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メモ:2015年、2つの研究テーマ


  • 2015年7月10日(金) 22:12 JST
  • 投稿者:
    清岡美津夫
  • 閲覧数
    4,255
研究 ※前の三国関連の記事 歴史酒場 銅雀台(2015年6月1日-2016年5月15日)

 日本マンガ学会大会には下記関連記事にあるように第13回と第14回と連年で研究報告をしたんだけど、今回は要旨〆切(2015年4月頭)と別件の論文〆切(2015年3月末)が重なったこともあって特に何の用意もしてなかった。

※関連記事
 ノート:横山光輝『三国志』に見られる連環画の再構築(2013年7月6日)
 メモ:「三国志演義」を翻案した少年マンガの1980年代までの変遷(2014年6月28日)

 まぁ、昨年は下記関連記事にあるようにその論文の布石的な研究報告もあって大忙しだったので、その反動が今年に出たのかもしれない。

※関連記事 三国志学会 第九回大会(2014年9月6日13日土曜日)

 それでも2015年3月に論文を書いていると、次のテーマがふつふつと沸いてきていて、とりあえずそれまで慣れ親しんだ『月刊コミックトム』や『別冊コミックトム』に見られる読者投稿を通じた三国受容にしようと目論んでいた。

※関連記事 メモ:はじめての京劇V~三国志「古城会」(2015年4月18日)

 そんな中で刺激を受けたのは下記関連記事で触れたシンポジウムだろう。個人的には「三国演義連環画」と横山光輝「三国志」との関係の研究を一段落させたものの(※今回、日本マンガ学会のルールに合わせ作品を示すのは普通の括弧を用いる)、連環画の描き手向けの入門書である顧炳『怎様画連環画』(上海人民美術出版社1958年)には連環画側からのアプローチの余地が大いに残されていそうだ。

※関連記事 メモ:知られざる中国〈連環画 (れんかんが) 〉 ~これも「マンガ」?~ (2015年5月24日30日)

 その後、冒頭でリンクした国立国会図書館での調査を経て、6月27日土曜日28日日曜日に広島で開催の「日本マンガ学会第15回大会」に足を運ぶ。前述したように今回は研究報告がないため、聴くことに集中できそうに思えた。折角の広島なので、赤いシャツを着ていこうとACミランの2014/15シーズンのレプリカ・シャート(92ステファン・エル・シャーラウィ)を着ていく、黒も縦に混じるけどね!

・日本マンガ学会第15回大会
http://www.jsscc.net/convention/15

・公益財団法人 広島市文化財団 アステールプラザ
http://h-culture.jp/

 初日の研究報告は三国や自分の研究にあまり関係なかったので、詳しいメモは別の機会に譲るんだけど、少しだけ記してみる(と書き始めたら結構な文量になってしまったが)。
 その日は経費節約のため、在来線で行き、予定通りの市バスに乗ったんだけど、信号の多い広島の市街に見事ひっかかり、開始5分遅れぐらいで会場に到着したが、幸い、最初の研究報告に間に合うことになった。
 会場が三つもあり、聴きたかった第1会場のトジラカーン・マシマさんの「ジュニア小説における「性」とマンガにおける「性」 ―「性」の描写からジュニア小説と女性向けマンガの歴史的な関係性を考える」と第2会場の足立加勇さんの「キャラクターの作成技術と読者の願望―キャラクターの弁別方法から考えるマンガの顔の描き方」とのご発表が同時間になっていて、結局、後者を選択した。その前に、三つの会場を回ってレジュメを集めていた。
 第2会場に入るも壁際に設置されたイスも含め満席で立ち見が出ていた。前者の会場に行こうとも思ったら、そのまま入り口付近で立ち見することにする。

※関連記事 横山光輝三国志(1991年10月18日-1992年9月25日)

 上記関連記事では三国と離れていたので記さなかったが、そこで触れたカトゥーン部会にて、足立加勇さんが最近のキャラクターの描き分けは顔の輪郭や目鼻立ちを変えずむしろ髪型や目の色だけで行うことが推奨されているとおっしゃっていた。そのことは気になっていたのだけど、まさにそれがそのテーマとなって研究報告されているとは思わなかった。
 終始理論立てしようという意図が見られ、それらの一つに、横軸に「作家の固有性を示す/示さない」をとり、縦軸に「キャラクターの固有性を示す/示さない」をとり、四象限を示し、「作家の固有性を示さない」&「キャラクターの固有性を示す」と「作家の固有性を示す」&「キャラクターの固有性を示さない」の二極化してあるとおっしゃり、レジュメによると「顔の形は作家の恣意だけで決めることはできない/美少女であること→愛好者の美意識によって定型化される」とのことでそこから二極にそって論を組み立てていく。つまりは先のカトゥーン部会での「キャラクターの描き分け」というより研究報告では「美少女の描き分け」という表現だった。結果的に一人の作者が美少女を描くには昨今では一つのパターンにしかなりえず、そのため髪型・髪の色、目の色、服装で区別するような流れのようだ。それらの流れを聴いていて、「美少女のテンプレ」という言葉を連想したら、次の瞬間にはスクリーンに、実際に顔の輪郭を描くテンプレート(定規)が出てきたのには驚いた。その他、人形の素体を変えないように髪型や服装だけを変えるアプリケーション(ソフトウェア)の例も出てきて、実証的というか説得力があった。
 強引に三国や自分の研究とつなげると、下記関連記事からたどれる掲示板で引用したように、かつて番組「BSマンガ夜話」の「蒼天航路」の回にて横山「三国志」についていしかわじゅんさん曰く「横山光輝の漫画って、一種の職人の書いた巧い記号だから、あれを豊かな物語として読むと、こちら側にある程度インテリジェンスが要る」とのことだった。つまりは記号化という点でなにやら底流が共通するのかもしれない。

※関連記事 『BSマンガ夜話』で『蒼天航路』(2008年9月17日)

 それで立ち見で唯一得したことは発表者の足立さんとオーディエンスとしていらっしゃった、マンガ表現論の著名人…というより『テヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ』の著者である伊藤剛先生の両をご発表中、見れたことだろうか。

・テヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ|書籍出版|NTT出版
http://www.nttpub.co.jp/search/books/detail/100001602

