リンク:正史三国志入門(『書標 ほんのしるべ』2009年9月号)

 タレコミ情報が入ったので、記事にしてみようと思い、公式サイトを当たってみると、PDFとしてウェブで公開されていたというオチ。

 何かというと、ジュンク堂書店の雑誌『書標 ほんのしるべ』2009年9月号(第370号2009年9月5日発行)で「正史三国志入門」という特集があるという。

・ジュンク堂書店 JUNKUDO BOOK WEB
http://www.junkudo.co.jp/

・『書標 ほんのしるべ』2009年9月号
http://www.junkudo.co.jp/shohyo0909.pdf

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 表紙の中央にデンと『三国志』筑摩訳の文庫表紙(『三才圖會』曹操)があって、三国志ファンの目を引くし、左上には後漢の騎士俑があって、こちらもコアなファンの目を引く。

 それで編集後記でも触れられているんだけど、肝心の特集は8ページからある。やはり書店の雑誌とあって、書籍の紹介中心に文が組み立てられている。
紹介された本を以下に列挙する。

※文中の「三国志トランプ」は「三国演義 高級撲克」のことだろうね。

金文京/著『三国志演義の世界』
易中天/著『三国志 素顔の英雄たち』
吉川幸次郎/著『三国志実録』(筑摩書房『吉川幸次郎全集』第七巻所収)
高島俊男/著『三国志 きらめく群像』
魯迅/著『魯迅評論集』
堀敏一/著『曹操―三国志の真の主人公』
李殿元・李紹先/著・和田武司/訳『三国志考証学』
宮川尚志/著『諸葛孔明 「三国志」とその時代』
狩野直禎/著『諸葛孔明』
立間祥介/著『諸葛孔明 三国志の英雄たち』
『正史三国志』(『三国志』訳本)
坂口和澄/著『正史三國志群雄銘銘傳 増補版』
渡邉義浩/著『三国志研究入門』
盧弼/撰『三国志集解』


 さらに上記書籍の商品リンクを下記に列挙する…と『書標 ほんのしるべ』の意義から考えれば、冒頭で示した「ジュンク堂書店」のサイトから上記書籍を探す方が正当なんだけど。




 それでガイドとしてはとても面白い文だし、非常に参考になるな、と思っていたんだけど、ツッコミを入れたくなるところが二つばかりある。それぞれ大事が一つと小事が一つ。

 まず大事。
 「『正史三国志』」なんて表記は存在せず、それは結果的に陳寿の著作から『三国志』の名を奪う不遜な行為だ。確かに『三国志』は正史に類する史書だが、「『正史三国志』」では決してない。誤認を拡げる中継点になっている。せいぜい譲歩して「正史三国志」や「正史『三国志』」といったところだが、個人的にこれも気持ち悪い表記だ。

 次に小事。
 中文と漢文は違うため、『三国志集解』を読むのに中国語を習うのは遠回りのような…

※追記 現代中国語版 三国志演義(2011年10月25日)


 それでさらに話が明後日の方向にとんで、一般的な話に落とし込むわけだけど、どうか、購入すること自体、批評の一手段と捉え、消費の荒波を乗りこなして欲しい。
http://cte.main.jp/newsch/article.php/1397