『先代旧事本紀』(せんだいくじほんぎ)は、平安時代のはじめ、830年ごろにできたとみられる。物部氏(もののべし)の家記(家の記録)といえるものである。『先代旧事本紀』は神武天皇よりも前に、物部氏の祖・饒速日の尊(にぎはやのみこと)が畿内へ東遷降臨したことをややくわしく伝える。そのことを支持するような考古学的事実もある。あるいは、これは北九州にあった邪馬台国本体の東遷伝承ではないか。日本古代史の再建のため、『先代旧事本紀』全文を冒頭から注意深く読んでいく。なお、『先代旧事本紀』の序文には、『先代旧事本紀』は、聖徳太子と蘇我馬子(いずれも、7世紀前半ごろまで活躍した人物)が編纂したと記されている。そのため、江戸時代以降、偽書であるとの説もあらわれた。「序文」は、後代の付加として疑うべきである。しかし、本文には『古事記』『日本書紀』にはみられない、古伝とみられる記述や、古い用字法などもみられる。また、9世紀前半ごろまでに成立した史書の数は、それほど多くはない。平安時代初期には、存在していた文献であるので、貴重な価値をもつことはたしかである。 今期も、引き続き、巻10「国造本紀」を読み進めます。(講師・記) ※2012年4月開講、2024年3月終了予定。 ※授業開始20分前程から受講者による発表(テーマ自由)を行います。(希望者のみ)
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