより、それぞれの作家が思い入れを語る構成になっていた。こちらの目的は横山先生の言説を採るものなので、そちらの方が有り難いが。
 基本的に見開き右が文章で、左がそれぞれの作家のマンガ1ぺーいの構成になっている。まずはP.36の「2『水滸伝』『三国志』のまんが展開」より個人的にポイントとなる箇所を下記に引用する。

P.36 中国史への傾倒
━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
私は今でこそ中国ものの作家といわれますが、最初の中国もの『水滸伝』(希望ライフ 潮出版社)は編集部からの企画で、作中の登場する英雄豪傑たちを、私なりの解釈で描いてほしいという依頼でした。当時、私が描いていた忍者もののイメージはあったようで、作中に登場する英雄たちが影丸ばりの活躍をすれば、ヒットまちがいなし、という発想だったようです。
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 忍者ものの流れと言われると妙に納得してしまう。
 ちなみに左ページの絵は、P.39が英雄談義の「君は竜という…」のページで、P.41が同じく英雄談義から「君と余だ」のところ。『三国志』巻三十二蜀書先主伝でいうところの「今天下英雄、唯使君與操耳」だね。P.43は「呂布の最期」の1ページ1コマ場面。P.45 袁術の最期で、農民の名言が出るページ。P.47は劉備、関羽、張飛のイラスト、P.48は『狼の星座』(週刊少年マガジン)の絵となる。
 まだ実は下記に引用するように「横山三国志」の連載開始の2年前から連載が始まった『バビル2世』は下記に引用するように、『西遊記』を下敷きにしており、実は中国四大奇書ないし中国四大名著の三つまでもマンガ化していたことに。

P.60 バビル二世の発想
━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
中国古典には、SF的発想のものが少なくありません。しかしそれをそのままいただいたのでは、決してそれ以上のものはできません。私が描いた超能力まんがが『バビル2世』(週刊少年チャンピオン・秋田書店)も、中国三大奇書の一冊「西遊記」を下敷きにしているといったら驚かれる人も多いと思います。アニメ化されたときも、三つのしもべは、それぞれ孫悟空・猪八戒・沙悟浄になぞらえて作ったことをお話しして、キャラクターを作るときの参考にしてもらいました。
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

※関連記事 中国三大奇書の成立と受容(2006年10月2日-27日)

 P.62からの「4 時代考証について」についてはこういうのが欲しかった箇所といったところだろうか。

P.62 資料は必ずある
━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
どんなジャンルのまんがにも時代考証は必要で、ことに歴史まんがの場合にはそれが重要になってきます。今ではいろいろな資料が出まわっており入手も用意ですが、当初は、そうした資料がほんとうに少なかったものですから、新聞や雑誌に掲載されたさし絵をスクラップにして、絵を描くときに参考にしました。
 ところが中国の歴史もの『水滸伝』を始めるときには、日本のものより、苦労をさせられました。それで着物の柄から、酒場のようすまで、何から何までわからないのです。これはたいへんあものを引き受けてしまったと思ったのも後の祭りで、とにかくやるしかなかったものですから、さし絵の画集を探して描き始めました。ようやくのこと、上海で発行された絵本を見付けたときにはホッとしたと同時に、それ以前に描いた部分のあらが見えてじだんだ踏んだものでした。資料というのは、捜せばどこかしらにあるものだということを痛感させられたしだいです。
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 そして、この左ページには「↑中国の上海で入手した貴重な資料」とキャプションが付けられ、連環画のような絵が二枚転載されている。やはりこの「上海で発行された絵本」は上海人民美術出版社の連環画と考えるのが自然のような気がする。但し、『三国演義連環画』を一通り目を通したが、この絵に該当するものがなかった。
 あと興味深いのが企画・監修の尾崎秀樹さん(文芸評論家)のコラム、P193-202「まげ物まんがの地平」。下記に引用するように、図らずとも何か暗示したような文になっている。

P.194
━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
中国の子どもたちは「連環画」という絵物語が好きで、四大奇書はもちろん、現代文学から科学的な啓蒙書まで「連環画」にされているありさまだ。横山光輝の『水滸伝』や『三国志』は、中国の「連環画」にも匹敵するものだが、それ以上にダイナミックでふくらみのある世界をつくり出してきた。
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 また、巻末には各先生方のワンポイント・アドバイスみたいなのがあって、横山先生は下記のようなのがある。ここらへん連環画の再構成の指針として使える研究材だ。

