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美術鑑賞メモ「小谷元彦展『Modification』」
040222
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展覧会名:小谷元彦展『Modification』
開催場所:KPOキリンプラザ大阪
開催期間:2004年1月17日(土)〜3月28日(日)
鑑賞日:2004年2月22日(日)



   そろそろどこか、美術展に行きたいなぁ、と思っていて、ネットをさまよいつつ、いくつか行きたいのをピックアップしていた。

   そんなおり、TV番組「新日曜美術館」に紹介されたのがこの美術展。それに続いて出来た大阪へ行く用事(<<参照)。
   というわけで、必要と欲求が満たされた。

   そこの美術館は昔、行ったことがあるところ。たしか、キース・ヘリングの美術展で……って今、ネットで調べたら、1998年8月7日から9月6日の「The Graffiti from New York   バスキア   ヘリング   シャーフ」って美術展らしい……前世紀やん!

   場所は、大阪のど真ん中、心斎橋の戎橋。俗称で「ひっかけ橋」と呼ばれるすぐそばで、そんな近くにあるとは思えないような、異質な雰囲気が漂っている。
   建物を入った一階にはレストランがあり、エレベーターの前で入場券を買うって手順。
   そこから、エレベーターで四階へ。

   エレベーターから四階に出てすぐにさっきのチケットを切られ、会場へ。
   目の前には白いパーティション。そこに『小谷元彦展「Modification」』とピンクの文字で書かれている。そのパーティションの向こう側に行くには、左か右の入り口を通るようになっている。どうやら、作品が展示されているところは、土足厳禁なようで、左の入り口から靴を脱いで、中へ行く。

   まず目についたのが、右手にあるもの。何かの丸いコクピットを引っぱり出して、そこへ置いてあるような立体作品(中身は見えないけど)。人より大きい。たくさんのコードがそこから出て、あたりの床においてあったりと、メカニックな感じなんだけど、壁の色と同じく「白」で塗られている。
   まぁ、とりあえず、向かって、右から順序よく見ていこうと、その作品は後回しにする。

   向かって右の入り口近くでまず目に付くのが、子鹿の剥製。そして、その両前足、両後足につけられた歩行補助金具のようなもの。その色合いはちょうど、フォークやナイフを連想させるような金属光沢がある。それは「ERECTRO」。電気とかいう意味合い?

   次は足首ぐらいの白い台にのせられた黒っぽいドレス。
   「これが何だと言いたいんだ?」とばかりに壁のタイトルを見る。
   何々…タイトル…「Double edged of thoughts」………「サイズ可変」…まぁ、服だから当たり前…「Dimension variable」……材質は?…「人毛」!……「Human hair」!!
   これって、人の髪の毛で編んだ、ドレスなんや!   だから黒かったり茶色かったり!!   一体どんな肌触りかと一度は着てみたいなと思ったのは内緒(笑)

   それから次に行くと、天井から鍾乳洞のつららのようにぶら下がっている物体。部屋のカラーに合わせて白い。
   タイトルを見ると「Skeleton」。なるほど。そういわれると、ただれた肌や白骨にみえてくるから不思議だ。

   それからここへ来たときに気になっていた立体作品。コクピット(清岡命名)のやつ。
   タイトルは「Berenice」(ベレニケ。地名で同名があるけど)。ほんと、メカメカしくて見ててあきない。

   靴をはいて、一階上の五階へ。階段の壁には展示している作品のノートやスケッチの類がある。ま、後回し。階段を上っていると、さっき居たところから、関西名物の、周りに気をつかわないと言いたげな、おばちゃんのおしゃべり声。あぁ、助かった。一足遅く来なかったことに。

   四階と五階は吹き抜けになっていて、五階からさっきの作品を見下ろすことができる。また、何か見下ろそうと、入って右に進みと、壁際の足下の方へ、ショッキングなものが見える。

   風呂場のようなタイル敷きに横たわる全身包帯巻きの赤子

   もちろん、人形なんだけど、私の視界の端にそれを認識したとき、背中に寒気が走った。全身包帯巻きだけど、その形で赤ん坊だと認識できていた。
   作品はこの階にないと思っていたから、ショックがより大きくなっているとは思うけど。
   タイトルはさっきの子鹿と同じ「ERECTRO」。さっきの「ERECTRO」はおしゃれな感じだけど(後でポストカード買ったし)、こちらはエグい感じ。でも嫌いではない。何かを訴えているようで、耳を傾けたくなる。

