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上記出版社サイトの上記ページより、2011日10月17日に久米田康治/著『さよなら絶望先生』27巻(ISBN978-4-06-384566-2)が440円で発売した。
もちろん全然、三国と関係ないのだけど、第二百七十話「代理の子」のP.138のフキダシで急に「三国志」という単語が出てきて、P.139のフキダシで再び登場し、あたかも消費されたかのように二度と出てこない。
この話のテーマは、その1ページ前のP.137における登場人物である可符香のセリフに要約されている。つまり「命令/される方が/主導権」「持ってる事も/ありますしね」というものだ。その流れで件のP.138(見開きの右ページ)の最上部のコマ外に太ゴシックで「以逸待労」と書かれ、それを軸にストーリーが進む。このような技法は今回が初めてでなく、この巻の第二百六十七話のP.98にも最上部に「(笑)禁止」と黒地に白抜き文字にある。
話を戻し、「以逸待労」は「逸(はや)きを以て(相手の)労を待つ」ってことで、次のコマの時田のセリフが「兵法三十六計/の第四計・・/ですね」「よく/ご存知で」で、同コマの続く可符香のセリフが「三国志好きの/社長の/受け売りです」とあり、続くコマでは「以逸待労」の具体例が提示される。
・三十六计- 维基百科,自由的百科全书
http://zh.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E5%8D%81%E5%85%AD%E8%AE%A1
上記のWikipedia中文版によると、「三十六計,或稱三十六策,是指中國古代三十六個兵法策略,語源於南北朝,成書於明清。」とのことで、語源は南北朝、文献の『兵法三十六計』の成立が明清と、いずれも『三国志』が対象とする後漢末や三国時代とはかけ離れており、件の作品中の前述のセリフにあるような「兵法三十六計…」と「三国志…」との接点が見出せない。
試しに『三国志』及びその注を対象に「以逸」で検索すると次のように出てくる。太字が該当部分、あるいは類似表現だ。
・『三国志』巻三魏書明帝紀
是月、諸葛亮出斜谷、屯渭南、司馬宣王率諸軍拒之。詔宣王:「但堅壁拒守以挫其鋒、彼進不得志、退無與戰、久停則糧盡、虜略無所獲、則必走矣。走而追之、
以逸待勞、全勝之道也。」
・『三国志』巻四魏書三少帝紀注所引習鑿齒『漢晋春秋』
夫用兵者、貴以飽待飢、
以逸撃勞、師不欲久、行不欲遠、守少則固、力專則彊。
・『三国志』巻七魏書呂布伝注所引『献帝春秋』
太祖軍至彭城。陳宮謂布:「宜逆撃之、
以逸撃勞、無不克也。」
・『三国志』巻十三魏書王肅伝
是賊偏得
以逸而待勞、乃兵家之所憚也。
・『三国志』巻二十四魏書高柔伝
宜畜養將士、繕治甲兵、
以逸待之。
・『三国志』巻五十六呉書朱桓伝
今人既非智勇、加其士卒甚怯、又千里歩渉、人馬罷困、桓與諸軍、共據高城、南臨大江、北背山陵、
以逸待勞、為主制客、此百戰百勝之勢也。
このように「以逸待労」(以逸待勞)は特別な表現でなく、『三国志』及びその注で頻出する表現だ。兵書の『呉子』でも次のように出てくる。
・『呉子』治兵
呉子曰:「夫人常死其所不能、敗其所不便。故用兵之法教戒為先。一人學戰教成十人、十人學戰教成百人、百人學戰教成千人、千人學戰教成萬人、萬人學戰教成三軍。以近待遠、
以逸待勞、以飽待飢。圓而方之、坐而起之、行而止之、左而右之、前而後之、分而合之、結而解之。毎變皆習乃授其兵。是謂將事。」
よくある表現であるが故に、「以逸待労」を『三国志』と結びつけたか、あるいは読者の側で結びつくだろうと判断したのか判らないのだけど、次は逆に『兵法三十六計』から見ていく。
下記のようにWikisourceにその全文が載る。
・三十六計- 维基文库,自由的图书馆
http://zh.wikisource.org/wiki/%E4%B8%89%E5%8D%81%E5%85%AD%E8%A8%88
件の「以逸待労」の項目の「按語」を見ると、その事例に三国関連は挙げておらず「管仲寓軍令於内政、實而備之;孫臏於馬陵道伏撃龐涓;李牧守雁門、久而不戰、而實備之、戰而大破匈奴。」と三例が挙がっていた。
でもその前後の「按語」を見ると、
・『三十六計』勝戦計 第三計 借刀殺人 按語
諸葛亮之和呉拒魏、及關羽圍樊・襄、曹欲徙都、懿及蒋濟説曹曰:「劉備・孫權外親内疏、關羽得志、權心不願也。可遣人躡其後、許割江南以封權、則樊圍自釋。」曹從之、羽遂見擒。
・『三十六計』勝戦計 第六計 聲東撃西 按語
漢末、朱雋圍黄巾於宛、張圍結壘、起土山以臨城内、鳴鼓攻其西南、黄巾悉衆赴之;雋自將精兵五千、掩其東北、遂乘虚而入。
となっており、三国関連が結構、見られる。
ちなみに『さよなら絶望先生』27巻のP.189での可符香のセリフに「時田さんと/三国志談義/してました」とあり、作中では表出されてないが、「以逸待労」から三国志談義が続けられたことが示されていた。
まぁ、あの講談社からのマンガだから『三国志』に触れた、ってことで、勝手に納得しておこう。
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