※関連記事 メモ:第6章 武侠漫画の映画的手法表現の成立をめぐって

 この後、他の会場やそれ以降の同会場ではそれほどの数のオーディエンスが居たことはなく、つまりは会場が少し小さいといっても立ち見が大勢でるほど、発表前から人気だったし、発表後の質疑応答でも質問者を司会が選び伊藤剛先生の質問の番が最後まで回ってこなかったほど発表後も人気だった。だけど、夜の懇親会で聞くに、報告者当人はなぜかそれに気付かず、次の発表者に懇親会にて発表についての話をするまでその反響に気づかなかったそうな。発表から懇親会まで「やっちゃった」と思い悩んでいたそうで。
 同会場の次は具本媛さんの「外国人向けのマンガ教育におけるマンガの「約束事」―留学生、Jack Rogers の作品「季節」を手がかりに」。ここでようやく座ることができた。ちなみに第2会場のその2番目の研究報告から小野耕世会長がいらっしゃった…と偶然、清岡の隣だから気づいたのだけど。さらにその視座からだと、前後で机1列分後、左右で4人分左に『ミッキーはなぜ口笛を吹くのか』の細馬宏通先生→小野耕世会長というマッケイつながりフォーメーションだったことに気づいた。

・ミッキーはなぜ口笛を吹くのか―アニメーションの表現史 - 新潮社
http://www.shinchosha.co.jp/book/603735/

※新規関連記事 リンク:三国志大喜利バトル(第三回三国志祭内2009年8月23日)

 懇親会にて細馬先生からお伺いするに、当然、小野会長は細馬先生のご著作をお読みになられていて、ご感想をFAXで送って下さったとのこと。でも面と向かって話すのはその懇親会で初めてとのことで、その歴史的(?)瞬間を見ていた。遠慮して会話の聞こえる範囲から退いたけど。
 話を研究報告のときに戻し、歴史マンガを対象としているということで、14時45分からの第3会場の傅文婷さんの「「新選組」マンガに関する考察」を聴きにいく。多くの新撰組を扱ったマンガ作品が出ていて、群衆を描くのに勢力別に分けられたページ内構成などマンガ表現として考察があったにはあったが、素人目に見て考察や研究には今一歩踏み出せず「紹介」に留まっているように思えた。ともかく研究材が消化されていくこれから先の展開に期待したいと思っていた。ところが、その後、同会場で研究報告される、手塚治虫マンガ研究の森下達さんと夜の座談会で話す機会があったんだけど、森下さんが傅さんと話すに、その先の研究的興味としてはいわゆる司馬史観前後の日本人の史観の変化だそうな。清岡は座談会で思わず「マンガから離れてしまうやん(日本マンガ学会で聴けない)」とツッコミを口走ってた。
 その次が第2会場に戻って、朴柘盈さんの「マンガのリズムにおいての時間-マンガのリズムとマンガの言葉」を聴いていた。確か京都精華大学の中間報告で以前、聴いたご報告の続きだな、と思いつつ。質疑応答が終わってから同じ大学の方(あえて名前を伏せるが)がフォローとして「(中間報告より)今回、後退したよ」とおっしゃっていたのが印象的だった。質疑応答で質問者が挙げていた研究技法はすでに中間報告の時点でやっていたらしいが、言及せずで、そこらへん緊張されていたのかな、と。

 その後、第3会場に戻り、二回前の研究報告で同会場だった、森下達さんの「「地底国の怪人」(1948 年)にみるメロドラマの超克 ―戦後日本マンガにおける「物語」のありようを考える」。手塚先生の赤本単行本のマンガ作品と、その元とした小説作品との比較で、そこから悲劇やメロドラマ、そして手塚作品を示すキーワードに「メタシアター」などストーリー面の抽出・考察をされていた。そこらへん、「マンガ作品における取材」についての研究という面では自分の研究の参考になるところ。

※関連記事 ノート:横山光輝『三国志』に見られる連環画の再構築(2013年7月6日)

 そのまま同会場で、可児洋介さんの「屈折するマンガ言説―斎藤次郎、その可能性の中心」を聴く。今年に発行された『マンガ研究』vol.21にこの方の論文が載っていて、それが面白くこの方のテーマである、言ってみれば「マンガ評論史」に興味を持ったのだけど、今回の報告の学術的興味深さもさることながらエンタメとしても面白かった。
 今回、自らの報告なしで久々に聴講オンリーだったんだけど、やはり三会場で忙しく梯子しながらだとあっという間に感じられ、そして良い悪いは別として研究報告の質の差を感じてしまっていた。だけど、終わりよければすべて良し的に最後にアタリの部類の2報告を立て続けに聴けてよかった。
 …と第1会場は未だ終了しておらず、ラウンドテーブル「マンガ・アニメと〈戦い〉―社会・文化とのインタフェースを考える」が行われていて、少しだけ聴くことができた。でももうコメントとディスカッションの時間で、報告自体は少しも聴けずに惜しいことしたな、と……後悔はしてない!

 その次がお座敷の会場に移っての総会。17時より。そして18時30分より一階のレストランでの懇親会なんだけど、始まるまで時間がありそうだったので…というより懇親会と座談会(合宿)に続けて参加するとチェックインの時間に間に合わないので、片道10分のところのホテルでチェックインを済ませにいく。どうも外国人でも泊まれるように想定されていて、タオルなどの備品を有料貸し出しにしたり、大きな部屋をパーティションで区切って貸し出したり、安い値段設定にしてある。その大部屋のカードキーはそのまま持ち帰って、次回利用時の5%割チケットに使えるようで、なんというか変わったホテルだった。

・広島市中区のホテル・ユースホステル|レイノイン広島平和公園
http://reinoinn.com/

 それで懇親会会場に戻ったら、すでに会場はぎゅうぎゅう詰めで開始をまっている状況だった。お座敷の荷物置き場に荷物をおいて、知り合いが特に見えない中でスタンバイする。まだ始まるまで時間がありそうだったので、前述したように細馬先生にお話ししていただいていた。地元の協力団体の方々の音頭とともに日本酒が振舞われ、そしていろんな学会大会と同じくバイキングの立食パーティー形式だ。思えば行きの列車の中で事前にスーパーマーケットで購入した菓子パンを3個食べたきりでようやくご飯にありつけていた。
 長細い会場だったせいか、昨年の懇親会の会場より狭い感じはしたが、前述したように結構、話せていてアウェイ感はそれほどなかった。今回も吉田玲子さんが話して下さったし。昨年の三国志祭での英傑群像ナイトで岡谷さんにお渡しした三国志学会第九回京都大会のレジュメの話が吉田さんのところまでに来ていたのには驚いたが。あと編集から見るマンガ文化についての研究の重要性もおっしゃられていた。