   それから六階へ。
   どうも、フロアー自体、映画館か何かを模しているようで、パーティションには映画館の前のように時間配分やポスターがある。入り口で係員にチケットの半券を確認される。それからその半券の裏に「受付   2.22」という判子を押され、このフロアーの説明を一通り受ける。私の頭には「映画館」というコンセプトがインプットされているんで、「この係員も作品の一部?」なんて思ってしまう(笑)

   その説明通り、まず左の壁にいき、壁に掛けられたモニターに行く。
   作品名「Rompers」。直訳すると、おてんばたち、といったところだろうか。
   用意されたヘッドフォンをつけ、いざその映像作品を見る。TV番組「新日曜美術館」でこれは「幼児番組を模した」と紹介されていたことを覚えていてある程度の予備知識はあった。
   それでもこの作品の不気味な世界に引き込まれる。音楽からして軽快な曲に聞こるけど、変な音だ。
   映像は太い木の枝に座る少女。ちょうど、チラシやチケットに出ている少女だ。よくその顔を見てみると、眉毛と眉間のところが隆起している。私はSF番組「Star Trek」シリーズの「とりあえず異星人ってわかるように額あたりを特殊メイキングしとけ」っていうような異星人メイクを連想していた。あと、指も特殊メイクで長くなっていて不気味。あと、目が黄金だ。
   おまけに少女の目の前を飛ぶ虫を少女はカメレオンのような舌使いでペロリと食べる。あと、TV番組「新日曜美術館」で紹介されていた耳付きカエルもいい味だしている。
   親は「この怖さは子には見せられない」と思うだろうし、子はゲラゲラ笑っちゃって、はしゃいじゃいそうな映像作品。
   私はあまり幼児向け番組を見た記憶がないんだけど、確か、実社会ではなさそうな、変な(派手な)彩色やノリにここで見られるような「怖さ」を感じていたような気がする。

   ヘッドフォンを外し、奥の壁のスクリーンへ。
   そこには映像作品「Caterpillar」。毛虫。
   白く毛むくじゃらで二足歩行の生物二頭と、白いツーピースの水着を着た女性がダンスしてる。女性はさっきの「Rompers」と同じく眉毛の部分が隆起した特殊メイク(笑)。

   その次はこのフロアーの真ん中にある箱形のもの。作品名「9th room
   係員の説明によると、この箱の中に入って、鑑賞する作品とのこと。
   一面のスクリーンがまくられ、そこを通って、中に入る。
   中は上下の二面が鏡で、側面の四面はスクリーン。どうやら、外から四つのプロジェクターでそれぞれのスクリーンに映写しているようだ。
   下の鏡の中央には一台のスピーカーが埋め込まれていて、上の面と側面との四つの頂点にもスピーカーがそれぞれ一台計四台ある。
   それで、側面のスクリーンに映像がテンポよく流れていく。音もなにやらなっている。
   ガラスの割られるところとか、なにやらシミのようなものとか、滝のような水の流れとかが印象的。
   それらの映像が上下の鏡に映されるもんだから、それはもう現代万華鏡といった趣。
   あと、滝のような映像の上下の動きで気付いたんだけど、上と下の面に鏡があるということは合わせ鏡ということで、実際には狭い空間ながら、上下に無限の広さを感じていた。それが面白いもんだから、何度も下をみたり上をみたりしていた。

   一回の映写が終わると外に出る。
   だれか、プロジェクターの前に突っ立っていて、映写の光を遮っていた。すぐしっかりと係員に注意されていた。やっぱり係員も作品の一部だ(笑)

   それから階段の壁のメモをしっかり見る。「Rompers」と思わしき少女のスケッチには「不気味なピンポンパン」というメモが残っていた。
   「ピンポンパン」とは昔、やっていた幼児番組。清岡はリアルに見たこと、ないけど、なんか、妙な説得力をうけてしまった。そういった番組に見え隠れする不気味さって共感する。
   あと、「Caterpillar」の女性のスケッチ。足の部分の履き物に「網タイツではない」と書いてあったのが妙に印象的だった。
   「Berenice」のメモ。どうやら、中にはアンプとかスピーカーとかCDプレイヤーとか内蔵されているとのこと。そうか。なんか空調のうるさい部屋だなって思っていたら、作品の一部だったんだ(汗)
   それを確認するため、また「Berenice」を見に行く。

   そうやって、いろんな作品を味わい、満足した気分でその場を後にしたのだった。





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