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第3回三国志シンポジウム 雑感3


  • 2007年9月 1日(土) 21:57 JST
  • 投稿者:
    清岡美津夫
  • 閲覧数
    2,831
教育機関 <目次>第3回三国志シンポジウム 雑感(2007年7月28日)
http://cte.main.jp/newsch/article.php/661
<前回>第3回三国志シンポジウム 雑感2
http://cte.main.jp/newsch/article.php/674


 そういやめくり台の次の演題に誤字があって「動物トレッチング」となっていて後から吹き出しとともに「ス」が足されていて、観衆のツッコミの的になっていた。

○三限目・・・三浦 國雄(大東文化大學中國學科教授)
名醫華佗と動物ストレッチング

 11時49分スタート。

「三国志の専門家とは違いますので、三国志とはずれた話になると思います…もうすでにめくりからずれてますので、お気軽に聞いて下さい」

と冒頭でおっしゃって会場をわかしていた。これ以降もちょくちょくとネタが入る。

●1,「神医」華佗
 ※小タイトルはレジュメ通り。以下、同じ

 史書では華佗は『三国志』方技伝(治療法16例)と『後漢書』方術列伝(治療法7例)に出てくる。ここでの方術は技術・占術の総称。華佗の治療法としては1)薬物療法、2)鍼療法、3)外科療法がある。外科療法では「麻沸散」という麻酔薬を遣って開腹手術をした(世界初)。また日本の華佗になりたい、と言っていた和歌山の華岡青洲(1760-1835)が麻酔薬「通仙散」(旧名「麻沸湯」)で乳ガンの摘出手術に成功(世界初)。余談(小説で有吉佐和子『華岡青洲の妻』ってのがある)。4)心理療法。わざと激怒させて黒い血を吐かせて治癒。
 『三国志』華佗伝の冒頭に「遊学徐士、兼通数経、暁養性(=生)之術」とあって、「数経」と元々儒者指向で、養生法は1)服食(滋養・強壮剤)、弟子の阿善が提唱と言われている、2)導引(体操、ストレッチング)、五禽戯、弟子の呉普が提唱といわれている、の二つがある。

●2,華佗と曹操

 『三国志』華佗伝の話を引用。曹操は頭風に苦しんでいたところに華佗は横隔膜あたりに針をつくといいとした。華佗は士人指向で、医者と思われるのを嫌がっていた。妻が病気だといって華佗は家に帰った。曹操にバレて牢獄に入れられる。

●3,華佗の最期

 荀[或〃]が殺すには惜しいとしたが、曹操は天下にこのような輩はいっぱい居るとして華佗を殺してしまう。華佗は死ぬ間際に獄吏に一巻書を渡すが法を畏れ受け取らず、華佗はそれを焼いてしまう。曹操の愛子、倉舒が病にかかったとき、曹操は華佗を殺したことを悔いた。
 これが虚構化される。『三国演義』(毛宗崗本)第78回。レジュメの2ページに絵付きのもののコピーがある。華佗の一巻書は「青嚢書」という名前が付けられており、獄吏は呉という姓がつき、嫁が「青嚢書」を焼く。「麻沸散」は「麻肺湯」になっている。
 「青嚢書」は方術・術数書、風水書。『晋書』郭璞伝に出てくる。

●4,華佗と五禽戯

 五禽戯は『三国志』華佗伝と『後漢書』華佗伝に出てくる(レジュメでその部分が引用されている。後漢書の注も引用)。労働は「体を動かす」の意、穀気は食べ物は気に変わる考えから。熊経(=頸)鴟顧、熊の首、ふくろうが首だけ動かすポーズ。一つの基礎。五禽戯は一つは虎、一つは鹿、一つは熊、一つは猿(実際、援のけものへんの漢字)、一つは鳥。これをやると病気が治り足が軽くなる。一つやると汗が出て、粉をつけると、体が軽くなり食欲も出る。
 後漢書の注も引用では熊経は熊が枝にぶら下がるポーズ、鴟顧は首だけ動かすポーズ。さらに古い息を吐き新しい息を吸う呼吸法も書かれてある。問題は熊経。導引図から引用した絵がレジュメにあって、どうもそれだと枝にぶら下がっているポーズではない。
 華佗別伝では呉普が魏の明帝の前で披露しようとするが呉普は老いていて手足を動かせなかった。

