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美術鑑賞メモ「ランス美術館展」
040718
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展覧会名:19世紀フランス美術の精華   ランス美術館展
開催場所:奈良県立美術館
開催期間:2004年4月10日(土)〜7月19日(月・祝)
鑑賞日:2004年7月18日(日)



   奈良県立美術館へは過去四回ほど行っていて、場所もどんなところかかも知っている。今回の展覧会は「ランス美術館展」と銘打たれていて、とある美術館でのコレクションによる展覧会ってことがすぐにわかる。過去、○○美術館展と銘打たれた展覧会には何度か行っている。<<「メトロポリタン美術館展」とか<<「マルモッタン美術館展」とか。それ以外にも何展か行ってて、経験上、混みそうな予感があった。だけど、そこの美術館だと大丈夫という期待もあった。
   実際、行ってみると、あまり混んでおらず快適に鑑賞できた。
   ランス美術館とはチラシや会場の「ごあいさつ」によるとフランスの美術館とのこと。パリから東へ150kmのところにあるランス市の美術館なのだ。アンリ・ヴァニエさんという人のコレクションなのだそうな。ちなみに展覧会の初めに白いパネルに「ごあいさつ」などが壁にかけられるのが慣習なのだが、他にも「序文」やらランス美術館の館長の「日本の皆様へ」(多分、こういうタイトル)やらがあって、後者は「(中略)」の文字が三カ所ほど出てきていたのが印象的だった。長すぎて略されたんだろうか?(笑)

   美術館の西面にある入り口を通って、左(北)へ曲がった最初のスペースにその「ごあいさつ」やらがあって、そのスペースは「コロー、バルビゾン派とクールベ」と銘打たれていた。この三つの単語のどれか一つは知っていれば(一つ目と三つ目は人名だけど)、どんなスペースか想像つくと思うけど、そこは風景画のスペース。18世紀末のフランスのアカデミーで風景画が徐々に注目されてきたとのこと。ん?   展覧会「巨匠のまなざし」の<<「近代絵画のめざめ」って銘打たれたスペースとコンセプトは似ているな。ジャン=バティスト=カミーユ・コローの絵画もあるし。
   ということはこの美術館展はヴァニエさんのコレクションをジャンルごと・時代ごとにわかりやすく並べているんだろうか。それと、今回の展覧会では<<「巨匠のまなざし」<<「ギュンター・ユッカー」展と違って、目録のチラシがないのと、筆記用具を忘れてしまったせいで、あまり詳しいメモが書けない(汗)
   話戻し、私がどこか旅行に行くとき、如何にも観光地ってところは何か押しつけがましく感じるところが多いせいか避けたがる。仮に観光地であってもちょっと横道に入って、現地の人の生活空間へ少しでも近づこうとする。そう連想すると、私にとって歴史や神話を題材にした絵画は「観光地」で、風景画は「アウトドア」な絵画なのかもしれない。

   お次のスペースが「ロマン主義とオリエンタリスムの絵画」。真ん中を通って南面(西寄り)にいったところにある。
   ここの絵画は少し「観光地」のにおいがするものの、悪くない絵画。
   左端に見かけたのは作者はわすれたけど、「画家」というタイトルの絵。タイトル通り、屋内でキャンバスの前に立つ画家が描かれている。描かれた画家はちょいと気取った様子だけど、気に入った。
   「ロマン主義」とあるだけに、チラシに載っているウジェーヌ・ドラクロワの「父の呪詛をうけるデスデモーナ」を初めとして題材に劇的なものが多い。ところが壁沿いに右に行くほど、もう一つのテーマ、オリエンタリスムが顔を見せ始めてくる。異国の港の風景など。そんな中、最後二枚と迫ったところでかなり目を引く絵があった。河畔で裸の女性がうつぶせになっている絵。古典だと皮膚のしわとか波打つところとか、描かなかったり、結構、綺麗に(?)描くんだけど、これはそれらをはっきり描いており、どちらかというと生々しい。え!?   とおもってよく見ると、完全に裸じゃなくて装飾品をいくつかつけている。頭にかぶっているものとか、手首の装飾品とか足首の装飾品とか、顎のタトゥー(?)とかオリエンタリスム?   エティエンヌ・ディネという人の「ワジの河畔」という絵画(絵はがきが売っていたので、その情報による。多分、この絵はがき使わないけど・汗)。右隣をみると、これまたこのディネさんの絵画。タイトルは失念したけど、夜のテラスにやっぱり装飾品をつけた裸の女性が二人、横たわっている。一人は仰向け、一人は胡座ポーズ。仰向けの人はきっちりあばらが浮いているところを描いているし、胡座の人はきっちりお腹の横しわを描いている(こう書くと変なイメージだけど、三人ともスタイルは良いんです・笑)。背景に異国情緒あふれた建物の灯りがともっている。何か、そのスペースの最後の二枚に違和感を感じつつ、そのスペースを後にした。

