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美術鑑賞メモ「巨匠たちのまなざし」
040625
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展覧会名:マネ、モネ、ルノワールから20世紀へ   巨匠たちのまなざし 
開催場所:ブリヂストン美術館
開催期間:2004年6月11日(金)〜10月3日(日)
鑑賞日:2004年6月26日(土)



   美術館が夕方閉館じゃなくて、夜まで開いてると魅力的。
   一仕事、終えて、さぁ見に行こう、となると夜、開いてないと困る。前回の森美術館のように24時まで開けろ、なんて贅沢は言わないまでも19時、20時ぐらいまでは開いててほしい。

   そう思いながら、どこか良い展覧会はないかと、ノートPC片手に都内で探し出したの16時半。お目当ての「栄光のオランダ・フランドル絵画展」のやっている美術館はもう閉館しているし(まぁこれは神戸に来たときに見に行けばいいか)
   そこで見つけたのがブリヂストン美術館でやっている「巨匠たちのまなざし」ってタイトルの展覧会。なんと、20時まで開いているのだ。全然、内容を知らなかったんだけど、前面にでているルノワールが描いた少女の絵にほれ、それに会いに行く目的で足を運ぶ。ブリヂストン美術館自身は去年、<<「レオン・スピリアールト展」に行ったので、場所は把握している。

   チラシとかポスターとかそのルノワールの絵があるので、てっきりルノワール中心のいつもの「日本人大好き印象派」展かと思っていた。前に行った「マルモッタン美術館展」みたいに。タイトルに「マネ、モネ、ルノワールから20世紀へ」と、日本人好みを押し出しているし、こりゃ作品数、少な目にテーマを絞っているのだな、と。
   そう思いながら、エレベータに乗り込み、会場の二階へ。そこは他の美術館と違い、順路があいまいで、縛られていない雰囲気。自由だ。一応、主催者が意図したとおりに進みたかったので、もらったチラシ数種に目を通す。
   今回、とてもありがたいことに何を展示しているかの目録、それに大まかにどの部屋に何があるかの地図までついている。今まで私がいった展覧会の中で最高の冊子だ。
   初めのスペースは「西洋伝統絵画と『物語』」と銘打たれていた。なるほど、こうやって徐々にメインの印象派に持って行くんだ。「マルモッタン美術館展」の「印象派への道」のスペースと同じかね。
   解説を読むと、18世紀以前の絵画は神話とか聖書とか物語をモチーフにしたものばかりだった、と。なるほど、そんなイメージ。初めにでてきたのがレンブラント・ファン・レインの絵画「聖書あるいは物語に取材した夜の情景」。左半分がなくなっているそうだけど、それでもリアルな質感で劇的な世界へといざなってくれている。炎に照らされた数名。うーん、いい感じ。
   これは油彩だけど、この人の絵画はほかにエッチングがあった。よく手元の目録をみると備考に展示期間が書かれている。あぁ、日によって展示されている絵画と展示されていない絵画があるのか………くぅ〜他のレンブラント・ファン・レインの絵画も見たかったなぁ。他にも物語性豊かな絵画があったのだ。グレゴリオ・ラッザリーニの「黄金の子牛の礼拝」とか神話の一シーンって感じで。

   次は「近代絵画のめざめ」。19世紀の絵。
   解説を見ると、それまであまり注目されなかった風景画がでてきはじめたとのこと。風景に物語性はないからなぁ。このコーナーはカミーユ・コローの特集といった案配。コロー以外はジャン=フランソワ・ミレーだけだし。
   展覧会の流れにある風景画もいいんだけど、コローの「森の中の若い女」とか写実的で良い感じ。思わず話しかけてしまいそう。
   と、ここで気付いたんだけど、当初、思っていた印象派中心の展覧会とは様子が違う。なんていうか、贅沢だ。印象派の絵画がでるまで「流している」感じがしない。きっちりみせている。

   それで、次がまさしく「印象派の登場」。19世紀後半
   部屋の入り口に入ってまず目に付くのがチラシに載っていたピエール=オーギュウスト・ルノワールの「少女」。じっくり見たい欲求を抑え、順々に見ていく。ウジェーヌ・ブーダンの「トルーヴィル近郊の浜」は当時の風俗がわかって面白い。今の海水浴だと、水着着て、てな感じになるけど、当時は砂浜にイスを並べ、ふつうの格好で輪になっている。日傘は手にもっている。犬も子供もいる。この人は確か同じ主題で他にも何作か描いていたような…。それでピエール=オーギュウスト・ルノワールの「すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢」等を経由した後、「少女」へ。うーん、期待が大きかった分、何かイマイチと感じてしまった。どうやら以前、見た他のルノワールの作品群の方が私は好きなようだ。でも「少女」の穏やかな表情には惹かれるなぁ
   そんなことを思いつつ、私の目は左の方へと引かれていた。何かというと、エドゥワール・マネの「自画像」。タイトル通り描かれているのはマネ自身。直立していて、上着のポケットに両手をそれぞれ突っ込んでいる。存在感があって良い絵なのだ。その左にあるエドガー・ドガの「レオポール・ルヴェールの肖像」も同じく存在感あっていい感じ
   後は次の部屋への入り口の向かって右側がカミーユ・ピサロの風景画、左側がアルフレッド・シスレーの風景画。どちらも良い絵なんだけど、私はシスレーに軍配をあげた。ピサロはほんとに遠くへ目を向けている感じだけど、シスレーは実際、そこの通りや街を歩いている感じ。何か降り注ぐ陽光や建物やそこに居る人々が醸し出す雰囲気が心地よいのだ。そこへ歩いて歩いて、心地よくなりたい。