※関連記事
 第八回三国志祭(2014年10月12日13日)
 三国志学会 第九回大会(2014年9月6日13日土曜日)

 その流れで会場の一番奥に居たのだけど、そこのテーブル席にヤマダトモコ先生がお一人でお食事中だった。なんでも食べる機会がなかったとのことで。そこに突撃して語ってしまっていたけど、ヤマダ先生は司会もあって第1会場に張り付かれていらっしゃったそうで。そのため清岡が聴いてきた研究報告を語る時間になっていた。午後だけとはいえやはり会場が三室もあって、いろんな研究報告があるので、選んで足を運ぶと、やはり当たり外れを感じてしまう、と清岡から申し上げていた。もちろんそれはいろんな意味で仕様がないと申し添えていたのだけどね。
 21時は合宿座談会で、会場は「座談会」の名のとおり畳敷きのところだった(※「座」は本来ひざを折る今で言う「正座」を意味するので)。日本マンガ学会大会は京都・東京とそれ以外の地方とで1年ごとに交互で行うらしく、いつから導入されたかよくわからないんだけど、地方大会ではこの合宿が恒例になりつつあるようだ。前回の合宿で清岡は自分の研究報告に力を使いは立ち、部屋の隅で何もせずに過ごさざるをえなかったのだけど、今回はちゃんと体力を残しておいた。

※関連記事 ノート:横山光輝『三国志』に見られる連環画の再構築(2013年7月6日)

 てっきり二年前と同様、結構な人数のカトゥーン部会の集まりがあるのかと思っていて、四ヶ月前にその部会に参加したので参加しやすいと思い、どういった自己紹介でいこうとか思い描いていた。だけど、部会の主要な方々がいらっしゃらなかったようで待てども島ができるほどでもなく、足立さんと「マンガに見られる世代間交流のあり方についての考察 ―「クッキングパパ」の高齢者を対象とした料理教室を事例として」のご報告をされていた中川祐志さん、さらに合宿から一般参加の方が加わり四人で話していた。主に足立さんと中川さんの研究話で、あとで表先生から順に何の集まりか尋ねられたときは、先に出ていた「少女マンガ誌部会っぽい」に倣い「カトゥーン部会っぽい」と答えていた。合宿座談会の会費は1000円でスタッフの方が買いだしにいっていて、飲み物やおつまみが用意されていたのだけど、さらに広島らしくってことで、さすがに人数分はないにせよ、お好み焼きもテイクアウトで買ってきてくださっていて、各島に配られていた。
 そのうち、足立さんをはじめ、他の島に足を運ぶようになり、清岡は中央のところに行く。そこは京都精華大学中心の日本マンガ学会大会スタッフの島だったようで、話が合わないかな、と思っていた矢先、声を掛けられる。誰?と思っていてよく見ると、発表時、パリっとしていたのだけど、総会・懇親会を通じての経時変化のためか、(私見では)見た目がワイルドになっていた森下さんだった。上記関連記事にあるように、二年前、同会場で研究報告した同士で、その認識あわせでしばしお話した後、今回の大会についての話もしていた。そういった研究話で清岡からは前述のレジュメと、すでに懐かしさの漂う拙稿「現代日本における三国要素の変容と浸透──アクセス集計を事例に」の抜き刷りをお渡しする。そうすると、タイトルを見て「『三国要素』となっているのは何か意味が?」とご質問を下さる。さすが、するどい。

※関連記事 人物関心ランキング(2005-2009年)

 あとその島に明日の打ち合わせを終えた夏目房之介先生がいらっしゃっていた。そこの島の二人が、自分たちが着ているTシャツの絵が「ドラえもん のび太の宇宙小戦争」の2コマだったり、「火の鳥 未来篇」だったりと見せ語る姿を見るに、日本マンガ学会なんだな、とうれしくなってきた。あと、学会大会のマジョリティがスーツじゃないところも。

※関連記事 メモ:歴史漫画における少年漫画と少女漫画との違い

 22時30分に合宿座談会が終了となり、そのままホテルに戻るかな、と思っていたら、岩下朋世さんやヤマダ先生ら四名がお好み焼きを食べに行くということで、それについてった。

※関連記事 三國志物語(1940)、少年三国志(1955)、羽石光志/絵

しかし時間が時間だけに開いているお好み焼き屋が見つからず、それでも五名は何時で引き返さないとホテルに帰れなくなると念頭に置きながら、諦めず夜の道をひたすら歩いていた。そうすると「お好み村」と書かれた看板を発見。どうやらビルがまるごとどこもお好み焼き屋ということらしい。隣の建物が「お好み共和国」だったので、思わず「そのうちお好み帝国になってお好み村を支配下に置くに違いない」とか冗談を言っていたが、実は次の日に知ったのだけど、広島市内の観光地を巡るバス「ひろしま めいぷる~ぷ」が止まるほど、「お好み村」は著名な場所だったようで、お好み帝国ができてもぜんぜん併合されないんだと。

・元祖広島お好み焼「お好み村」ホームページ
http://www.okonomimura.jp/

・広島市内循環バス ひろしま めいぷる~ぷ|広島市内観光バス|中国ジェイアールバス株式会社
http://www.chugoku-jrbus.co.jp/teikan/meipurupu/

 その建物をエレベータであがったら、すぐに鉄板があって、我々を迎えてくれているようだった。特に区切りがないフロアで二店がならんでいるんだけど、アットホームな雰囲気から迷わずエレベータおりてすぐの建物へ。長い距離を歩きぬいて期待値が上がりまくっていたが見事に応える店員と店内の雰囲気、何よりお好み焼きの味! そして大学生っぽい三人組がやってきたが雰囲気にあったお客。図ったように真ん中の人が広島出身の芸人、アンガールズの山根さんに似ていた。
 清岡の隣に座られた方がNTT出版の方で、日ごろ、如何にNTT出版の書籍にお世話になっているか説明しようとも、お世話になりすぎてどれがNTT出版の書籍がわからず、最近読んだ本をテキトーに言ったら外す始末。前述の『ミッキーはなぜ口笛を吹くのか』とかね。 悔しいんで、今、つらつらと挙げていこう。

・ジェームズ・E・カッツ、マーク・オークス/編、立川敬二/監修、富田英典/監訳『絶え間なき交信の時代 ケータイ文化の誕生』(NTT出版2003年6月26日)
 →個人サイトでの雑記