   建物の北と南の真ん中に吹き抜けの階段があって、いざ二階へ。ついたところは二階の南西。スペース名は「印象派とその周辺」。えー、展覧会「巨匠のまなざし」の<<「印象派の登場」と似たような展開。
   スペースの解説文に印象派と呼ばれるまでの経緯の説明(例の「印象・日の出」ね)があった。そこで印象派の絵画の特徴として「筆触分割」と「明るい色彩」があげられていた。「筆触分割」は言い得て妙。そうそうこの言葉が出てなくてもどかしい思いをしたけど、こんどから大いに使わしてもらおう。
   絵の方は風景画が続く。中でも「筆触分割」と「明るい色彩」がはっきりでているのは、チラシに載っている絵画二つだ。カミーユ・ピサロ「オペラ大通り、あるいはフランス劇場広場」とクロード・モネ「ベリルの岩礁」。後者は寒色よりの海の色彩(もちろん補色がいくつもあるけど)と暖色よりの岩の色彩の対比が面白いし、「筆触分割」でしっかりと描かれた造形も面白い。
   壁沿いの絵最後の二枚は同じ画家の作品。 Fritz Thaulow(「タヴロヴ」って読むような記憶があるんだけど)の絵。同じく風景画で水面の描写中心なんだけど、印象派らしくなく「筆触分割」がない。夕方の森林の光景で、あたりが暗くなっていて、水面に周りの木々が少し映っている。木だからその水面に映っている造形もまっすぐなはずだけど、水面は風や水の流れで揺らいだり波紋になっているので、そんなまっすぐな造形はどこにもない。大自然の中、キャンプに出かけ、あきずに川の流れを眺めていた、あの懐かしい光景だ。
   その絵画の右隣のタヴロヴの絵は冬。雪がつもっている。建物の間の小川の絵。これもリアリティあるな。

   最後の絵は大御所、オーギュウスト・ルノワールの絵画「役の本読み」。青い服を着た女性(役者?)の絵だ。その女性の回りにはあまり目立たない人物二人がいる。一人は本(台本?)をもって、女性に話しかけている。女性はそれに耳を傾けているようだ。女性はルノワールの真骨頂だと個人的に思っている。チラシに載っているし、なによりチケットの絵になっている。
   その絵は特設っぽい赤い壁にかけられている。そして実は葉書より二回り小さい絵なのだ。そんな小さい絵とは思えないほど情報量のつまった素敵な絵画。
   「これが絵ハガキとして売られていて、ふつうとは逆に拡大されていたりして」とかアホなことを思っていたら、ホントに絵ハガキとして売られていた、拡大されて(笑)
   というわけでそのスペースを後にする。

   次のスペースは二階で、北西のところ。「印象派以降の絵画」と銘打たれている。やっぱり展覧会「巨匠のまなざし」の<<「ポスト印象派」と似たような展開。
   そこの解説では、「筆触分割」が理論的になって「点描」が生まれたとかなんとか。なるほど。
   いろんな風景画があった。気に入ったのはマキシム・モフラの「1900年パリ万国博覧会、あるいは夜の夢幻劇」かな。夜の光景で万博の光が水面に映り混んでいる。「筆触分割」の技法で。

   他の展覧会のポスターやパソコンが置いてあるところを通り越し、二階中央にある次のスペースは「アンリ・ヴァニエのコレクション」(確か、こんなタイトルだった)。ブドウ畑のいくつか写真やヴァニエさんのギャラリーの写真に挟まれて、絵画が数点あった。

   次のスペースは二階南東。タイトルはないけど、多分、「印象派以降の絵画、肖像編」とか名付けるのが適当かな。今までが風景画中心だったので。いろんな描き方や題材の肖像画がとうじょうしてた。アンリ・マルタンの「少女」、誰の作かわすれたけど「純真」、ジャック=エミール・ブランシュの「モーツァルトのケルビーノ」、誰の作かわすれたけど「祈り」。
   「少女」はこれぞ点描といった作品。「純真」はすごくはっきりした顔の肖像。髪や服が黒っぽく、背景も黒っぽい中で、白い肌の人がやや上目遣いでこちらを見ている。「祈り」は黒い服を着た女性が背もたれ付きのイスにもたれかかっている絵。腕をイスの背もたれに、膝を腰掛けに当ててもたれて祈っている。女性の向こう側に光があるようで、黒い服の輪郭が輝いている。いろんな物語を想像させるし、とても神秘的な絵。
   その「祈り」に後ろ髪を引かれながら、次のスペースへ。二階の北東だ。まず、休憩スペース兼販売スペース(絵ハガキが売っている)を通り抜ける。そしてでてきたのが「エミール・ガレの装飾美術」という名のスペース。今までのように絵画ではなく家具やガラス具がならんでいる。色彩豊かな色ガラス。

   次のスペースは「ジャンヌ=アレクサンドリーヌ・ポメリーと陶器コレクション」。その横には、「ポメリー夫人の胸像」という陶器作品。ブロンズ像並のリアルな陶器の胸像、初めてみた。多分、実物大。横に添えられている写真をみると、ほんとそっくり!   しわとかリアル。でも陶器だからテカテカしている(笑)

   それから真ん中東よりの吹き抜けの階段で、一階へ行き、美術館を後にした。





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