●5,動物ストレッチングの源流と展開

 『三国志』より古い『荘子』刻意篇と『淮南子』精神訓(レジュメで引用)に動物ストレッチングが見られる。後者ではカモが居て、六禽になっている。
 馬王堆3号漢墓(長沙国丞相利蒼の子、前168年没)出土「導引図」(一部がレジュメにコピーされている。沈寿『導引養生図説』から復原・分類されたもの)。全44種のポーズ。熊、鳥、猿などの動物模擬がかなりある。

<参照記事>2004年9月7日-10月24日 古代中国の文字と至宝
http://cte.main.jp/newsch/article.php/232

 展開として道教・養生の世界で、東晋・葛洪『抱朴子』、明・高濂『遵生八牋』延年却病牋がある。前者に亀の呼吸法、燕、兎などが加わっている。後者は仏教思想の影響を受けている。
 武術では少林5拳、形意拳、象形拳、太極拳がある。

●6,五禽戯の展開

 梁・陶弘景『養性延命録』では始めに華佗と呉普の名前が出てきて、華佗が言ってなかったポーズが出てくる。レジュメにはそれを現代の気功家が復原した図のコピーがある。(ここでこのポーズを家で帰ってやってもいいが、夜の公園ではやらない方が良いってネタが飛び出て場内の笑いをとる)
 明・周履靖『赤鳳髄』「五禽戯図」での特徴は体内の気に重点がおかれているところ(レジュメにコピーがある)。
 これらが現代気功における再編集をうける。いろんな人が再現している。周稔豊ら『五禽戯』(ベースボール・マガジン社1983)では「熊の形」に導引図を参考にしている形跡がある(熊の形、猿の形、鳥の形がレジュメに引用)。

●7,結語

 馬王堆導引図の歴史的意義。戦国期以降、支配層は労働から開放され、日常生活の中に運動を欠く→体のゆがみの自覚→自然性回復への希求→動物模擬
 これとは反対に、導引図により、導引は一般大衆に非常に盛んで、古代人が自然と一体化した証という説がある(張勇「悠久の体ほぐし─馬王堆導引図の世界」『体育の科学』6、1999年からのもの。レジュメに引用あり)。三浦先生は納得してなくて、過酷な労働を強いられていた一般大衆がわざわざ導引は行わないだろうし、自然と一体化していればわざわざ野生動物の模倣はしないだろう、とのこと。
 動物ストレッチングが支配層・貴族を中心に流行。華佗は五行思想に依拠して体系化
 人間は母親のお腹の中で進化をなぞる成長をする「個体発生は系統発生を繰り返す」→自然性から本来性への回帰
 →たまには人間を止めようよ、という結論。

 最後は周稔豊先生の五禽戯のビデオをスクリーンで見て終わり。

 12時35分終了。

 お昼休みは去年と同じくファミレスのジョイフルで食す。やっぱり一度に座れる場所が無くて二つに別れたけど。おりふさん、清岡、KJさん、三口宗さんのグループとげんりゅうさん、玄鳳さん、伊比学さん、キングさんのグループ(チームW?・笑)。

 おりふさんが中林先生の授業をきいて江戸時代も現代も同じ、って感想を持ってらして例えで「武力80って言っているのと一緒じゃん」っていう発言は妙に可笑しかった。

http://cte.main.jp/newsch/article.php/646
↑それから某氏からここの追記部分を聞く。180名ぐらい講義を受けている人が居て、その人気の秘訣は授業名に「三国志」がついているとか予想を立てられていた。
その人数を羨ましがって回してくれないかなぁ、なんて方がいらっしゃったんだけど、多分、単位がないと集まらないと清岡は突っ込んでいた(笑)
 KJさんは三国志ファン向けに○○先生が何の専門か、とかわかるデーターベースがあれば良いなぁって話をしていた。

<次回>第3回三国志シンポジウム 雑感4
http://cte.main.jp/newsch/article.php/677

※追記 三国志フェス2010(2010年8月21日土曜日)

※参照リンク追記
・国内書 却穀食気・導引図・養生方・雑療方【中国・本の情報館】東方書店
http://www.toho-shoten.co.jp/toho-web/search/detail?id=4497210081&bookType=jp

※追記 京のまつり (京都文化博物館2014年4月3日-6月15日)

※新規関連記事 学習漫画 世界の歴史 5 長安の都とシルク・ロード(集英社1986年6月)

※新規関連記事 コロナ禍、どう考える?どう行動する?(神戸・三宮センター街2丁目2021年3月12日)

※新規関連記事 川本喜八郎 三国志百態(ギャラリー新宿高野 1984年1月26日-2月8日)

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