・伊藤剛/著『テヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ』(NTT出版、2005年9月)
 →個人サイトでの雑記

・小田切博/著『戦争はいかに「マンガ」を変えるか──アメリカンコミックスの変貌』(NTT出版2007年3月20日)
 →個人サイトでの雑記

・濱野智史/著『アーキテクチャの生態系 情報環境はいかに設計されてきたか』(NTT出版、2008年10月)
 →個人サイトでの雑記

・吉本たいまつ/著『おたくの起源』(NTT出版2009年2月17日発行)
 →個人サイトでの雑記

・暮沢剛巳/著『キャラクター文化入門』(NTT出版2010年12月2日)
 →未公開。「あれ?NTT出版に新書なんてあったっけ?って思うほどそれまでの単行本に比べて少な目の文量なんだけど、それは「入門」とあるように、広く浅くカヴァーするという意味で適切。でも取り上げる材料にするどいものがあって、まさか三章の前半まるまるを使って日本のヤンキー文化にふれるとは思わなかった。」

・伊藤昌亮『フラッシュモブズ 儀礼と運動の交わるところ』(NTT出版2011年2月25日発売)
 →※関連記事 まんがのソムリエ(2014年5月31日発行)

・須川亜紀子/著『少女と魔法──ガールヒーローはいかに受容されたのか』(NTT出版2013年4月30日)
 →個人サイトでの雑記

・岩下朋世/著『少女マンガの表現機構──ひらかれたマンガ表現史と「手塚治虫」』(NTT出版2013年7月18日発行)
 →個人サイトでの雑記

・イアン・コンドリー/著、島内哲朗/訳『アニメの魂 協働する創造の現場』(NTT出版2014年2月24日発売)

 そんな感じで満足して帰路に着き、徐々に別れていった。清岡のホテルは前述のとおりで、大部屋をパーティションで仕切ったところで、カプセルホテルあるある的な騒音を覚悟したが、静かでよかった。

 2015年6月28日日曜日。7時にはおきてたか? 次の土曜の三国志フェス軍議のため、市電で広島駅に行き、広島発東京経由京都着の一筆書き切符を買った後、同じく市電で紙屋町シャレオ(中心部にある地下街)にいき、スターバックス コーヒー紙屋町シャレオ店に入る。レシートを見ると、8:01:10。「女子力高い」とツッコミの余地を与えてしまうけど「ホワイトモカ、トールサイズ、マグカップ、ホットでホイップクリーム多目でキャラメルソースかけて」と、フィローネ ローストチキン レモンバターソースで税込みで939円。

・紙屋町シャレオ店 | スターバックス コーヒー ジャパン
http://www.starbucks.co.jp/store/search/detail.php?id=192

 前日の日本マンガ学会大会についてあれこれ書き残そうとしてダラダラしたら2時間経過し、二日目のシンポジウム開始まであと30分しかないのでこのターンは諦め、地上に出て、市電か迷ったが結局、市バスでとりあえず南下し、市役所前で降り、西に900m行く。
 ちなみ二日間通しての参加料は800円だ。10時30分開始のシンポジウム「「はだしのゲン」の多面性」の「第1部:戦後・ヒロシマ・マンガ」のオープニングは原爆投下を“歴史化”として風化させないという主旨で、観光地としての関が原や長篠の新聞記事を引き合いに出して、400年程度経ち“歴史化”すると戦死者供養や反戦の意味が消えたり薄れたり逆に戦争が観光資源として使われるという論法なんだけど、個人的には原爆で犠牲になった一般市民が無視される論法に思えていた。
 12時30分から14時まで昼休みなんだけど、その時間はポスター発表に当てられる。初日に展示していたが、特に見る暇がなくて、その日が初めて見ることになる。前述のとおり、清岡は昨晩、懇親会の後にお好み焼きを食べ、朝食はきっちりスタバでとったせいか、特におなかが空いておらず、会場前のコンビニでボールペンを買っただけで(なくしたと思い込んでいて、そのせいで第1部のメモはなし)、すぐにポスター発表会場に向かっていた。
 場所はシンポジウムのホールの前のエントランスで、特に発表用の場所じゃないが、人の出入り的には発表者にとって良かったのでは?と思えた。今回、自分の発表がないこともあって、ポスター発表に限ったことじゃないけど、予め要旨集を読んでいて、興味のある発表は後で取っておこうと思っていたが、そんなコンパクトにまとまった会場なので、すぐに一番興味のあるポスター前に行ってしまった。それは秦美香子先生の「日本マンガを受容した経験とその記憶 ―フィンランドの「銀牙―流れ星銀―」ファンに対する調査結果から」だ。全然、シチュエーションは違うけど、同じく異文化の受容を研究する身としては、データを扱う切り口のヒントみたいなのを貰いたかったという気持ちがあった。今回のポスター発表は4件で、シンポジウムのホールを出て、正面から右への壁際に展示されており、件の発表は一番右にあって、ちょうど内角に当たる。そのポスター前に行ったまでもすぐ前じゃなくて、混んでいたこともあって二列目に収まった。それじゃ他のポスターを見に行こうと思ったが、もう説明が始まっていたので、その場で大人しく聴いていた。
 隣のポスターは、伊藤剛先生らの「マンガの要素と用語の分析研究」で、そこに細馬宏通先生がいらっしゃって、盛り上がっている様が見て取れた。伊藤先生が「『内語』ってマンガ研究のみで使う用語なんですか?アニメ研究では何と?」という旨の質問に「『内言』?」と細馬先生、そんなやり取り。さらに、すがやみつる先生や夏目房之介先生がいらっしゃって、もちろんその他大勢のギャラリーで内容はわからないまでも、多分、マンガ表現について盛り上がっている様が視界の端でひしひしと伝わってきていて、かなり惹かれていた。
 話を眼前のポスターに戻し、やはり持ち時間早くに来たせいか、(たまたま顔なじみに向けた)初回の発表だそうで、まずどういう経緯で研究を始めてたかをおっしゃっていた。フィンランドで日本マンガについて尋ねるとなぜか、表題の「銀牙―流れ星銀―」が出てきたそうで。そのマンガ作品は『週刊少年ジャンプ』で1980年代に連載していて、野犬が主人公で共通の熊と戦うのがメイン・ストーリーだ。フィンランドでは主にビデオでのアニメ、初め英語版として受容されているのだけど、その理由に祖母から幼い頃、買ってもらったとか、ストーリーがフィンランドの神話に似ているだのいろいろあるものの、どれもピンとこない。マンガ作品の方の受容もおっしゃっていて、フィンランドで出版されている日本マンガの翻訳で販売1位だそうな。
 そういう話を人越しの二列目で聴いていたのだけど、話の輪に入ろうと機会を伺っていて、その作者は犬主役マンガを描くので有名だったので「同じ作者の別作品はフィンランドで売れているんですか?」という質問で、まるで2011/12シーズンのアントニオ・ノチェリーノのように(ごく一部でしか通じない例え)二列目から飛び出した。どうもフィンランドの人口自体、少ないので、市場規模が小さく、出版はされているものの、「銀牙」には及ばないそうで。ともかく以降、結果的に終了時刻いっぱいまで話の輪に入れてよかったんだけど、今から振り返るとまるで同人イベントの1ブースに張り付くイタい人みたいだったかもと加害者意識がわきでる。
 話を戻し、日本マンガの受容としては他の国もあるのだけど、どうしてフィンランドを選んだのか、という旨の質問を投げかけると、十分に受容されているフランスなどに比べ、フィンランドではファンダムができつつある段階でそういった貴重な黎明期、どういった日本マンガが受容されていきつつあるかを見出せることができればよいな、とのことだった。だけど、そう思ったのが2011年で、そこから思ったより受容は伸び悩みつつあり、今はフィンランド人のマンガ家(日本マンガスタイルとそうじゃないのと両方)を育てる方向にあるそうな。
 次に印象に残った話題がどういった意識でその作品が受容されているかってもの。というのも、アンケートで、舞台となる北海道の風景がフィンランドのそれと似ているというのがある一方、作中で日本語の文字が出てくるので日本の作品と気付いたというのがあるので、受容形態が議論の俎上に上がっていた。元からいらっしゃった、トジラカーン・マシマさんは韓国での受容の例を出し、韓国では日本の作品とは思わせないようにしていたと。