P.204 マンガ制作の必要点
━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
コマの大きさは、場所とか、どういう情況下であるとか、見せ場に大きなコマをつかうようにしている。
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

P.208 コマの流れ
━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
私は劇画のコマは流れるように展開していくのが良いと思っている。セリフはできるだけ短く正確に、そして少ない方が良い。
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 それで書籍に関する目的はこれで終わったのだけど、依然、当たりたい雑誌はあったが、新館に移動するには中途半端な時間だった。とにかくどんな文献があるか当たっていると、潮出版社の月刊『潮』が全部ではないが、ある程度、デジタル・イメージ化されており館内からだと閲覧できることに気付く。そこで見付けたのは下記の記事。

加来 耕三「今なぜ横山光輝「三国志」が面白いか」(『潮』Vol.393 (199112) PP.266-273 潮出版社 )
http://ci.nii.ac.jp/naid/40000170872

CiNii

P.268(1段目)
━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 資料の乏しいまま、長編の連載をはじめたものの、横山の苦悩は作中のキャラクターもさることながら、そのストーリー全般にもおよんでいた。
「テンポとしては吉川英治さんの『三国志』を参考にしましたが、もちろん、この作品だけが正確な三国志ではありませんから、羅貫中の『三国志演義』をはじめとして、いつも何冊かの本を読み比べながら、ストーリーを練っていくわけです。しかも、マンガとしてわかり易い展開にしなければなりません」
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ここで注意すべきは実際はどうあれ横山先生自身は吉川英治『三国志』(小説)を原案としておらず、あくまでも「何冊かの本」のうちの一つとして位置付けているということだ。

 以上のことをメモしていると、土曜日の閉館時間の17時に近付いたので、国立国会図書館を出て、南北線を乗り継ぎ、四谷駅に行き、そのまま中央本線で阿佐ヶ谷駅に行く。18時前に到着したんだけど、目的のお店は19時開店なので、喫茶店で時間を潰すにも中途半端な時間に思え、折角だから、阿佐ヶ谷駅の南にあるアーケードを一通り歩き、結局、BookOffで試読する。
 そこで見掛けた横山光輝『水滸伝』は、鎧の兜の頬部分が日本の兜のようだったりと、日本のデザインを引きずっているのを確認できたし。
 あと武論尊/原作・池上遼一/作画『覇-LORD-』の十常侍が四梁進賢冠ないし両梁進賢冠を戴いているのを見て、『続漢書』志三十輿服志下に「武冠、一曰武弁大冠、諸武官冠之。侍中・中常侍加黄金璫、附 為文、貂尾為飾、謂之「趙惠文冠」。」とあるので、そこは武冠だろって心の中でツッコミを入れていた。『覇-LORD-』での十常侍が中常侍とは無関係で有ればその限りではないが。

※関連記事 『マンガノゲンバ』で『覇-LORD-』

※三国と無関係な続き、2013年3月3日の雑記
・3位浮上なるか、苦手なラツィオ戦
http://cte.main.jp/calcio/blog.cgi?n=452

※三国関連の続き記事 龍路ツーリング(メロディ2000年2月号)

※追記 漫狂 2号「特集・横山光輝」(1979年11月25日)

※追記 時空をかける三国志(2012年10月18日-11月20日)

※追記。上記記事にある講演を聴講しに2012年10月27日土曜日に国立国会図書館 関西館へ足を運んときに、あきよんさんから見せて貰った『横山光輝 プレミアム・マガジン(1)』(講談社2008年9月19日発行)のPP.26-27に『まんが劇画ゼミ』の記事が一部、抜粋されていたことに今頃思い出した。でもそこにある資料の説明が少なかったのでやはり原書に当たる必要はあったんだけど。

※関連記事 横山光輝 プレミアム・マガジン(1)

※新規関連記事 メモ:横山光輝マガジン オックス 第5号(2003年10月30日)

※追記 横山光輝マガジン オックス 1・2・3合併復刻号(2004年2月25日)

※追記 横山光輝「三国志」の魅力に迫る(2010年10月5日)

※追記 横山光輝『三国志』に見られる連環画の再構築 問題意識と目的 初稿

※追記 レポ2:九州三国志忘年会(2013年12月29日)

※新規関連記事 長野剛個展 理想郷 - Eternal Beauty and Desire(2017年5月6日-16日)

※新規関連記事 ウイグル無頼 完全版(2010年9月13日発行)

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