メモ:恋愛ドラマとケータイ(2014年1月22日)

 図書館から中村隆志/編著『恋愛ドラマとケータイ』(青弓社ライブラリー79、青弓社2014年1月22日発行発売)を借りてきて、2014年11月29日土曜日18時30分開始の三国志フェス2015の黄巾党(ボランティア・スタッフ)の決起集会に向かう列車の中で読み切る。

※追記 メモ:第20回三顧会 前夜祭(2014年5月3日)

・青弓社
http://www.seikyusha.co.jp/

・恋愛ドラマとケータイ | 青弓社
http://www.seikyusha.co.jp/wp/books/isbn978-4-7872-3367-7

 タイトルからも想像できるように三国とはまったく無関係な書籍だ。しかしながら三国に関する研究や三国の受容に関する研究で何かと使えそうなので、記事にしてみた。


 この書籍は複数の執筆者でありそれぞれ注を分け独立性が高く論文集みたくなっているものの、まるでリレーのバトンのように提示した概念や研究成果を次の人に引き継いでおり、そこらへんでまるで軸が通ったようなまとまりがある。
 まず気になったのが、pp.61-95 本條晴一郎「第2章 イノベーションとしてのケータイ普及と恋愛ドラマにおける変遷」だ。タイトルにある「イノベーション」からも伺えるように、イノベーター、アーリーアダプターとかの経済学的な分類を軸にして結構、驚いたのだけど、p.81で「コンテクスト度」という概念を持ち込んだのには感心した。あれこれ他にも使い回せそうな概念だ。例えば三国志ファンの間でのコンテクスト度はどうなのか?、とか。

※関連記事 "RED CLIFF Part II" JAPANESE OPENING (ROBOT Communications Inc.)

 コンテクスト度は人類学者のエドワード・ホール提唱のもので、注で「(12)エドワード・ホール『文化を超えて』岩田慶治/谷泰訳、ティビーエス・ブリタニカ 一九七九年」に基づいているとのこと。それを用い、本書の第1章から時代区分される第2期から第3期への変化の説明がされていた(時代区分について前述の書籍ページ参照)。主にケータイ・メールを対象に、前者から後者の期へはコンテクスト度(=文脈の度合い)の低い値から高い値への変化だと。その定義はp.81から下記に引用するようになる。

━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 コンテクスト度が低いメッセージとは、言語によって意味が明確に表されたメッセージのことである。一方、コンテクスト度が高いメッセージとは、明示的に伝達される部分に最少の情報しか含まれないメッセージのことである。コンテクスト度が低いメッセージは、事前に相手と認識が共有されておらず、伝達するメッセージのなかに情報を盛り込む必要がある場合に使われる。アメリカ合衆国は、多くの場面でこうした低コンテクストなコミュニケーションがおこなわれる社会、つまり低コンテクスト文化の社会であることが知られている。
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
※ドイツは高コンテクスト文化だそうな。

 単純に三国志ファンのコンテクスト度はどんなものか、また内在するいろんな三国作品のファンでは違ってくるのか気になる。例えば、下記関連記事にあるエレ片ファンが三国志フェス2013に出展したとき、回りの三国志ファンが両手を前に組んで、挨拶する様がよくわからなかったというエピソードは、その三国志ファン同士のコミュニケーションが高コンテクスト度を有しているために引き起こされたギャップってことだろうね。

※関連記事 『エレ片のコント太郎』ポッドキャスト2013年9月14日分

 その次がpp.129ー164 遊び橋裕泰「第4章 恋愛ドラマのソーシャルネットワークとケータイ」についてだ。特にネットワーク分析についてだ。その分析についてはp.144に次に引用する段落がある。

━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 逆に、ソーシャルネットワークの構造から人々に影響する社会の特徴を捉えることもできる。例えば学校のソーシャルネットワーク構造がわかれば、学校というコミュニティーが全体として風通しがいい校風をもっているのか、堅い校風をもっているのかがわかる。また、特定の人物に注目すると、その人がソーシャルネットワーク内のどのポジションに存在するのかで、コミュニティーの中心的な人物なのか、あるいはグループ同士をつなぐような人物なのかといったこともわかる。このように、ソーシャルネットワークの構造からコミュニティーの特徴や人物の性質を明らかにする科学的な方法として、「ネットワーク分析」がある。
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 上記引用部分の「ネットワーク分析」に注(5)が付けられており、それはp.164に「(5) 安田雪『実践ネットワーク分析──関係を解く理論と技法』新曜社、二〇〇一年」とある。

・新曜社
http://www.shin-yo-sha.co.jp/

・実践ネットワーク分析 - 新曜社
http://www.shin-yo-sha.co.jp/mokuroku/books/4-7885-0781-1.htm

 そこでは書籍のタイトル通りネットワーク分析の対象を恋愛ドラマの作中の登場人物としている。コミュニケーションを行った回数の統計をとり、やはり書籍のタイトル通り、ケータイを介した場合、マーキングをし考察されてある。

 こういった分析を『三国志』を初めとする史書に記載のある人物が織りなすネットワークについての検討に使えそうだと真っ先に思いつく。人物によっては(…というか大半?)史書においてそういったコミュニケーションに関する記述が少なく、有効な量を拾えないかもしれないが、個人的にはやはり孫策のネットワークの全容を浮き彫りにしてみたいね。

 あと全然、関係ないが、この書籍を見ると、『素直になれなくて』というドラマをみたくなった。

・素直になれなくて - フジテレビ
http://www.fujitv.co.jp/b_hp/sunao/

※追記 ノート:六朝建康都城圏的東方―破崗瀆的探討為中心(2014年12月6日)

※新規関連記事 中華オタク用語辞典(2019年6月28日)
http://cte.main.jp/newsch/article.php/3327