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三国志とは
050116
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三国志とは

   『三国志』、それは歴史書の名前。正史類の一つ。
   名前にある「三国」はそのまま三つの国の意味で、「志」はこの場合、記録の意味1)。つまり三つの国の記録。だいたい三世紀の中国の歴史。陳寿(西暦233年〜297年)が編纂した2)
   三つの国とは、蜀漢のこと。
   それら三国より前の時代に後漢という王朝があった。後漢からいくつもの勢力が生まれ、それらが分裂、吸収、滅亡を繰り返した上で、そのうち大きな三つの勢力が残った。後漢が滅びるとそれら三つが魏、蜀漢、呉となる。やがて蜀漢、魏、呉が滅び、魏から生まれた勢力、が残ることになる。
   『三国志』にはそういった時代に生きた人々について人物ごとに書かれている。

   中国の歴史書であるため、元々、漢文のため、これを読もうとすると、

・中国語文化圏の書物を取り扱っている書店で探し購入する。
   →書店の一例、>>東方書店
※ちなみに『三国志』は旧字をつかって『三國志』とも書くので調べるときは注意が必要。例えばネットで検索する場合、両方の漢字で調べると広く引っかかりやすい。以下、同じ

・中国語文化圏の書物を取り扱っているネットショップで購入する。
   →ネットショップの例、>>書虫

・ネットを通じて読む
   →サイトの一例、>>「漢籍全文資料庫」(大東文化大学サーバー版)
 ここのサイト→「二十五史」→「三國志」とリンクをたどる。>>利用手引き

などの方法が考えられる。また日本語に訳されているものを読もうとすると、

・書店やネットショップで本を買う。図書館で本を借りる
   →本の一例、今鷹真/訳他『正史三国志』(筑摩書房刊、ちくま学芸文庫、ISBN4-480-08041-4)を含む全8巻

・ネットを通じて日本語訳を読む。
   →サイトの一例、>>漢籍完訳プロジェクトIMAGINE
 ここのサイト→「漢籍目録」とリンクをたどり三国志のところを見つける。

などがあげられる。

   ただ歴史書を読み慣れていない人や『三国志』がどういうものか把握していない人に、いきなり『三国志』を読んだり、その訳を読んだりすることをお勧めできない。私の知る限り、そういった人々の大半は『三国志』を理解し難く面白くないと感じたとのこと。歴史書なので、物語と違い、話の脈絡や面白さより記録性を優先されているからなのかな。第一、人物ごとに書かれているため、全体的に年代を追って読むことは難しくなってくる。
   …と『三国志』に少しでも興味を持った人をまるで門前払いしているかのようなことを書いているけど、どうかまだページをかえないで。これからまだまだ文は続く。というのも、この『三国志』自体は単なる歴史書だけど、これを題材とした作品群がいろんなメディア(解説本、小説本、絵画、漫画、ゲーム…)で展開されていて、いってみれば「三国志ジャンル」を形作っているから、これで説明を止めてしまうのは惜しい。というわけで、主旨を「三国志ジャンル」への初心者・入門者向けのガイドに換えて簡単な説明を続ける。


注釈と解説

   『三国志』に書かれた時期・地域・人物などの事柄についてもっと知りたい学びたいと思う人はいつの世にもいるようだ。そのためかどうか、行動を起こし、三国志に注釈をつけた人がいる。それら注釈の中で最も有名なのが裴松之(西暦372年〜451年)の注3)。「裴注」なんて呼ばれたりしている。「裴注」が良すぎたのか、ほとんどの三国志の書物、ネット上のデータには、この「裴注」が付いてくる。そのため、「裴注」や「裴注」の日本語訳を読もうと思えば、先に書いた三国志のところをたどれば良い。むしろ「裴注」の記述を三国志の記述だと勘違いされることが多々あるぐらいで…
   「裴注」では三国志の出来事に対し、他の歴史書や書物から異なった出来事や別の出来事を引っ張ってきていたり、それらの信憑性について論じたりしているので、多角的に『三国志』の出来事を理解できるようになっている。また、現存していない書物からも引用しているので資料的な価値も相当に高い。
   また、注釈の決定版ともいうのが盧弼(西暦1876年〜1967年)が編纂した「三国志集解4)。『三国志』だけじゃなく「三国志裴注」にも注釈を加えている。残念ながら、完全な日本語訳はまだない(2005年1月16日)