※関連リンク(清岡による雑記)
・オランダの攻撃爆発! (※個人サイトの2012年6月3日の雑記)
http://cte.main.jp/sunshi/2012/0601.html#03

・コモンズの書籍 (※個人サイトの2013年3月23日の雑記)
http://cte.main.jp/sunshi/2013/0301.html#23

 そういった流れに対し清岡は、フィンランドで元々日本のものが好きで件の作品を受容したって側面があるのか?と質問。そういうのはコアな層はやはりフランスなどのヨーロッパ諸国同様、『NARUTO -ナルト-』などに流れがちになるとの回答だった。ここで清岡は逆に自分の研究は日本における中国文化の受容ってことを明かし、それは完全に中国のものと明かされた上での受容だと。それで逆に中国のことと隠された事例があるか尋ねられ、「水滸伝」が「南総里見八犬伝」に翻案されたケースを挙げていたっけ。
 ここでまたしてもスルーパス的にマシマさん(要旨集を見ると「トジラカーン」さんが苗字のようだけどこちらの方が言いやすいのでこう表記)から別の視点が出されていた。フィンランドのケースは東アジアからヨーロッパへということでよく注目されているが、東アジアから東アジアへの受容が研究で取り上げられることは少ないとおっしゃりそれに興味があるとのことだった。それを受けて清岡は、藤巻尚子先生のご報告「結びつけられる三国志と太平記―近世初期の学問・思想の一齣として」を思い出しつつ、江戸時代に軍記ものがはやってそのバリエーションとして「三国志演義」の受容があったとかなり端折って説明していた。話しているうちに結局、「三国志演義」をローカライズしているのだなと気付いていた。元々日本にあった文脈を利用していった受容形態と。

※関連記事 ノート2:三国志学会 第五回大会

 その話題の前に森下達さんがいらっしゃっていて、ポスターにあるアンケート結果の、「銀牙」を日本の作品と知っていた、というのが50%を超える点を指摘されていた。思ったより多いと。この説明に例の、作中の看板の日本語、って説明に、でも日本語を知らないと日本の文字とわからないとおっしゃっていた。清岡からはこの作品だけじゃなく他の作品で日本文化の受容があったかどうか気になると申し上げる。そういった流れで、アンケートを答えた当時の年齢、視聴したときの年齢など突っ込んだ議論になっていって、それらの想定の一例としてマシマさんが説明にするに、10歳のときに「銀牙」のアニメを見て、15歳のときにそれが日本の作品と知って、20歳のときにアンケートに答えたのであれば、それでも「「銀牙」を日本の作品と知っていた」という答えになるとおっしゃっていたのが印象に残った。ともかくその50%以上の割合が気になると。そこからアンケートをとる人が日本人ってことも回答者に影響を与えているのでは?とも。さらにインタビューの話では質問も回答も英語で共に母国語ではない言語で話すので、充分にコミュニケーションを取れてない感があったそうで、逆にフィンランド人のインタビューワーのときもあって、そのときは明らかに英語の場合より多くの答えが返ってきていたそうで。こういった感じで、まさにポスター発表の理想的な形で様々な視点で議論されていた…いや自分がポスターセッションの発表者だった経験と比べての話だから当てにはならないのだけど。
 ここで清岡が質問。須川亜紀子/著『少女と魔法──ガールヒーローはいかに受容されたのか』(NTT出版2013年4月30日)を思い出していて、その思考がそのまま口にでていて、そういった先行研究で、インタビューに先立ち何か参考にしたのがあるか?と。ヨーロッパのファンダムについての研究を参考にしたそうで。

※関連リンク(清岡による雑記)
・「集団調和の抑圧」 (※個人サイトの2013年11月28日の雑記)
http://cte.main.jp/sunshi/2013/1101.html#28

 さらに研究の到達点を尋ねるのに、「理想的には?」という言葉を使う清岡。フィンランドの日本マンガのファンダム、他の国の日本マンガ第一のファンダム、それらをヨーロッパにおけるファンダムみたいな形で(類型的に)捉えられるような行動をとっているが、そうでない一派がフィンランドにいて熱心に活動しているものの、それは「銀牙」中心なもので、日本のマンガを多く知っているわけではないので、ライト層とみなされるそうだ。つまりは同じヨーロッパの文脈で捉えられるファンダムとそうでないファンダムなどがいろいろ存在する興味深い場だと。
 そういえば今、書いているときに思ったのだが、そういったファン層の違いというのを吉村和真先生がよくおっしゃっる「勤勉なマンガ読者/寡黙なマンガ読者」を引き合いに出せば意識共有ができたのかな、と。

