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久保田千太郎/作・園田光慶/画 三国志(1979年6月-1984年12月)


  • 2014年9月12日(金) 06:44 JST
  • 投稿者:
    清岡美津夫
  • 閲覧数
    4,352
マンガ ※関連記事 メモ:「三国志演義」を翻案した少年マンガの1980年代までの変遷(2014年6月28日)

 上記関連記事で書いたように日本マンガ学会第14回大会にて「「三国志演義」を翻案した少年マンガの1980年代までの変遷」という報告を行って、そこで主に三国マンガ六作品を取り上げた。元々3月末提出の要旨の段階では五作品だったんだけど、
 そこから6月末の研究報告までに加わった一作品が何かというと、下記の作品になる。

[4.5]久保田千太郎/作・園田光慶/画『三国志』、1-6、「GLOBAL COMICS」学習研究社、1979年6月-1980年8月発行、B6版相当(19cm)、後に加筆され:1-15、「中国歴史コミック」講談社、1983年7月-1984年12月発行、B6版相当(19cm)

※関連記事 久保田千太郎/作・園田光慶/画『三国志』(講談社漫画文庫)

 ちょうど横山光輝『三国志』の連載期間中のマンガ作品なので、比較対象としてはもってこいなのだけど、要旨を提出した2014年4月の段階では下記に引用する理由で扱わずにいた。

※引用元記事 天地を喰らう(1983年6月7日-1984年8月21日)

━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 それと、発表時期が近い、久保田千太郎/原作、園田光慶/マンガの『中国歴史コミック1 コミック三国志(1) 劉備乱世に起つ』(定価500円、講談社1983年7月10日発行 恐らく7月6日発売)についても見てみる。帯にNHKの『人形劇三国志』のことが書かれてあってそこだけ見ると便乗商品ぽく感じてしまう。7月6日に1,2巻発売(推測)で、8月6日に3,4巻、9月6日に5巻といったペース。吉川英治『三国志』(小説)の先祖伝来の剣の件が普通に出てくる。そして日本の作品としては珍しく桃園結義にちゃんと祭壇が描かれてある。この時点では全10巻とされたが、結局、全15巻で劉備が最後に夷陵に出軍して終わり。最後のコマは1ページで船団を俯瞰した絵だ。15巻は1984年12月17日発行、12月6日発売。これに先んじて同じ内容で1979年から1980年まで4巻分、学習研究社から発売されているが、どういった初出なのか調べ切れてないどころか手掛かりすらも掴めてない状況だ。
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 それでも諦めきれなかったのか、続けて、園田『三国志』の冒頭部分について下記に引用するようにメモをとっている。ちなみに京都国際マンガミュージアムで講談社版を閲覧した。

※引用元記事 日中における中国四大名著のマンガ比較研究(同志社大学2013年3月21日)

━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・渡舟の上で張飛と劉備が会う。劉備が高価な剣を持つ。張飛は岸で眠る関羽を「関羽兄貴」と呼び、旧知の仲。
・黄巾党からさらわれた娘を助ける。張飛が二人目を倒すときは地面にめり込むという、アメリカの(アニメの意味での)カートゥーン的表現がなされていた(そんな唐突な)。劉備の斬首。生首表現。
・その娘の名は「芙蓉」、劉備に芙蓉姫と呼ばれる。こんなところにも吉川英治『三国志』の影響が。
・コマから飛び出る表現多い。見開き2ページ1コマ表現あり。
・先に副将の鄧茂を倒して、劉焉の城のところに行って桃園結義 鎧が小札の集まったやつ。
・桃園結義には珍しく祭壇が描かれている。
・曹操が長髪である視覚的要素は久保田『三国志』から『天地を喰らう』と伝播している
・関羽の姓の由来の説話を取り入れていた。
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

・京都国際マンガミュージアム
http://www.kyotomm.jp/

 後日、国立国会図書館 国際子ども図書館では学習研究社版の4巻が所蔵されていて、それを見てみると、発行年月日が書かれておらず、手書きの鉛筆でそれっぽい年月が書かれているのみだった。

・国立国会図書館国際子ども図書館
http://www.kodomo.go.jp/

 前述のように園田『三国志』を実際に読んで、メモしたように、1970年代の三国作品として興味深い内容だったため、何とか研究報告に加えようと思っていた。研究対象としては発表年月は必要なデータであるため、何とかして学習研究社版の発売年月について探し出そうとしていたのだけど、実際の単行本に年月の記載がないため、図書館関連を諦め、別の方法を探す。そうして行き着いたのが、下記サイトの下記ページだ。

・古本まんが専門店=名古屋コミックス
http://www5d.biglobe.ne.jp/~mangaya/

・漫画・劇画よもやま話
http://www5d.biglobe.ne.jp/~mangaya/yomoyama.htm

 該当個所を上記ページから下記へ引用する。

━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1979 『三国志1嵐を呼ぶ狼たち』(学習研究社・6月26日)※久保田千太郎
1979 『三国志2落日は血の彩』(学習研究社・8月10日)※久保田千太郎
1979 『三国志3男どもの荒野』(学習研究社・12月1日)※久保田千太郎