   印象派の次は何かと思ったらそのまま「ポスト印象派」。ポール・セザンヌポール・ゴーガン特集といった面持ち。解説をみると、表現手法は印象派なんだけど、美学が印象派とは別のベクトルを向いているとのこと。セザンヌが硬い感じ。造形をビシッとする感じ。あと、フィンセント・ファン・ゴッホの絵もあった。「モンマルトルの風車」。
   お次は「モネ」。クロード・モネのこと。いきなりスペース名が人名になった。文字通り「モネ」特集。睡蓮有り。私は「雨のペリール」の波のうねりの存在感とか「黄昏、ヴェネツィア」の水面のフワフワ感が気に入った。後者はホント、飛び込みたい感じ。

   次は「19世紀末から20世紀初頭のさまざまな動き」。
   印象派は終わったんだけど、その流れで、フォービズム(野獣派)がでてきたぞ、ってスペース。私はどうもフォービズムは苦手。だけどそのエネルギッシュなところはどこか惹かれている。「生」って感じ。
   オディロン・ルドンの「神秘の語らい」は何か古代の壁画を連想していた。

   次、「マティス」。「モネ」に続く人名スペース。アンリ・マティス
   マティスはざっとみた感じ、立体的なのと平面的なのがある。どれも私はあまり好きになれないけど、「画質の裸婦」は好きかねぇ。造形を荒い筆遣いで浮き彫りにしている感じが。
   まだまだ人名シリーズは続く。「ルオー」。ジョルジュ・ルオー
   黒く太い輪郭線を描くので有名。あと20世紀の宗教画家としても。この人の絵はあまり見る機会がなかったけど、すごく強烈な印象。心にストレートに入ってくる。何かどきどきする。ぱっと見るとあまり宗教とあいそうにない個性的な絵だけど、「裁判所のキリスト」を生で直にみると納得できた。絵の迫力(といって良いのだろうか)と神秘性がマッチするのだ。
   お次は「ピカソ」。もちろん、パブロ・ピカソのこと。解説によるとスタイルの破壊と創造を繰り返した人とのこと。その破壊はピカソ自身が築いたスタイルにも及ぶとのことらしい。なるほど、ここに集まる絵画だけでもいろんな種類の絵画がある。
   まず目に付いたのが「ブルゴーニュのマール瓶、グラス、新聞紙」。キュビズムにのってそうなので、抽象的。私の目は平面の絵画と認識しているのに、すぐにその絵画を立体ととらえる。妙な感じ。別に遠近法を駆使して平面を立体にみせているのではなく、砂、新聞紙などの素材をつかって、実際に平面からわずかに出ているのだ。完全に立体と認識できれば良いんだけど、そこらへんが私にとって微妙なさじ加減。変な心地。その感覚を振り切って次。「カップとスプーン」。こちらは平面。ポップさがたまらない。次は「画家とモデル」。筆遣いであそんでるって感じ。モデルは緑色の固まりだわ、画家の顔面は黒がほどばしっているわ、パレットをみると、本物のパレットのように絵の具が固まりでついてるわ、はじけ具合が面白い。

   次のスペースは「具象絵画の冒険」。アンリ・ルソーアメデオ・モディリアーニラウル・デュフィの絵画が並ぶ。あと目録に載ってないので、ユトリロの絵。
   アンリ・ルソーの絵は視点をひいているせいか、その絵柄からレゴブロックを連想させる。後はジョルジョ・デ・キリコの絵画のある「シュルレアリスム」スペースやパウル・クレーの絵画のある「抽象絵画」スペースなど。ここらへんは作品の揃い具合からスペースとして独立させるのはちと強引かなって印象があった。
   この展覧会は豪華といえば豪華なんだけど、欲張りというか意欲的というか、そういったものを感じる。まぁ、おかげで西洋絵画の歴史の一端をみれてとても得した気分だ。初心者にもおすすめ。ひろさを感じる会場だしね。
   西洋絵画の歴史が語られた後、スペースは「20世紀の日本美術のはじまり」や「さまざまな日本洋画」といったスペースへ続いていく。やっぱり出し惜しみなしで良い展覧会だ。





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