※関連記事 『三国志のロマンス』(「越境する カワイイ!可愛い!Kawaii!」内)

 それで話を戻し、森下さんの質問がきっかけで、件の作品のアニメはフィンランドではビデオテープのみの受容で、地上波放送はされてないことが議論の俎上に乗せられる。そこで清岡はアメリカでのアニメ(日本の、って意味ね)の受容はケーブルTVが主要となるが、日本ではそうでもないといった、その国々のメディア環境があるが、フィンランドではどうなのか、という質問を投げる。そこからさらに議論が進んでいく。
 だけど受容という点で別の側面が気になって、二次創作はある?と質問をなげかける。そうすると、擬人化もあったりコスプレもあるぐらいだそうで。そこからマシマさんがそういった二次創作をする側の世代層の話題を提供する。フィンランドでも擬人化するのは若い人が多そうだ。二次創作舞台もあるそうで、そういう人たちは山に行って合宿し、なりきり遊びをする事例もあるそうで。マシマさんはヨーロッパでは中世の騎士の格好をしてそういったロケーションをすることがあるので、日本からの輸入ではなく、そういった文脈からメインできているのでは?、と推測されていた。日本のものを自分たちの文脈で楽しんでいると。そうやって話しているうちに清岡は、ファン研究とか文化社会学的な興味が出てきて、気付いたらその思いを口から外に出していた。そうなるとマンガ研究から離れそうという話の流れで、その関係で今回、オーラル発表じゃなくポスター発表にしたそうで。次回は是非、オーラル発表して下さい、質疑応答で援護射撃的に質問しますよ、という旨をおっしゃるマシマさん。今回のマシマさんの発表は前述したように、「ジュニア小説における「性」とマンガにおける「性」 ―「性」の描写からジュニア小説と女性向けマンガの歴史的な関係性を考える」とのことで、結構、マンガから離れる発表だったので、そういう実績からも、秦先生の日本マンガ学会大会でのオーラル発表を支持・応援されていた。
 それでやはり清岡から自分の研究に関するもので、ポスターではアンケートの集計結果以外にもフローチャートのように図示されたアンケート結果があって、それはKJ法(※それだと最終的には文章にまとめるので正確には「KJ法の途中の図示」)によるもので、そういったまとめ方について質問する。そういった質的研究で、他にもグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)も想定されていたそうだけど、ポスター発表だから専門用語を伴わない、より一般性の高いKJ法で表現されたとのことだった。清岡は発表時間の終わりの方で詳しく聞きなおしてバッチリメモをとった。
 すでに森下さんは別のポスターに移っていたのだけど、入れ替わるようにここで足立加勇さんがいらっしゃって議論に加わる形となる。当時、フィンランドではVHSのビデオテープが500円ぐらいで売っていたそうで。内容は具体的には吹き替えで特に登場人物の名前がフィンランド風に換えていたりしていないそうな。それがVHS販売じゃなくて地上波放送されていたら「キャプテン翼」のイタリアでの放送みたいにキャラクター名が換えられて放送されていたんだろう、と清岡。

・MANGA王国 ジパング/ウェブリブログ
http://world-manga.at.webry.info/

・これが欧州における日本サッカーの原点だ! ヨーロッパ版『キャプテン翼』大解説1!
http://world-manga.at.webry.info/201210/article_3.html

 ここで比較対象としてのマシマさんによるタイでの受容の話。タイはアニメでなくマンガから先にはいって、その人気からのアニメ放送という順番だそうな(※これを書いているときに思い出したのだけど、タイにおけるマンガ受容についてマシマさんは下記URLにあるように以前、京都国際マンガミュージアムで発表されていたな、と)

※関連リンク(清岡による雑記)
・海外マンガあれこれ (※個人サイトの2013年3月10日の雑記)
http://cte.main.jp/sunshi/2013/0301.html#10

 清岡からの質問で、どこらへんの要素が効いて受容されているか?と。やはりベタに深いストーリーというのがあって、他にも戦いやらリアリティというのもあるそうで。買い与える大人は内容を知らずパッケージに犬があるだけで購入しているのかもという話になっていた。ここでフィンランドでは犬の話は人気があるという話から、「銀牙」受容につながるような先行作品があるのでは?という話になっていた。すぐに出てきたのが「名犬ラッシー」。内容が全然違うが、それが大きく効いているかも?となっていた。それを喩えて「コレジャナイガンダム」という清岡。
 足立さんが議題提供するかのように、日本でフィンランドといえば、アニメ「牧場の少女カトリ」を連想するそうで、そこらへんの受容はどうか?という質問。それは「ニルスのふしぎな旅」も含めて北欧でよく見られているそうな。「銀牙」より前だそうで。さらに足立さんは、スイスでの「アルプスの少女ハイジ」受容を引き合いにだして、それは「Cool Japan」(※それ以前にマシマさんがキーワードに使っていた)の受容じゃなく、スイス製のアニメと思っていたスイス人が多いので、それとフィンランドでの「銀牙」受容とは別の流れとし、議論を促す。
 足立さんいわく、中国で「一休さん」が人気なのはわかるが、「銀牙」受容がわからない、と。そこからなぜ「銀牙」を輸入しようと思ったのかわからないと論点は配給側に行く。どういう経緯でそうなったのか、結構、楽しく議論していた。清岡は「名犬ラッシー」の二番煎じ商法とか申していたし。そこから足立さんが研究を進める上でのヒントとなることをおっしゃっていて、VTRのパッケージを見つけ、現在も存在すれば、そこから配給会社に問い合わせてみれば?って話になっていた。その後、足立さんは他のポスターに向け去る。

 気づけば終了時刻の、というよりシンポジウム第2部開始の14時になっていて、解散の流れになっていたので、清岡は昨年の三国志学会第九回京都大会での自分の研究報告のレジュメをお二人に渡していた。そこからマシマさんがタイでの「三国志演義」受容の話をされていて、思わず清岡は(時間的な余裕で)昨日の懇親会や座談会で話しておきたかったと言葉を申し上げていた。前述のとおりマシマさんのご報告と足立さんのとは時間が被っていて、清岡は後者に足を運んだ引け目で懇親会等でマシマさんに話しかけることはなかっただろうけどね。
 その後、秦先生にはレジュメの内容の簡単な紹介と、今、抱えている研究テーマについて申し上げ(例の『月刊コミックトム』や『別冊コミックトム』の読書欄の話)、前述したようにそういった質的研究についての研究手法についてご教授願っていた。キーワードとしては「質的データ分析」「M-GTA」で、それが切欠での研究手法検討は後述で。