1980 「ゴングまで/アフター・アワーズ」『ビッグコミック増刊』1月1日号※狩撫麻礼
1980 『三国志4群狼牙をむく』(学習研究社・2月10日)※久保田千太郎
1980 「ゴングまで/アップ・ダウン」『ビッグコミック増刊』4月10日号※狩撫麻礼
1980 『三国志5関羽・一杯の酒』(学習研究社・5月20日)※久保田千太郎
1980 「ゴングまで」『ビッグコミック増刊』5月23日号※狩撫麻礼
1980 『三国志6血と汗と虹と』(学習研究社・8月25日)※久保田千太郎
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 このページのURLを前述のレジュメの注に挙げ、[4.5]と番号付けした上で六作品目の三国マンガとして研究報告で扱った。その時の一部の文章をレジュメから下記に引用するように示す。

━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 [4.5]は、久保田千太郎が原作を担当し、『厳窟王』『三銃士』『水滸伝』などの古典のマンガ化するレーベル「GLOBAL COMICS」における描き下ろし作品の一つであり、後に三年弱の期間を挟み、別の出版社にて引き継がれ完結する。作者は「ありかわ栄一」名義で1960年前後に貸本劇画で活動しており、[4.5]でその流れを汲む作風を見せる。全体的にシリアスであるが、主要人物の張飛がコメディーリリーフとしての役割を担う。「GLOBAL COMICS」における[4.5]は、『三国志演義』毛宗崗本の第六回の途中まで進み、その後、引き継がれた版は第八十四回の冒頭相当で終わる。
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 研究材として用いると決まったからには、研究報告まで三週間前だったものだから早速中古で講談社版を全巻購入する。6月7日。すでに国際子ども図書館でのコピーを用いて、4巻に関しては、学習研究社版と講談社版とを比較し、ページ数はおろか同じ番目のページに同じ絵があることも確認していたので、安心して使える。
 先に冒頭部分のコメントのみ示したが、話が進むに従って、冒頭で多彩だった三国要素が減っていき、作画に関しても変化していき、そのことについて、6月15日に、下記のようなメモを残していた。

━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
手元にマンガの久保田千太郎/作、園田光慶/画『三国志』全15巻があるが6巻までの学研1979年6月-翌年8月を園田「黒三国志」、7巻からの講談社1983年11月-1984年12月を園田「白三国志」と名付けたいぐらい、内容じゃなくて濃淡的に。マンガ家の負担軽減研究の貴重なサンプル
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 後半部分で頻出する複写技法については、件の研究報告で触れた。人馬をコピー元にして、それを複写や鏡像複写し、武器を持たせたりとマイナー・チェンジし、一つの群衆図に仕上げる技法だ。それは一度ならず、頻出し、段々といわゆる「ポップ・アート」のようになる(マンガもポップ=大衆だと言えるので、カギ括弧付き)。
 またそういった負担軽減について数値として明確に現れやすいようにコマ数を数え、同時代の横山光輝『三国志』や本宮ひろ志『天地を喰らう』、ちょうど三十年前の福井英一『少年三国志』とも比較した。それは二ヶ月余り後の「三国志学会 第九回 京都大会」での「なぜ横山光輝は官渡の戦いを描かなかったのか」にも下記に引用するように用いる予定だ。

━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 これをより詳細にみるために、横軸に発売した年月、縦軸にコマ数をとりプロットした曲線が図9となる。描き下ろし単行本である園田作品の数値は発売した月のコマ数とし、週刊連載の本宮作品の数値は月ごとの累計とし、比較のために月刊連載である前述の福井作品のちょうど30年前のコマ数もプロットする。そうするとページ数と違い、第一期の刊行が終わると園田作品のコマ数が減少し、横山作品のコマ数に近付き下回る様が判る。月刊連載の横山作品のコマ数は440コマ前後で安定するのに対し、週刊連載の本宮作品はページ数と同じ理由で、月ごとに連載回数が異なるためコマ数が安定しないが、他の2作品に比べ少なく、加えて全体的に減少傾向にあることがわかる。いずれにしてもこれら三作品のコマ数は1953年と1954年の福井作品のに比べ大幅に増加していることが判る。
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 横山『三国志』と園田『三国志』が同時代として少なくとも前者の読者には意識されていたようで、『月刊コミックトム』1983年9月号のpp.226-227の読者コーナー「MY TOM」には下記に引用するような12歳の投稿がある。

━引用開始━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ぼくからの注文としては、トムの増ページ(50円ぐらい値上がりしたって、そこへ、あっと驚くような作品をぶっつければいいんです)、新人賞の設置、(COMに負けない充実したやつ)、三国志のパワーアップ(K社からはそのまま「三国志」なる単行本が、出され始めました)、もっと横山先生のオリジナルを加えてください。たとえば架空の人物をもっと出すとかやってください。なお今月は一応はね回って喜べる内容でした。
━引用終了━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 実のところ、これは後にマンガ研究者として有名になる宮本大人氏のもので、冒頭に掲げた関連記事でも書いたように、それは同姓同名別人ではなくご本人のものだそうで、日本における三国文化受容史的に面白いことになっている。

 話を戻して園田『三国志』の後半には、研究報告の本筋とは関係ない、触れてないネタどころがたくさんあって、過去何度もネットでネタにされていてテンプレート化もされているので(※追記。09/26 (金) 00:10:46に「園田陸遜」という検索語句があった)、そういった受容の仕方などのオーディエンス研究も含め、研究材としては開拓の余地がまだまだありそうだ。

※追記 SWEET三国志(1992年2月25日-1995年5月25日)

※追記 メモ:東方書店(2016年7月30日)

※追記 レポ:8/6北九州 兀突骨で酒池肉林?!(2016年8月6日)

※追記 中国の歴史 4 英雄たちの時代 ―孔明と三国志―(1986年8月20日発行)

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