※前の記事
中国における墓主図像の研究(神戸大学2002年9月30日)
・関西館|国立国会図書館―National Diet Library
http://www.ndl.go.jp/jp/service/kansai/
2014年5月17日土曜日13時ごろ、清岡は国立国会図書館関西館の総合閲覧室に居た。博士論文を3報を閲覧するため、閲覧申請して手元に置いていた。
1報目は前の記事に書いたとおりで、2報目は梁蘊嫻さんの博士論文だ。
・江戸文学における『三国志演義』の受容 : 「義」概念及び挿絵の世界を中心に ([梁蘊嫻]): 2010|書誌詳細|国立国会図書館サーチ
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I023384633-00
※関連記事
模倣と創造『絵本三国志』における『三国志演義』遺香堂本の受容(2012年12月)
下記関連記事の冒頭で書いたように、この博士論文に対する第一印象、というより一番、気になるところはすでに書いた。
※関連記事
三国志(1952)、三国志物語(1959)、伊藤幾久造/絵
それは二冊目の図版編だったが今回は本文編について『絵本三国志』についての詳しく書かれた部分のメモをとっていた。以下、その部分の引用だ・
本文編p.97
━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本章では、(1)『三国志演義』の挿絵を参照して描かれたもの、すなわち絵本読本『絵本三国志』(都賀大陸序・桂宗信画、天明八年〈一七八八〉刊)を取り上げる。本作は、本文は大幅に縮小されているが、挿絵は原典同様に各章ごとに二つの図が配されており、その総数は一四九にのぼる。この作品は後の『三国志画伝』(重田貞一作・歌川国安画、天保二年~五〈一八三一~一八三四〉年刊)に影響を与えるなど、『三国志演義』の図像を日本に伝える大きな役割を果たした。また、本書は絵本読本というジャンルの先駆けであり、文学史上においても画期的な作品であるといえる。
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
すっかり『絵本三国志』を小説と認識していたものだから、「絵本読本」(えほんよみほん)はしっかり覚えておかないといけないジャンルだな、と。『日中藝術研究38』(日中藝術研究会2012年12月)に収録された梁蘊嫻「模倣と創造『絵本三国志』における『三国志演義』遺香堂本の受容―合戦場面を中心に―」にも書かれているように、『絵本三国志』は六種もの『三国志演義』版本の挿絵から参照しており、p.99からの「三 構図の需要について」にはそれを下記のように分類して一つ一つ説明されてある。
(1)ほぼ模写
(2)左右反転
(3)画面の一部の利用
(4)配置変更
(5)画材の参考
(6)背景の利用
(7)什具などの参照
次の次の章では『世話字綴三国誌』(「かながきさんごくし」と読む。以前の記事で打ち間違えていて訂正した)についてだ。下記に引用するように詳しい説明がある。
本文編p.131
━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本章では、(3)当世化した三国志物の一つ、『世話字綴三国誌』(墨川亭雪麿作、歌川国貞画 天保二[一八〇四]年刊について検討する。この作品は、浄瑠璃『諸葛孔明鼎軍談』(享保一〇[一七二五]年初演)の本文をそのまま引用し、合巻の体裁に作り直したものである。つまり『世話字綴三国誌』は、先行作品の内容をそのまま引用して作品の形態(ジャンル)だけを変えて再生産されたものである。このような方法は現代の価値観からは評価されないが、当時としては普遍的なものであった。
この作品で注目すべきなのは、本作の挿絵の登場人物が歌舞伎役者の似顔絵になっていることである。文政・天保年間には、こうした歌舞伎役者の似顔絵が使用された合巻が数多く刊行されていたが、『世話字綴三国誌』もその流行に乗った作品の一つであった。
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ここらへんの「趣向」は現在の作品にも潜んでいるような気がするし、注目していきたいね。
・「「趣向」が重視される」 (※個人サイトの雑記)
http://cte.main.jp/sunshi/2013/1101.html#07
というわけで後は下記関連記事で触れた陳曦子さんの博士論文を再度読んで、メモをとっていた。それはそのうち下記記事に追記する予定。
※関連記事
日中における中国四大名著のマンガ比較研究(同志社大学2013年3月21日)
それでコピーの報だけど上記のことと前後して14時4分にモノクロA4サイズで下記の書籍の一部をプリントアウトした14円×2枚+税=30円。
・絵本三国志 : 通俗略伝 (大川新吉): 1884|書誌詳細|国立国会図書館サーチ
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000509606-00
前述の『絵本三国志』の画像源がないか探していたら偶然見かける。そういうタイトルじゃなくて本当に絵本みたいな校正で、和装の見開き2ページに渡る絵の上部に手書きのやや崩れた文字で文語体で文が書かれる。
そして時間もなくなってきて、陳曦子さんの博士論文の気になった部分も含め、梁蘊嫻さんの博士論文の図版編をセルフ複写していた。セルフ複写は関西館のみのサービスでセルフの分安いそうで。図版編のコピーは「(1)ほぼ模写」とされるp.43の『絵本三国志』と『三国志演義』遺香堂本との「魏王宮左慈擲盃」の絵の比較のところと、p.61の「虎牢関三戦呂布」の絵の『絵本三国志』、『三国志演義』宝翰楼本、『三国志演義』呉観明本との比較のところ、それからp.105の『世話字綴三国誌』の「諸葛孔明」が『声色早合点』、『三司馬懿役者細見記』の似顔絵と比べつつ、七代目市川団十郎に似せてあるというところの3枚だ。なれないものだから5枚も失敗し、時間も迫っていたし、申請した分を全うすることを途中で諦め、失敗した分も支払う規則なので、結局、セルフA4・B4 14円×10枚+税=151円だった。
そして24分発のバスに向け急ぐ。建物を出ると予定のバスが横切る姿を見かけるが、ちょうど信号待ちだったので、その間にダッシュする。ところが信号が代わり途中で抜かれ、万事休すかと思ったら、目的のバス停で待つ乗客が多かったので、辛うじて間に合う。やった間に合った! と思っていたら、時間調整のためしばらくとまっていた。そんなに急がなくて良かったやん!と心の中でツッコミを入れていた。
目的の列車が45分発と思い込んでいて、44分着でダッシュしたら、実は49分発だった。行きと同じく桃山御陵駅で西へ歩く。そんな感じでやたら走っていて喉が乾いたので、行きと同じく三ツ矢7種のフルーツミルクサイダー90円を購入していた。
※追記
日本における三国志の挿絵本(1979年3月31日)
※追記
『三国志画伝』における『通俗三国志』の理解(2007年3月)
※新規関連記事
メモ2:江戸文学における『三国志演義』の受容 (東京大学2010年10月28日)
サイト管理者はコメントに関する責任を負いません。