※関連記事 メモ:はじめての京劇V~三国志「古城会」(2015年4月18日)

 それからシンポジウム「「はだしのゲン」の多面性」の第2部「マンガ家が読む「ゲン」」で印象に残ったのは、「はだしのゲン」でのきのこ雲描写は描かれる当事者としては見ることができず、その視座からいってアメリカ側の記録映像からの取材は明らかなんだけど、それをも承知で伝えようとする意気込みとか、他のマンガ作品の呉市からの描写は地上の視座でゆがんだきのこ雲描写とか、西島大介先生が「ディエンビエンフー」の舞台にベトナム戦争を選んだのは中近東を選んだ場合に比べれば叩かれにくいという逃げと言い切るかっこよさとか、私見では歴史マンガとしての議論だった。それと司会の吉村和真先生だったか、「はだしのゲン」が連載された当時のマンガの潮流で、ユートピアとディストピアというのがあって、同じ『週刊少年ジャンプ』で連載していた鳥山明先生は『Dr.スランプ』でユートピアを描いていたが、自作の『ドラゴンボール』で描くようになったという話が印象的だった。それとYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)が左翼のポップ例として言及されていたのが印象的だったかな。
 登壇者のご発言を聴くに、自分なりの「はだしのゲン」読書体験を思い出していた。シンポジウムでは単行本第2巻が(被爆描写があって)一番こわい巻だという話だったが、自分の記憶では第1巻が一番怖い巻だった。なぜそう思い込んでいたかというと、おそらく第1巻は戦時中とはいえ何気ない日常生活からの突然の被爆描写で、どん底まで落とされるのに対し、第2巻はそのどん底からの復興と主役の成長で、前向きな気分になるからだと思った。

・西島大介 (DBP65) on Twitter
http://twitter.com/DBP65/

※新規関連記事 三国志外伝 朱儁伝(竹林クロワッサン2022年1月16日)

・Twitter / DBP65: 日本マンガ学会シンポジウム終わりました。ありがとうございました。 ...
http://twitter.com/DBP65/status/615084005919055872

 そうそう上記のStatusにあるように、西島先生が自分たちを客観視し、番組「アメトーーク!」でのノリ的に「僕たちはだしのゲン芸人」と面白がる様も印象的だった。良いな、そのノリ。
 16時終了のところ、16時30分前ぐらいに終わり、日本マンガ学会大会自体の閉会式が行われ、解散となる。

 清岡は「広島市まんが図書館 施設見学会」に行こうと意気込んでいて、シンポジウムの会場でその図書館へアクセスするアナウンスがあったが、よく聞こえなかったので、当初の予定通り市電で行くことにした。ちなみにこういった見学会は日本マンガ学会でほぼ毎回行われていて…と書きつつ、前回はなかったが、その前が北九州市漫画ミュージアムのさらにその前が明治大学米沢嘉博記念図書館と、その開催会場近くのところが選ばれていたんだけど、今回は徒歩圏内になく、同じ広島市内とはいえ結構、離れていた。

※関連記事 玄徳(福岡県北九州市小倉片野)

 市電の駅までは足立さんとご一緒し、前述した、懇親会までご自身の研究報告の反響を勘違いしていた話を伺っていた。あと、懇親会の終わりに足立さんが伊藤剛先生になりやら催促されていたのは何か気になっていたのだけど、前回、高知(日本マンガ学会第11回大会)で報告した件の論文化についてだそうな。伊藤先生が足立さんの論を取り上げる際に引用元がないのは不便で、論文化を待ち構えているそうで。
 清岡は南回りに17時から17時30分までの見学会に行こうとしていたので、広島駅への帰路の足立さんとはここでお別れとなる。

・広島電鉄
http://www.hiroden.co.jp/

 1号で皆実町六丁目に行き、降り際に160円を払い、乗換カードを頂く。これにより、追加料金なしに乗り換えができるそうな。そこの時点ですでに17時前になっていて、こりゃ間に合わないな、と思いつつ、まぁ、日本マンガ学会大会自体が押していたので見学会もそこらへん許容して時間がズレているだろうとあきらめずに5号の電車を待つ。電車に乗り込み、比治山下駅で降り、事前に調べていたとおり道路を通り小走りで比治山を登る。ここに「はだしのゲン」の作中でも出てくるABCC(現・放射線影響研究所)があったんだな、と思いつつ(今、地図を見ると、山の南にそれがあって、山の北に図書館がある)。
 汗だくになりながら17時15分ぐらいに到着する。その日は休館日で、自動ドアが閉まっていたんだけど、インターホンで係りの人に来てもらってあけてもらう。見学会はすでに2階の開架のところではじまっているとのことだった。2階に上がると担当の人がガッツリ見学者たちに説明する場というわけではなく、担当の人の説明を聞く人や自由に館内を回る人や様々だった。

・広島市まんが図書館 - 広島市立図書館
http://www.library.city.hiroshima.jp/manga/

 なので、すんなりと見学会の場に入ることができていた。それで見学会に参加された地元の人によると、山の上にあるというのに子どもによく利用されている図書館だそうで、イスに寝転がってマンガを読んだり、親がそこの図書館にあずけ、近くのマックスバリューに買い物にいったり、そういった利用例を耳にしていた。寝転がってマンガを読む様なんて、北九州市漫画ミュージアムのそれように作られたソファーでも京都国際マンガミュージアムの校庭でも見かける光景なので、どこも同じで、マンガは子供をリラックスさせるメディアなんだな、と。
 その状況から奥のパーティションで区切られた、広島にゆかりのあるマンガ家の作品を集めた「広島コーナー」の本棚に案内され、そこの説明を受ける。写真はかわぐちかいじ「太陽の黙示録」で、それは下記関連記事にあるように「三国志演義」関連作品だ。

