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美術鑑賞メモ「モネ 光の賛歌」
041211
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展覧会名:モネ 光の賛歌
開催場所:奈良県立美術館
開催期間:2004年10月2日(土)〜12月5日(土)
鑑賞日:2004年11月28日(日)



   モネとマネ。名前がよく似ていて、二人とも印象派を代表する画家だけど、代表作に「睡蓮」があるせいか、どちらかというと日本人にはモネの方が有名かな。かくゆう私はマネの人物画が好きで、「モネよりマネ」派を公言しており、風景画の多いモネの絵画はそれほど積極的に見なくて良いなんて思ってた。
   そんなときに開催されたのがこの「モネ   光の賛歌」という名の展覧会。どう見ても風景ばかりの展覧会。
   でも風景画の良さやモネの歩んだ道に触れたくて、その展覧会に行くことを決心した。

   場所は奈良県立美術館。いつもすいている美術館だけど、「日本人大好き印象派」、しかもその中でも人気なモネの絵画とあっては混んでいるだろうと思い、9時という早い開場時間に間に合うように家を出た。
   奈良県立美術館についたのは9時ジャスト。みるみるうちに行列が美術館へと吸い込まれている。いそいそとチケットを買い、いざ会場へ。ベルトコンベア状態(>>参考)とは言わないまでも混んでいる。盛況、盛況。
   この間の「ランス美術館展」(>>参照)とは作品数が違うのか(何せ、モネの絵画だけの展覧会だし)、一階は使われず、いきなり二階から。西南のところ。そこは第I章初期のモネ」と題されたスペース。
   まずは「ルエルの眺め」。後の印象派の絵画とは大きくちがうはっきりとした絵。次とその次はデッサン。こんな習作をみれるのも、モネの絵画だけの展覧会の醍醐味。次が「道」。絵柄はフォービズム入ってる感じ。次が「シャイイ近くの積みわら」。夕暮れの積みわら、田園風景。遠景には夕暮れに浮かぶ街の影、それに雲の端。次のその次は同じテーマで洪水。「アルジャントゥイユの洪水」と「洪水」。まだまだ印象派って感じがしない。さすが初期。

   そうこうしている間に第II章『印象派』の時代」。おぉ、いよいよ印象派?   と思いながら、「アルジャントゥイユの鉄道橋」。さっきと同じ地名が出てきたけど、さっきと違い、水面に筆触分割が見られるし、橋の足が水面に映って良い感じ。次の「モンソー公園、パリ」。もう木の花、芝生、その影に筆触分割がふんだんに出てくる。「アルジャントゥイユのモネの家」もうそういう印象だ。時代順に技術の変遷がみれて面白い。「曇り空のアルジャントゥイユの橋」。水面の揺れ具合が筆触分割。やっぱり印象派といえば水面なのかな。次の「橋から見たアルジャントゥイユの泊地」も。で、そう思いながら現れたのが「セーヌ川の柳」。柳の影が水面に映っているんだけど、光の部分は真っ白。力強い白!   そんなに光を強調したいのか?   と思うぐらい意欲を感じる。荒野がある「リンゴの木」に続き、「白いポピー」。これは花瓶に白いポピーが入っている絵。風景画ではなく静物画かな。鑑賞している人が「日本画みたい」っていってた。そんな絵。

   フロアを二階の北西に写し、まずは「傘を差す婦人(デッサン)」。この時点でも婦人の顔がはっきりと描かれていない。「ヴェトゥイユへの道」。風景画。山があって雲があって路傍がある。そのどれもが筆触分割。だんだんと印象派っぽくなってきた。その次は同じ地名の「ヴェトゥイユの柳」、「ヴェトゥイユ、水浸しの草原」。後者なんかは筆のかすれが見えるほどで、新しいものを描こうとする意欲をひしひしと感じる。「プティタイユの小道」、「断崖近くの船、プールヴィル」と続く。後者の船って言うのが筆で三日月状のものを書いただけ、ホント、印象とか瞬間とかの言葉が似合いそうな船だ。もちろん海は筆触分割。次は「プールヴィル税官吏の小屋、波立つ海」。これは構図がいい。画面上部に水平線が見え、左下に小屋がみえる。世界って大きいんだ、ってことを実感できる。草も波も躍動感というか生命感にあふれている。「ヴァランジュヴィルの教会とムティエの教会」、「ジウェルニーの積みわら」。後者は筆触分割の、筆触ごとに暖色と寒色が交互にでてくるのが効果的に見える(補色ってやつ?)。このスペースは「シヴェルニーへの道」で終わり。

   次のスペースが第III章連作の時代」。連作って何?と思うけど、ちゃんと解説がかいてある。積みわら、ポプラ並木、ルーアン大聖堂とフランスの源流的な風景画を連作にしているそうな。「地中海の岸   曇り日」。補色がふんだんに使われている。それから「地中海、アンティーブ岬」。モネにしては珍しく岩肌がはっきりしている。地中海つながりで連作?   次が「積みわら」。
   部屋を二階の中央に変えて、初っぱなが「ルーアン大聖堂(習作)」で以下、「ヴェルノンの教会」。それと同タイトルの「ヴェルノンの教会」。淡い色使い。色おち?って感じ。続く「セーヌ河畔の朝、霧」。淡い水面。水墨画に通ずる。

   二つほど作品を残し、第IV章ロンドン風景」。部屋も変わって南東のところ。どうやら湿潤がテーマらしい。初めは「チャリング・クロス橋、ロンドン」。淡い色使いの中に水面がキラキラなのだ。次が「テムズ川の橋(チャリング・クロス橋)」。こちらはさっきと違い、夜の風景。こっちも良いな。次は「国会議事堂」、「国会議事堂、海カモメ」。前者は夕闇の中、水面を手前にしシルエットが浮かんでいる幻想的な絵だ。次はウォータールー橋の絵画4枚。同じものを描いているのに、遠目に見てすごくちがった印象を受ける。「ウォータールー橋、ロンドン、日没」、「ウォータールー橋、ロンドン、夕暮れ」と続く。後者は赤っぽい橋。続く「本曇りのウォータールー橋」。空も海も黄色っぽい。ところが次の「ウォータールー橋」になると、水面にピンクっぽいものがまじっている。同じものを描いているのに、時刻や状況によってこうも違うのか、こうも違うように描けるのかってよくわかる並びだ。モネが描こうとしていることに少し触れられたような気がした。
   それからこのスペースの最後は「霧の中の太陽」。暗い青っぽい画面、真ん中を横切る橋も手前の水面も空も淡い青、霧の空気だ。その中に画面上部端の真ん中に赤い太陽がぼぉっと浮かんでいる。その光を水面が受け、そこも赤くぼぉっと浮かんでいる。良い!   すごく良い!   この展覧会の中で「最高!」と思った。

   そして二階の北東へ場所をうつし最後は第V章睡蓮の庭」。いつものやつ。印象派関連やモネ関連の展覧会だといつも出てくるコーナー。特筆すべきことはなく再会に喜んだぐらいだった(「>>マルモッタン美術館展」での感動はどこへ行ったんだって感じだけど・汗)

   今までの印象派関連の展覧会でポツポツと見ていたモネの風景画だけど、今回、たっぷりと見たし、同じ対象物を描いた違う絵を比べて見ることができた。
   すっかりモネの風景画に見せられ、美術館を後にした。





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