・漢ネット・ヤマダ ~モノから見る三国志(?)~
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佐原康夫/著『漢代都市機構の研究』(汲古書院 汲古叢書31 2002年)のことを上記サイトで知って、最寄りの図書館の書庫にあるようなので行って借りてみた。
一通り読んでから記事にすれば良いんだろうけど、それだと膨大な長さの記事になりそうなので、まずは少ししか読んでいない段階で、良書に出会えた喜びのまま記事にしてみる。
この書籍の目次はこの記事の末に掲げている(ここでは部と章のみ)。
図書館で借りた書籍なので、てっとり早くそれを借り続けるべきか否かを判断するため、前から順に読むのではなく、序論を読み、次に目次を見て自分の興味のある部分を読むことにした。序論の次に「第二部 都市の財政と官僚機構」の「第二章 漢代郡県の財政機構」、「第三章 漢代の官衙と属吏」を読んでいった。
内容は章によって違うんだろうけど、文献資料と出土資料(墓室壁画、簡牘等)の照合が適度に行われており、個人的には心地よい。というわけで継続して借りることに。むしろ買いたいぐらいだけど、書籍の価格が税込みで13650円ということなので、しばらくは図書館通いが続きそうだ。
以下、これまで読んだところで気になった箇所を少しだけ端的に箇条書き。
・和林格爾漢墓壁画についての説明文で「頭を剃り上げて弁髪を結った烏桓族が」(P203)とあったので、この時代に漢人以外の具体的な髪型が描かれているのか、と思って挿図を見ると不鮮明な絵(スケッチ?)で、よく判らなかった。引用元の書籍ではどうなんだろう?
(※
『魏晋南北朝壁画墓の世界』には羌族とされている人の髪型が載っていたが)
・同じ壁画についてP205の本文と注に壁画に見られる服の色について書かれている。本文「灰衣の官吏が上級職員、褐衣が中級、黒衣が下級の職員であることを示すと考えられる」(P205)。その注ではその他の出土資料に見られる服の色が書かれてあった。「宴飲図」 主人と賓客が青袍 侍者が黒褐色の袍 「車騎図」従騎等は赤色の短衣(※注にある官吏と将士の色の違いは以前、
書いた記事の再確認ができた。しかし被りものはともかく衣まで適応できるか個人的にまだ疑問の残るところだけど)
・この墓室壁画に関して、下の人物が小さく、上の人物が大きいのは、(別に遠近法の逆をいっているわけでなく・笑)、墓主にとってのヒエラルキーを絵の大小で表している。建物のデフォルメの意味まで記述しているあたり面白かった。
・一般的に官府の長官は具体的にどこで政務を執るか前々から疑問を抱いていたけど、あっさりこの疑問が解ける。例えば、丞相だと丞相府の堂とのこと。
・「後漢代の司徒府の堂は「百官朝会の殿」と言われ、天子の臨席のもとに…」(P.217) 朝会がどこで行われていたことも前々からの疑問だったけど、この記述であっさり解決。というかこの論拠となる注釈をみると、『周礼』地官[高/木]人鄭注から記述をひっぱってきており、そこらへんの手法にも素人目ながら感動した。
(※というと、もしかすると司徒府の延で傅南容は「斬司徒、天下乃安。」と言ったのかな)
※20090724追記。どうもこの時期の清岡は「朝議」と「朝会」を混同している模様。
・「門」と「閤」について。「閤」については認識外だったのでとても勉強になった。これから史書を読むときの楽しみになりそうだ。また宮では「正門」と「掖門」に対応するとのこと。
・「閤」の内と外で「門下」の意味合いが変わってくる。
・○曹って現代的に言えば○○部(あるいは○○課)といったところだったんだね。
・長官の私的空間である、官衙内の正堂の奥にある、後堂を中心とした「便坐」(※現代人から見たら便所の座に見えるが違うぞ・笑)
→この私的空間に長官の妻子が住むらしく、逆に
妻子を入れない羊続は廉潔な行いの代表となる。
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三国創作のための拝メモ
三国創作のための『儀礼』メモ
メモ:「中国服飾史上における河西回廊の魏晋壁画墓・画像磚墓」
メモ:武冠のあみあみ
※追記
『漢代の地方官吏と地域社会』(汲古叢書75 2008年)
※追記
株式会社汲古書院のサイトオープン(2009年1月30日)
※追記
メモ:「前漢後期における中朝と尚書」
※追記
リンク:「漢代の扁書・壁書」
※追記
メモ:「魏晋南北朝時代における地方長官の発令「教」について」
目次
序論
第一部 城郭都市の形態
第一章 春秋戦国時代の城郭について
第二章 漢長安城の成立
第三章 都城としての漢長安城
付論 漢長安城未央宮三号建築遺址について
第二部 都市の財政と官僚機構
第一章 戦国時代の府・庫
第二章 漢代郡県の財政機構
第三章 漢代の官衙と属吏
第三部 市場と商工業
第一章 漢代の市
第二章 秦漢陶文考
第三章 漢代鉄専売制の再検討
付論1 漢代の製鉄技術について
付論2 南陽瓦房荘漢代製鉄遺跡の技術史的検討
第四部 貨幣経済
第一章 居延漢簡月俸考
第二章 漢代貨幣史再考
第三章 漢代の貨幣経済と社会
結論
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