|
漢魏晋あたりの平均身長について言及した資料は今まで見たことないですね。
この手の話は歴史家さんが苦手とする分野のように思いますけど、形質人類学あたりの領分になるのかなぁ。
■ 正史の身長
個人的には眉唾だと思いますねぇ……。
古代より中国には、人格の優劣がそのまま身体の特徴として反映されるという人間観がありました。
それだからこそ、史書に描かれる英傑たちは、そろいも揃って化け物みたいな容姿にされているんですよ。
そこには「人並み外れた英雄や聖人ならば、常人とは異なる容姿をしていたに違いない」という思想が働いているのです。
それと同様に身長も、その人の品格をあらわすバロメーターとされていました。
つまり、優れた人物は堂々たる体躯の持ち主に決まっているんですね。
そう考えながら史家は筆をとり、あるいはワザと黙殺してなにも記さないのです。
この辺の事情については、中野美代子先生の「英雄たちの面構え」(『中国ペガソス列伝』収録)が詳しいです。
物語の三国志において、人物の容姿や身長がどのように変えられてきたかを述べたもので、非常に興味深いですよ。
■ 秦始皇の兵馬俑坑
始皇帝陵の兵馬俑は写実的なことで有名ですが、残念ながらモデルの身長までは写しとっていません。
千差万別の表情を浮かべる顔とは異なり、クビから下はいくつかの共通パーツが元になっているんです。
その大きさもモデルになった儀仗兵や近衛軍より大きいのではないかと思います。
なにしろ唯一無二の皇帝を守護する不滅の軍団ですからね。
ちなみに、冠を含めた身長はほとんど170cm以上で、なかには190cmに届くものすらあるようです。
おおよその平均値は175+αぐらいでしょうか。
裏をかえせば、体格に優れた者を集めたであろう儀仗兵や近衛兵にすら、冠込みで190cmを超える人間が存在しなかったということかもしれません。
少なくとも、姚明みたいなのは想像すらできなかったんじゃないでしょうか。
背の低い自分にも姚明なんてうまくイメージできませんけどね。
■ 画像的な資料
漢魏での壁画や俑が簡略化された稚拙なのものだったからこそ、始皇帝陵の俑は衝撃的だったわけで……。
資料としては面白いんでいくつかお見せしたいところですが、著作権が切れていませんからねぇ。
もしかすると、その手のサイトができたりするかもしれませんが、中の人に知識とやる気が欠けているのでなんとも。
|
|