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美術鑑賞メモ「栄光のオランダ・フランドル絵画展」
041206
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展覧会名:栄光のオランダ・フランドル絵画展
開催場所:神戸市立博物館
開催期間:2004年7月17日(土)〜10月11日(月・祝)
鑑賞日:2004年10月10日(日)



   この展覧会はポスターでもチラシでもチケットでもフェルメールの絵画「画家のアトリエ」があって、チラシの文もいきなりフェルメールの話になっている。明らかにこの展覧会はフェルメールの絵画をプッシュしていた。フェルメールの絵は数少なかったんで、タイトルにフェルメールってつけるのをはばかられたんだろうか
   以前、大阪市立美術館でやっていた「フェルメールとその時代展」の最終日にそこへ行ったら、「三時間待ち」だったのであきらめて帰ったという経緯があった。そのときの悔しい思いもあって、この展覧会に行くことにする。今回は一緒に行ってくれる人もあってそういう意味でも楽しみ。
   さて、会場の神戸市立博物館だけど、以前、きたときは(オルセー美術館展?)、自由にみれない言わば「ベルトコンベア状態」だった。今回も人気高そうなので、そうなることを危惧していた。

   神戸市立博物館に到着したのは開場10分前の9時20分。やっぱり大勢並んでいた。「こ、これはベルトコンベア状態?!」と恐れながら列の後につく。
   9時半ちょっと前、開場、ぞろぞろと博物館へ入っていく。チケットを買って、会場へ入る。順路から行くと、三階からはじまるようなので、階段を上がっていく。今回の展覧会は作品リストが配られているので混んでいても好印象。

   三階の会場に足を踏み入れると、初めに目に付くのが、「カンパスペを描くアペレス」。天使がいたりと神話色があるんだけど、群像としてみることができ、各人の視線の交差が楽しめる。「どういった時代の絵画だ?」と思ってそのコーナーのタイトルをみると「16世紀のネーデルラント絵画」となっている。ネーデルラントとは「低い土地」という意味らしく、現在のオランダ、ベルギー、ルクセンブルクといったところらしい。なるほど、まだ絵画に神話色がつよいわけだ。次が「ヤン・デ・ヘムベイゼの肖像」。何か同行した人が「ヤン」という名前だけでキャーキャー言っているんだけど(汗)。
   次は「ウェヌスから立ち去るバッカスとケレス(ケレスとバッカスがいないとウェヌスは凍える)」。タイトル通り神話を題材とした絵画。私は神話にはうとくよくわからないんだけど興味はある。後で据え置きの図版をみたら、どうやら、ケレスはパンの象徴(豊壌の神)で、バッカスは葡萄酒の象徴で、ウェヌス(英語読みでヴィーナス)は愛の象徴。つまり食がなければ愛も冷めるってことなのかな(笑)。あとパンと葡萄酒はもちろんキリストの肉と血という意味もあるからそこら辺も含め、奧が深そう。   うーん、神話を題材としたのも面白い。その次も神話を題材にした絵画。「ウルカヌスの鍛冶場のウェヌス」。作者は先の絵と同じでバルトロメウス・スプランゲル。ウルカヌス(英語読みでヴァルカン)は鍛冶場で働いている絵なんだけど、明らかにウェヌス(英語読みでヴィーナス)といちゃいちゃしている(汗)。まさに公私混同!   同じ作者で「皇帝ルドルフ2世に捧げる寓意」、「ケレスのいる四大元素の寓意」。後者はやっぱり神話もの。近くにいたおばちゃんが一所懸命、四大元素を口に出して考えていたのが印象的(笑)   次は作者がかわるがやはり神話もの。「動物たちの中のオルフェウス」。画面の中央の遠景の中、竪琴をひくオルフェウス。そのまわりを囲む動物たち。地上は茶色っぽく、空は淡い青。その対比が印象的。
   お次はヤン・ブリューゲルの作品。「小さい花卉画」、「動物の習作(犬)」、「動物の習作(驢馬、猫、猿)」。二番目の作品では死骸も描いてありはらわたがばっちり描かれていた(汗)。研究熱心だことで。お次が「父アンキセスを担い、炎上するトロイアから逃れるアエネアス」。夜の光景に炎上する街。やはり現代人の私が見るに、後世の作品にくらべ、光の表現が甘いかなぁ。
   次は「春(アモル)」。作者はネーデルラントの画家(こういう名もないのって良いね)。風景があっていろんな人がいて、何かそれぞれに文字が打たれていて、何かのカタログみたいな構成。真ん中にいる人がアモル?なんて思っていたけど、後でみたカタログによると真ん中の人は軍神マルス。正解は空を飛んでいる小さなの。