   …とこれだけ書いておきながらこれらも「三国志ジャンル」の初心者・入門者がいきなり読むのはおすすめできない。当たり前だけど、『三国志』が主で注釈が従なので、読む進めるには『三国志』を読むのが中心となるから。
   それでせっかちに話をとばし、じゃ、初心者・入門者向けには何がいいかというと、三国志に関する解説の類。

・解説本を読むとか。書店やネットショップで購入したり図書館で借りたり。
   →解説本の一例、渡邉義浩/著『図解雑学 三国志』(ナツメ社出版、ISBN4-8163-2926-9)

・ネットの解説を読むとか
   →サイトの一例。サイト「>>呉書見聞」のコンテンツ「呉書見聞」
   ※但し、タイトル通り呉の記述中心。

・自サイトの解説。
   →コンテンツ「>>孫氏からみた三国志」。
   ※但し、タイトル通り孫氏中心。しかもそれほど書いてないので、時代的に狭い範囲。

   『三国志』そのものより随分、読みやすいと思うけど、実はこれも取っつきにくいという初心者・入門者が大勢いるのも確か。というわけでさらに文は続く。


そして三国志小説

   三国志に書かれた時期・地域・人物などについて、信憑性はともかく、三国志が編纂された晋の時代には不思議で怪しげな出来事も記されていた。例えば、晋の干宝が編纂した『捜神記5)。ちなみにこの書は「三国志裴注」で引用されている。

・ちなみに捜神記は本文・書き下し文・通釈・語釈の体裁で出版されている。
   →先坊幸子森野繁夫/編『干寶『捜神記』』(白帝社、ISBN4-89174-693-9)

・漢文ならネットにある。
   →サイトの一例(但し、Big5のフォントが必要)、>>Project Gutenberg
   ※たどり方(2005年3月25日現在)>>Project Gutenberg→Search→Chinese→Sou Shen Ji

   これはホラー大好きでもないかぎり、初心者・入門者にはおすすめしない。
   そういった出来事は上のように書物に残されたり、民間に伝わっていたりし、やがて「説三分」などの講談の題材に使われるようになる。もうこのころにはおそらく創作性の強いものになっていたのかな。
   ※ここらへんの流れはもうちょい加筆するかも。今のところ、この文に裏付けないし。

   少し時代が下ると三国志を題材とした、今でいう歴史小説が刊行される。元の至治年間(1321〜1323年)に発行された『新刊全相平話三国志』(『三国志平話』ともいう)。
   物語として主眼をおいているため時間に沿って書かれているため前述した歴史書や解説書の類より読みやすいが、「前時代からの生まれ変わり」の要素など創作性が後に紹介するものより強いため、あまりおすすめできない。
   『新刊全相平話三国志』の特徴はページの一部に文以外に挿し絵が組み込まれていること。

・その様子はネットを通じ、見ることができる。
   →>>関西大学文学部二階堂研究室 電気漢文箱
※ちなみに『新刊全相平話三国志』は旧字をつかって『新刊全相平話三國志』とも書くので調べるときは注意が必要。『三国志平話』も同様。例えばネットで検索する場合、両方の漢字で調べると広く引っかかりやすい。以下、同じ

となる。日本語訳は出版されている。

・書店やネットショップで本を買う。図書館で本を借りる
   →二階堂善弘中川諭/訳注『三国志平話』(光栄、ISBN 4-87719-678-1)

・ネットを通じて訳を見る(一部)。
   →サイトの一例、箸休め中国史
   ※「ANOTHER SANGOKUSHI」というところにその訳がある

というのがある。ちなみに読むときはその記述に創作も混じっていることを念頭に置くことをお忘れなく。

   そういったものを題材にして、集大成的なものになったのが『三国演義』(三国志通俗演義)。今でいう歴史小説の類。羅貫中が編纂したといわれている6)
   人物別の『三国志』にしろ、その注にしろ、全体的を通して記述に連続性はないんだけど、これは時代順に構成されており、そのためか、物語として読みやすくなっている。というわけで三国志ジャンル初心者・入門者にもおすすめ度合いが少し出てくる。

