この場で取り上げること自体が助長させているようで作者にとっても出版社にとってもためにならないと思い、自費出版系を紹介する記事作成を今まで敬遠してきた。
しかし、これは記録して後々まで伝えていかないといけないと思い、記事にしてみる。
・文芸社
http://www.bungeisha.co.jp/
書籍詳細情報:正史「三國志」完全版 - 文芸社
http://www.bungeisha.co.jp/bookinfo/detail/978-4-286-07347-7.jsp
上記ページから内容紹介を下記へ引用する。
━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
不都合な歴史、知りたくない事実──フィクションである『三國志演義』『新全相三国志平話』によらず、正史および野史から三国志の実像を描き出す!! 歴史の事実は常に冥府の中。歴史の縮図から事実を汲み取り、千七百年間の誤解を晴らす! 「孔明は、志大にして機見えず、謀多くして決少なし、兵を好みて権なし」西暦146年の質帝崩御から曹操の誕生、晋の成立、西暦297年の陳壽の死まで、歴史の真実に迫る。
定価
2,625円 (本体 2,500円)
判型
四六上
ページ数
316
発刊日
2010/02/15
ISBN
978-4-286-07347-7
ジャンル
歴史・戦記 > 歴史 > 歴史 (海外)
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
まずは四六判の316ページしかない『正史「三國志」完全版』とは何だろうか。陳寿/撰・小南一郎/訳『世界古典文学全集 三国志III』(筑摩書房、形態23cm)、つまり呉書の部分の訳だけでも386ページもあるというのに。もしかすると、流通している陳寿/撰『三国志』には通常、裴松之注が付いてくるため、それを抜いて「完全版」と称し、ページ数が想定される分より少ないのだろうか。しかしながら、上記引用部分の内容紹介文には「正史および野史から三国志の実像を描き出す」と書いた上に末尾にはエクスクラメーションマークが二つも付けられているほど、「正史」だけでなく「野史」の要素も含まれていることが強調されている。だとすると「完全版」どころか、「不足版」であり、「正史」ではない部分での「過剰版」か「粉飾版」だと言え、まとめると「非正史」と「過不足版」をタイトルに付けるのがより正確なのではないだろうか。そもそも陳寿以外の者が書いた本を「三國志」かつ「正史」と自称しさらに「完全版」と付け、出版する行為は、陳寿から「三国志」の名を奪う行為に等しいだろう。これより先の「千七百年間の誤解」を生まないためにも、これが出版されたことを三国志ファンにとって「不都合な歴史、知りたくない事実」の典型的な見本として、後々まで伝えていきたいと思う。
<2月23日追記>
見かけたのでリンクしておく。ブログ記事ではうまく解説があって判りやすい。なるほど、なかなか興味深い。『三国演義』を読んで、『三国志』に触れた人なら、かなりこういう発想しそうだね。短いわけだ(リンク切れなので説明すると『三国演義』の順序に『三国志』の記述を再構成したものだそうな。そうすると情報損失が少なからずありそうだが)。
・徳本商会.com
http://www.tokumoto-shokai.com/
・【書籍紹介】岩堀利樹『正史「三国志」完全版』(文芸社) (※上記ブログ記事)
http://www.generalstab.net/?eid=171
※追記
三国志 完全ビジュアルガイド(2011年3月16日)
※追記
三国志と古代中国の歴史(2013年1月24日)
※追記
真『三国志』(2013年9月27日)
※追記
それからの三国志(2014年12月11日)
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