ザ!鉄腕!DASH!!(NTV2010年3月7日放送分)

 溜まったビデオを見ていると、日本テレビ系列の『ザ!鉄腕!DASH!!』2010年3月7日19:00放送分で三国志ネタがあったことに気付く。

『DASH WEB』(ザ!鉄腕!DASH!!)
http://www.ntv.co.jp/dash/

※関連記事 ザ!鉄腕!DASH!!(NTV2008年11月2日放送分)

 上記公式サイトにも詳しい説明が書かれているんだけど、「謎の道具の正体を突き止めろ!!」というコーナーで三国志関連が出てくる。そのコーナーでは、ある道具を出され、制限時間内に町中の人を頼りにその用途を当てるというクイズ形式の企画だ。それら問題のうちの一つに指南車が出てきた。クイズなのでもちろん指南車であることは名前すら伏せられている。指南車は車の上に方角を指す人形が乗っていて、車をどう動かしても指している方角が変わらないという道具となっている。私は、昔、教科書で磁石を使わなくても機械的に一定の方角を示しえる例として指南車が出ていたことを覚えていたので、それが指南車だと一目で判った。
 結局、番組では答えが出る前にタイムアップ。答えの解説で、指南車が「約1800年前中国の魏の時代に使われていた」ことがあかされていた。その件は上記公式サイトにも書かれており、下記へ引用する。

━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
正解を確認してみると、この道具の正体は、約1800年前中国の魏の時代に使われていた「指南車」と呼ばれる昔のカーナビだった!
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 その時代の「魏」といえば三国魏なわけで、『三国志』で指南車を見かけた記憶がないため、手元の電子文献で検索すると、確かに、『三国志』巻二十九魏書方技伝の注に引く『傅子』(実際は「傅玄序之曰」)に「指南車」の文字が見える。
 なぜ、番組で「約1800年前」で「魏」限定か、ここらへんに理由がありそうだけど、もっと遡れないか、手元の電子文献で検索すると、『太平御覧』巻七百七十五車部四に「指南車」の項目を見かけ、そこにいろんな文献から「指南車」の記述が引用されており、大体、古いものから順となっている。その初めは崔豹『古今注』の「指南車、起於黄帝。帝與蚩尤戰涿漉之野、蚩尤作大霧、士皆迷路、故作指南車。」が引かれており、つまり、少なくとも崔豹の生きた西晋の時代では、指南車は太古の黄帝の時代からのものと思われていたわけだ。
 ではなぜ番組では三国魏に特定したのかは、やはり有名な『三国志』の注に書かれていることと、好意的に捉えれば、事象と記録の時期が比較的、近いためなのかな?
 『太平御覧』にも前述の『三国志』注と同じ記事が下記のように別文献から引かれている。

『魏書』曰:馬先生與高堂隆・秦郎爭、言及指南車。二子謂古典無記、言之虚也。先生曰:「古有之。」明帝乃召先生作之、指南車成也。

 つまり、『魏書』によると馬先生(馬鈞)と高堂隆&秦郎が指南車について言い争い、後者二名が古典に記述が無く偽りだとしたが、馬鈞は古代にあったとし、そのため明帝(曹叡)により召され、馬鈞が指南車を作ってみせたという。
 しかし、裏を返せば指南車は三国魏では「使われていた」程、一般的ではないということだから、番組の言っていることは誤っていることになるね。

 あと、番組では下記に引用するような字幕が出ていた。

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差動歯車装置によって
人形の向きを補正するため 常に南を指差す
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 馬鈞の指南車が地磁気に頼るものかどうか不明なんだよね。

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南を指すのは 君主が南を向くと
国が治まるという中国の思想から
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 例えば、『礼記』礼器の「是故聖人南面而立.而天下大治.」とか。しかし南面と指南って関係するのかな。

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古代中国の戦の中 隊列の先頭で方位を示すのに使用
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 この字幕が出た画面には『三才図会』のような絵が出ていて、これ以降の図には出典が明記されているが、この図には出典が記されておらず。

※追記 『日本まんが』第弐巻で三国ネタ
http://cte.main.jp/newsch/article.php/1611