※関連記事 太陽の黙示録

 気づけばすっかり予定の17時30分の時間が過ぎていて、逆にいつ終わるのか心配になっていた程だった。担当の人の話によると、目の前のバス停から出るバス(ひろしま めいぷる~ぷ)の最終が18時だそうで、それにあわせているそうな。清岡の予定は18時17分広島駅発の新幹線で、図書館の方にバスの予定を見てもらうと、広島駅からの発射時刻が同じく17分なので、間に合うか間に合わないかの時刻だった。混雑する日曜日だったので、図書館前からの出発時刻も予定通りではないだろうから、間に合わないと見ていたほうがよさそうだった。元々は交通費節約のため広島から三島までの一区間だけ新幹線に乗る予定で、その区間を延ばせば問題なく帰れるとその旨を図書館の方にもバス時刻を調べてもらった御礼とともに伝える。
 それで多くの見学者と共にバスに乗り込み、残念ながら広島駅のロータリーに入る前に発車時刻の17分になり乗り遅れることが決定する。駅では見学者だったお一人の方が新幹線の特急券を券売機で買うのに不慣れな様子だったので、それを教えて差し上げるという変な経験をした後、18時35分初ののぞみに乗る。やはり駅では広島カープのユニフォームを着た人が多い。
 18時58分に福山駅に到着し、19時3分に焼きあなごめし 1150円を購入する。19時21分発の姫路駅行きの列車に乗り込む。始発の三原駅で乗り込む予定だった列車だったが、充分に座れるほどすいていた。それにしても三原から姫路までの長距離を一本でいけるだなんてステキな感じ。で、焼きあなごめしはこんなものかな、と。長野駅のあのどれも美味しい駅弁が恋しい。弁当を食べながら日本マンガ学会のレジュメを見る。岡山あたりから居眠りしてた。

※次の三国関連の記事 『日本まんが』第弐巻で三国ネタ

 それでここまでが日本マンガ学会第15回大会の話で、ここからが本題なんだけど、すっかり力を使ってしまったんで要点だけでも書いていきたいところだ。
 冒頭でも書いたように連環画からの研究の余地が残されていて、何らかの研究報告する場があれば、という条件で研究テーマを思い浮かべる。それは「三国演義連環画」(上海人民美術出版社1956-1964年)を軸としたもので、それが日本に、主に制作側に受容される前後で、三国マンガの表現がどのように変化するか、あるいはマンガ以外でのゲームへの影響なんかも含めて論ずるものだ。

※関連記事
 メモ:知られざる中国〈連環画 (れんかんが) 〉 ~これも「マンガ」?~ (2015年5月24日30日)
 三国演義連環画(1956-1964年)

※追記。『国際マンガ研究』Vol.5に焦凡さんの「『漫画』と『連環画』の間:張光宇の連環漫画『西遊漫記』について」という論稿があるそうで、それを読んでまた刺激をうけたいな、と。

 そしてもう一方のテーマが引き続き『コミックトム』の三国についてのオーディエンス研究であり、前述したように「質的データ分析」というキーワードを頂いており、今ちょうど、研究材は決まっているもののその切り口に悩んでいたので、その分析手法を突破口にしようと思っていた。
 そこでまず到達したWebページが下記。結果的にそのページが文献をあたる際の起点となった。

・モデル構築手法としてのM-GTA | Design Thinking for Social Innovation
http://designthinking.dangkang.com/m-gta/

 M-GTAは木下康仁先生がGTA(グラウンデッド・セオリー・アプローチ)を修正(モディファイド)したものなんだけど、元のGTAを知るのに、木下生の著作にあたることにした。そして今、読んでいる最中だけど、定義としてはグラウンデッド・セオリーが理論のことであり、グラウンデッド・セオリー・アプローチが研究手法とのことだそうな。GTAはデータから理論を生成するのを標榜しており、展覧会「知られざる中国〈連環画 (れんかんが) 〉 ~これも「マンガ」?~ 」のギャラリートークの後に、小耳に挟んだベルント先生のコメントに応えるような研究を夢見てた。ところがGTAの対象は現在進行形の社会状況であり、そういったところでデータ収集しつつ、その質問項目をも追加・修正していくものなので、30年もの前の雑誌の記述を対象にする場合は不向きなのだろう。でも、こういった検討は無駄にはならず、「質的データ分析」全般を知るのに役立つと思う。
 とりあえず今、『月刊コミックトム』も『別冊コミックトム』も当たるのを中断しており、何が適切な分析手法か糸口を見出さないとね。

<7月26日追記>

・グラウンデッド・セオリー論 17 | 弘文堂
http://www.koubundou.co.jp/book/b185664.html

 まず木下康仁『グラウンデッド・セオリー論』(現代社会学ライブラリー、弘文堂2014年12月発行)を図書館から借りて読んでいたけど、これはどちらかというと、グラウンデッド・セオリー史というような内容で入門書にはいいかもしれないがこれからこの分析法や理論創出を学ぼうとすると不向きで、次に読んだのが、木下康仁『グラウンデッド・セオリー・アプローチの実践』(弘文堂2003年8月15日発行)だ。

・グラウンデッド・セオリー・アプローチの実践 質的研究への誘い | 弘文堂
http://www.koubundou.co.jp/book/b156903.html

 こちらはタイトルどおり実用的で、木下先生考案のM-GTAについて書かれてある。実際にデータ群から具体例をいくつか切り出し、それらの共通する部分から、概念を抽出し、分析ワークシートに記入していく様など、具体性がともなっていてイメージしやすい。

※追記 レポ:兀突骨に行くまで(2015年8月1日)

※追記 メモ:CafeBar曹操(広島県広島市中区流川町)

※追記 三國志研究第十号(2015年9月5日)

※追記 『コミックトム』をM-GTA 1st step(2015年8月下旬)

※追記 人形劇三国志 大百科(1993年4月1日)

※追記 1980年代日本における「三国志演義」翻案作品のファン層形成(2016年6月25日)

※追記 レポ1:8/1北九州 兀突骨で酒池肉林?!(2015年8月1日)

※新規関連記事 らーめん鳳雛(東京都練馬区江古田 2017年2月14日-)

※新規関連記事 歴女と歴史コンテンツツーリズム(2017年4月20日)

※新規関連記事 日本人と遠近法(1998年8月20日)

※新規関連記事 メモ:学習漫画のドラマトゥルク(2020年7月5日日本マンガ学会オンライン研究発表会2日目)

※新規関連記事 三国志ニュース16周年(2020年10月22日)

※新規関連記事 メモ:神モデル預言者モデルというのを知った(日本マンガ学会第21回大会2022年6月18日)

※新規関連記事 リンク:原作者・四葉夕トに聞いた 『パリピ孔明』原作&アニメ楽屋裏話(2022年6月18日21日)

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