姜維伝 諸葛孔明の遺志を継ぐ者(2010年3月5日)

昨日の記事を作る際、下記のブログにアクセスして知ったこと。

・歴史アイドル(歴ドル)小日向えりの「三国志見聞録」
http://ryo0207.cocolog-nifty.com/blog/

・「姜維伝」の帯!&Tシャツ三国志 (※上記ブログ記事)
http://ryo0207.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/t-00d3.html

上記ブログ記事にあるように、2010年3月5日に朝日新聞出版から歴史小説で小前亮/著『姜維伝 諸葛孔明の遺志を継ぐ者』(ISBN9784022507259)が1680円で発売したという。

・朝日新聞出版 最新刊行物
http://publications.asahi.com/

・朝日新聞出版 最新刊行物:書籍:姜維伝
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=11308

※新規関連記事 姜維(2023年7月21日)

上記ページから初めの2ページを閲覧することができる。そもそも旗に国名を大書するなんて記録はどこにあるんだ、どこからの先入観だ、という細かいツッコミはおいといて、劇中の姜維の置かれた状況を暗示するような美しい情景描写だと思った。同著者の他の三国小説は下記関連記事を参照。

※関連記事 三国志2 天上の舞姫(2009年7月10日)


上記ページから内容紹介文を下記へ引用する。

━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『三国志』の英雄・諸葛孔明から才能を高く評価され、後継者として国を託された男がいた。その名は姜維。祖国を支え、強大な隣国の侵攻にいかにして立ち向かうのか――。国民的名著『三国志』の知られざるラストシーンを、若手歴史作家の旗手小前亮が描く。イラストは超人気ゲーム『三國志』『戦国無双』シリーズのキャラクターデザイナー、諏訪原寛幸。
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本の題名が姓名表記なのに、副題はなぜ姓字表記にしているんだろう、という本質とは無関係なツッコミはともかく。
内容紹介文の「国民的名著『三国志』の知られざるラストシーン」としているあたり、『三国志』に対する現在日本の誤認の一事例や小説を歴史書と同名にする弊害の一事例として、記録に値するだろう。このブログで説明するのも回りくどいだろうけど、検索でこのページから読む人が多いだろうから一応、説明すると、陳寿撰『三国志』は人物毎に記録されている歴史書であるため、「知られざる」どころかラストシーンなんてものは存在しない。強いて言うなら『三国志』巻六十五呉書王樓賀韋華伝の陳寿による評だろうか。
解釈を緩く見て、「国民的名著」という枕詞があり、わざわざ中国国民のことを単に「国民」と称するとは考えられないことから、陳寿撰『三国志』と同名の小説の吉川英治/著『三国志』を指しているのかもしれない。だとしたら前述したように自著の小説を歴史書と同名にしたことにより、混同し誤解を与える弊害が現れているといえる。

また同日に同社から安野光雅/著『新編 繪本 三國志』(ISBN9784022507136)が2940円で発売したという。これは下記記事にあるように『週刊朝日』で2007年2008年と連載されていた『繪本 三国志夜話』をまとめた書籍(1万円)の廉価版。

※関連記事 安野光雅/著『繪本・三國志』(2008年4月16日)

・朝日新聞出版 最新刊行物:書籍:新編 繪本 三國志
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=11305

上記ページから下記へ内容紹介文を引用。
━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 吉川英治からマンガ、ゲームソフトまで、日本人の誰もが知る武勇と智略の歴史物語「三国志」。安野光雅画伯が4年をかけて中国各地1万キロを旅して描きあげた壮大な83点の歴史絵巻が、お求めやすい価格の新版で登場。1800年の時を超えて英雄、豪傑、そして戦火の下の女たちや市井の民の姿が、自在な画法、豊かな色彩でよみがえる。
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

これへのコメントは前述の繰り返しになるが、こちらの内容紹介文はさらに踏み込まれていて、「吉川英治から」と陳寿を完全に斬り捨てた不遜な文になっている。もっと言えば、吉川英治が参考にしたと言われている(下記参照記事の一番目の論文の注1参照)羅貫中/作・久保天随/訳『演義三国志』(小説)、湖南文山/訳『通俗三国志』(小説)を無視している。そのため、当然、『三国志』が歴史書という認識は端からなく、「歴史物語」と断言されており、こちらも現在日本の誤認の一事例として記録に値する。

※関連記事 メモ:KURA(金沢大学学術情報リポジトリ)

※追記 真『三国志』(2013年9月27日)
http://cte.main.jp/newsch/article.php/1622