   次のスペースのタイトルは「17世紀のフランドル絵画」。フランドルは南部ネーデルラントとのこと。冒頭は「イザベッラ・デステの肖像(ティツィアーノの模写)」、「キモンとエフィゲニア」、「隠士と眠るアンジェリカ」、「自画像」とペーテル・パウル・ルーベンスの絵画が続く。ルーベンスの絵画といえば、「フランダースの犬」の主役ネロが亡くなる間際まで見たがっていたので有名かな。巨匠なのだ。それなのに、私は「キモンとエフィゲニア」に、犬、猿、キジが描かれているのをみて「桃太郎」なんてアホなことを思っていた。あと「自画像」はなくなった年に描かれた絵。黒い服を着ていたので、何か死を暗示していたのかな、と知らないながら思っていた。それと「イザベッラ・デステの肖像(ティツィアーノの模写)」と「キモンとエフィゲニア」の間には「獅子の洞窟にいるダニエル」という絵画。これはルーベンスが作者じゃなく「ルーベンス周辺の画家」とのこと。英語で「Rubens-Circle」となっていたので「ちょっと見てみたサークルだ」だなんておもってた(笑)。
   次が「枢機卿親王フェルディナント(ルーベンスの下絵に基づく)」。鎧を着たフェルディナント。格式張ってない何気ない表情だ……と思っていたら、同行した人が「カッコいい!」と言ってキャーキャーいってんだけど(笑)。あと、三つ後の「男の肖像(画家パウル・デ・フォス<?>の肖像)」がジョニデジョニー・デップ)に似ていて「カッコいい!」と言ってキャーキャーいってるし(笑)。
   あと、宗教画も目立つ。「マリアと福者ヘルマン・ヨーゼフの神秘の婚約」、「聖母の前で忠誠を誓うネーデルラントの諸州」。前者は、きれいに描かれているマリアとひざまずいて手を取るヨーゼフ、その間に人間っぽい天使が見えている。良い構図。後者はネーデルラントの諸州を女性に例えていて、それぞれ紋章を携えている。構図や意味合いが面白いけど、さっきのマリアに比べて数段、おちるえがかれかたかな。
   対照的に神話の絵画も引き続き目立つ。「レアンドロスの死を嘆き悲しむヘロ」、「アベルの死の哀悼」、「フローラ」、「バッカスの祭の行われている風景」、「バッカス」、「庭園の中のフローラ」。「16世紀のネーデルラント絵画」のスペースと比べるとより神話の世界に浸れる。でも「バッカス」のバッカス・スマイルは人間くさすぎて気持ち悪い(笑)
   3階の最後は「ヨーロッパの寓意(ヤン・ファン・ケッセルの作品の模作)。真ん中の絵を取り囲む16枚の小さな絵。ユニークな構成なのだ。

   階段を下りていざ、二階へ。まだ「17世紀のフランドル絵画」。二階のスペースへ入るとまず目に付くのが並んだ二枚。ダーフィット・テニールスの「村への襲撃(農民の苦しみ)」、「農民の結婚式(農民の喜び)」。農村の人間模様がドラマチックに描かれている。お次はアブラハム・テニールスの「猿の煙草嗜好団」、「猿の床屋に猫の客」。人間が猿とか猫とかに置き換えられ、差詰め、「鳥獣戯画」西洋版といった面もち。

   そして三番目、最後のスペースが「17世紀のオランダ絵画」。こちらは北部ネーデルラント。初めはやたら風景画が続く。作品リストの解説を見ると、「裕福な市民たちの邸宅を飾るための肖像、風景、静物といった様々な絵画ジャンルが発達し」たそうだ。なるほど。部屋にかざるには良さげ。しかし、そんな大人し目の絵画ばかりじゃなく、フィリップス・ヴァウエルマンの「旅人への襲撃」は映画の1シーンを切り出したようなダイナミックな描写だ。
   それから巨匠、レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン(長いフルネーム・汗)の絵画、「金鎖の首飾りとイヤリングを付けた毛皮の上着の自画像」、「使徒パウロ」。レンブラントの自画像は生涯、何度も描かれていて、その描かれた歳のことが絵に反映されていると言われている。えらく着飾ったタイトルだけど、このときって落ち目だったっけ?(記憶があいまい)

   とまぁ、他にも絵画が十枚ほど続くんだけど、最後の絵は別室&別格。冒頭でも出したフェルメールの絵画「画家のアトリエ」だ。
   通路を歩いていく。よく見ると、床が白と黒の市松模様(チェス模様)。これはもしや「画家のアトリエ」で描かれている床と同じ模様?!。そこまで演出するか、と思いワクワクしながら歩を進める。
   で、出たところは人だかり。人の向こうに「画家のアトリエ」があるようだ。何とか、人が出ていく隙をみて、前の方へ、絵画の方へ近いところへ進む。そうすると、絵画のすぐ周りには人、三人分ぐらいの空間があって、柵で囲まれている。何でもっと近くまで行けないのかなぁと思って、よく絵画の周りを見ると、向かって右に今居る群衆とは別の行列ができている。そこから一人ずつ絵の間近に行ってまじまじと見ているのだ。周りの人の話を総合すると、「画家のアトリエ」を間近で見ようとすると、行列に並んで、順番待ちをしないといけないらしい。どうも、その待ち時間は一時間とのこと。それだったら、ここでも良いやとばかりに少し距離のあいた柵越しで眺めていた。
   作品自体はさすがに素晴らしいもの。質感がなんていうかリアルだ。実際にそこにありそうだし、左から入る光が心地よい。何より、絵画を描いている光景を絵にしている、っていう主題が面白いのだ。

   ずっとそこに居て、眺めていられそうな気がしたけど、そうせず、ある程度、眺めたら、その場を後にした。





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