   読む方法は三国志のときとほぼ同じで、

・中国語文化圏の書物を取り扱っている書店で探し購入する。
   →書店の一例、>>東方書店
※ちなみに『三国演義』は旧字をつかって『三國演義』とも書くので調べるときは注意が必要。例えばネットで検索する場合、両方の漢字で調べると広く引っかかりやすい。以下、同じ

・中国語文化圏の書物を取り扱っているネットショップで購入する。
   →ネットショップの例、>>書虫

・ネットを通じて読む
   →サイトの一例、>>中央研究院
   ※たどり方(2005年1月16日現在)>>中央研究院→中文→公共服務/研究資源→漢籍電子文獻→瀚典全文檢索系統 1.3 版→小説戲曲→三國演義

となる。日本語訳もあって、

・書店やネットショップで本を買う。図書館で本を借りる
   →本の一例、立間祥介/訳『三国志演義   1』(徳間書店、徳間文庫、ISBN 4-19-597513-1)を含む全8巻

・ネットを通じて訳を見る。
   →サイトの一例、三国志Wiki
   ※始まって三ヶ月なのでそれほど訳はない(2005年1月16日現在)

というのがある。ちなみに読むときは前述と同じくその記述に創作も混じっていることを念頭に置くことをお忘れなく。
   『三国演義』は成立したのが古いので、まだまだ初心者・入門者におすすめするのには厳しい。そこで登場するのが日本で最もポピュラーで、『三国志』を題材とした小説(正確には『三国演義』主な題材なんだろうけど)、吉川英治(西暦1892年〜1962年)の『三国志』7)。書かれたのが西暦1939年とまだ古いけど、元からして日本語だし、『三国演義』より随分と読みやすくなっていると思う。

   ちなみに他の三国志関連の書籍のタイトルにも言えることだけど、『三国志』という歴史書と同タイトルなので、探すときや読むときは注意が必要。内容に共通する部分や似た部分はあっても、『三国志』の日本語訳本ということではなく、あくまでも別物。そういった同タイトルの三国志関連本はタイトルに作者名をつけて区別することをおすすめする。例えば吉川英治/著『三国志』であれば、「吉川三国志」といった感じで。

・書店やネットショップで本を買う。図書館で本を借りる。いろんな出版形態がある。
   →日本の三国志小説の一例、吉川英治/著『三国志   1』(講談社、講談社文庫、ISBN4-06-131681-8)を含め全8巻
   ※歴史書と同名で紛らわしいので以下、本文中ではなるべく「吉川三国志」とする

   これも三国演義と同様、読むときは創作も含まれることを覚えておくと精神衛生上良い。以下にあげる三国志小説も同様。
   まだ文体が古く感じるって方はいるとおもうんで、最近の作家のものもあげとく。
   →最近の三国志小説の一例、北方謙三/著『三国志   1の巻』(角川春樹事務所、ISBN4-89456-049-6)を含む全13巻8)

   ※歴史書と同名で紛らわしいので以下、本文中ではなるべく「北方三国志」とする

   それと三国志に書かれた時代より前の時代を書いた歴史書に後漢書というのがあるんだけど、その後漢書と三国志を題材にした三国志小説もある。まだ完結してないが(2005年1月16日現在)。

   →最近の三国志小説の一例、宮城谷昌光/著『三国志   第1巻』(文藝春秋、ISBN4-16-359750-6)を含む全3巻、未完9)
   ※歴史書と同名で紛らわしいので以下、本文中ではなるべく「宮城谷三国志」とする

   またティーンズ向けの小説分野でも三国志小説がある。

   →ティーンズ向けの三国志小説の一例、朝香祥/著『旋風(かぜ)は江を駆ける(上)』(集英社、コバルト文庫、ISBN4-08-614289-9)を含む11冊ほど10)
   ※それぞれタイトルが違うため総じて「朝香三国志」、「かぜ江シリーズ」などと呼ばれている。

