<<
>>
美術鑑賞メモ「レオン・スピリアールト展」
030511
<<美術鑑賞メモ目次
<<美術鑑賞メモ「連続と侵犯」



展覧会名:レオン・スピリアールト展   ベルギー発。知られざる神秘空間。
開催場所:ブリヂストン美術館
開催期間:2003年4月9日〜6月6日
鑑賞日:2003年4月27日



   私の認識では、展覧会というと、○○美術館展とかいって、銘打たれた美術館の所蔵品を別の美術館で展示するのと、ある芸術家の作品を集め、それらを展示するのと、主に二通りある。
   後者の展覧会だと、その芸術家が作品にどういう個性(テーマも表現手法も)を反映させているかを読みとるのが楽しみだったりするし、特にそれがしらない芸術家だとそれが鑑賞のメインテーマになってくる。

   今回、行った展覧会は、まさに知らない芸術家の展覧会。
   ちょっと東京まで遊びに出ていて、せっかくだから、どこか美術展に行こうと思って、いろんなサイトで目を通して、良い絵だなって思ったのがこの展覧会。

   そこの美術館は「ブリヂストン美術館」。
   東京駅から歩いてすぐのところ。
   以前、ルノワール展か何かで来たと思う。さすがにルノワールぐらいの著名な画家だったら、ずいぶん並ばされた。30分ぐらい。

   今回は失礼な話、大丈夫とふんでいたら、案の定、一秒たりとも並ばなかった。
   ブリヂストン美術館はうまく都心とマッチしている美術館で、ビルの1,2階が使われている(多分)。

   今回、行ったのが「レオン・スピリアールト展」。
   個人の作品に焦点をしぼった作品展は、大抵、年代順に展示して行くんだけど、今回は描かれる対象ごとにわけていた。つまり、自画像とか女性とか風景画とかそんな分け方。
   ちょっと画家の興味対象とか画風とかの変移が見えにくいかなと、残念に思ったけど、頭をきりかえとりあえず見ていこうと心に決める。

   冒頭で書いたように、私が絵を見るときの基準になったのが、この画家の個性はどこなのかってこと。
   見ていくと、「ほうほう、曲線が印象的に出ていますな」などとエセ評論家っぽく頭の中で講釈たれていた。
   そして、エリアが変わって「風景画」のところ。
   そうすると、「曲線」って決めつけが音を立てて崩れていく。

   ほとんどの風景画が画面の上の方にある消失点に向かって線が走っている。
   単純ではっきりした遠近法。
   見ている人の手前を強調する遠近法というより、私には対象との距離感を充分にとった遠近法のように思えた。
   絵によって色使いや構成で、力強い絵だったら、爽快感のある絵だったり、幻想的であったりする。

   もう出口まで来たので、「こりゃテーマごとに見た方がいいな」とばかりに入り口まで戻って再度、絵を鑑賞する。
   今度は描かれた対象ごとにどう違うかを見極めるためだ。
   うーん、この展覧会の意図通りの鑑賞方法かな(笑)

   まず「初期作品」のエリア。
   エリアの名前からして当たり前だけど、このエリアだけ、ある時代の絵画が集中している。
   何か、挿し絵に登場しそうな……

   次は「自画像」エリア。
   他のエリアと違ってリアリティのある絵……第一印象はそう抱いた。
   同じような顔が並んでいる一角だけど、どうも、どれも違う絵に見える。
   色合いとか背景とかで何だか、情感を表しているよう。
   どちらかというと、どれも暗い印象を受ける。
   だけど、どうもそのうちの一つが気に入ってしまう。惹かれてしまう。

   その後、「静物と室内」「女性のイメージ」「スピリアールトと文学」「夢と幻想」「風景」と続くことになる。

   やっぱり、作家の個性より、各テーマの個性が印象的に魅入ってしまう。
   まあ、作家の個性としては暗いトーンの中にどこか不思議感があるってのは共通しているけど、ときにそう思い込んでてときに驚かされるときがある。
「こう来たか!」ってな感じで。

   その極端な例が「灯台」というタイトルの絵画。
   暗いトーンの中に突如、現れた明るい調子。
   もう、その現れ方が馬鹿馬鹿しくて笑っちゃうほどなんだけど、自らの心にある可笑しみが消えるほど、その絵には無垢さや前向きな心があるように思えた。
   暗いトーンの中へ灯台の、導きの光、それを頼りに向かう天かける馬、そして両手をあげ、喜びを表現しているような女性。

   一見、どれも同じように見える絵画だけど、二回目は各テーマごとに個性が見えた。
   私には三回目を見るっていう選択肢があったけど、それをやめとくことにした。
   多分、三回目には各テーマにあるそれぞれの作品の個性も見えて来るんだろう。
   そうなれば、もう、この作家の魅力のとりこになるんだろうけど、それは次また、出会うときの楽しみにしようと、その場を後にした。





<<
>>