   またネット上でも三国志小説が発表されている。やはりネットの自由さが反映されているのか、書き手がピンポイントに書きたいところを書いているといった観がある。そのため、あまり初心者・入門者にはおすすめできるものはない。とはいっても方法は書いておく。良い小説が出てくる、あるいはもうあるかもしれないので。

・ネット上で小説を検索するサイトへいって、三国志ものを探すとか
   →歴史小説サイト検索の一例、サイト「>>歴史小説検索

・一応、自サイトの三国志小説もリンクはっておく。孫堅という三国志の人物中心の小説。
   →コンテンツ「>>孫氏三代

   基本的には以上の文献やらサイトのコンテンツやらを辿れば良いと思う。だけど、せっかく、こうしてネットに接続しているのだから、読むだけの一方向の行動だけじゃなく、掲示板などネットのコミュニティー(交流の場)に参加するなど、是非、双方向のやりとりもしてほしい。

・三国志関連の掲示板(別名、BBS)に書き込んで話題を振ってみる。あるいはわからないことを質問してみる。
   →三国志系掲示板の一例、サイト「>>三国志ファンのためのサポート掲示板

・三国志関連のチャット(リアルタイムにやりとりする)に参加してみる。
   →三国志系チャットの一例、サイト「>>三国志討論会


   今回は文字関連の情報を中心にしたけど、次はそれ以外のところに触れていく。


>>続き   掲載日未定
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1)   この場合の「志」の意味。『字通CD-ROM版』の「志」の項目では「5.記録する、記録。」となっている。
2)   陳寿のこと。彼のことは晋書に詳しい。陳寿について一つの項目(「伝」という)がある。つまり、晉書卷八十二列傳第五十二陳壽のところ。ちなみに「晉」は「晋」の旧字体、「傳」は「伝」の旧字体、「壽」は「寿」の旧字体。以降、引用元の関係上、本文でも注釈でも旧字体が混ざることがある。まず冒頭に「陳壽字承祚、巴西安漢人也。」と書いてあって、姓が「陳」、名が「壽」、字(日本語で「あざな」と読む)が「承祚」ということがわかり、出身地は巴西の安漢というところとのこと。生年没年は終わりの方の「元康七年、病卒、時年六十五。」から求めた。ちなみに当時の年の数え方は数え年一例、外部リンク)。元康七年は西暦でいうところの297年。また「故治書侍御史陳壽作三國志、」と「三国志」の作者であることが書かれている。
3)   裴松之のこと。彼のことは宋書に詳しい。宋書卷六十四列傳第二十四裴松之のところ。それによると、冒頭に「裴松之字世期、河東聞喜人也。」となっていて、「裴」が姓、「松之」が名、「世期」が字とのこと。出身は河東の聞喜。終わりの方に「(元嘉)二十八年卒、時年八十。」とあり、そこから生年没年を割り出す。
4)   ここらへんの情報源はネットのみで、それ以外は特に調べていない。なにか良い史料ないかね。
5)   干宝のこと。晋書に伝がたてられている。晉書卷八十二列傳第五十二干寶のところ。「干寶字令升、新蔡人也。」。字(あざな)は令升とのことで、新蔡出身。「寶以此遂撰集古今神祇靈異人物變化、名為搜神記、凡三十卷。」
6)   羅貫中のこと。どこの史書に載っているかわからなかったんで、とりあえず『字通CD-ROM版』の付録によると、姓は「羅」で名が「本」で字(あざな)が「貫中」とのこと。また生没が西暦約1330年〜1400年とのこと。
7)   吉川英治のこと。吉川英治記念館があるので、そちらを参照のこと。本文中の生没や作品年数もここからとっている。下記に記念館へのリンク、はっておく。
8)   北方謙三のこと。ネットで公式サイトや公認サイトがぱっと調べた感じではなかった
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9)   宮城谷昌光のこと。ネットで公式サイトや公認サイトがぱっと調べた感じではなかったので、ファンサイトを以下にあげとく。
10)   朝香祥のこと。公式サイトは期間限定(2001年6月末頃まで)で昔あった。「朝香祥公式サイト TEA BREAK」(http://wwww.kt.sakura.ne.jp/~asakaweb/index.htm)。今はないみたい。なのでニュースが早い個人サイトをあげとく。
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