以前、手元のサイトへの検索ワードで多いのが、「三国志 地図」って書いたけど、それと同じぐらい多いのが、服飾関係、「三国志 服装」とか「三国時代 衣服」とかまぁ衣装とか冠とかそういった類。
・三国志 地図
http://cte.main.jp/newsch/article.php/242
当時の服飾をきかれた場合、私はとりあえず基本の史料となる続漢書の輿服志をおさえているかどうかをさぐってから、そこからおすすめの本をあれこれあげていくんだろうけど。
http://cte.main.jp/c-board.cgi?cmd=ntr;tree=1550
http://cte.main.jp/c-board.cgi?cmd=ntr;tree=62
それらの中で「中国古代の服飾研究」はおすすめだけど、これは三国志の時代というより中国古代全体を時代順に紹介しているので、三国志の時代あたりの服飾の本にさく割合は小さくなっている。
その点、林 巳奈夫/編「漢代の文物」(京都大學人文科學研究所1976年12月15日発行、新版は1996年)の文物はその名の通り、服飾だけじゃないけど、漢代のものばかり。三国志の時代は短いし、ピンポイントな史料はなかなかないので、それより一つ前の時代の漢代のものが一番、参考になる。
この本は出土史料(畫像石など)や文献史料を元に漢代の文物を浮き彫りにしている。本文と図版が分かれているタイプの本で、本文が592ページに対して、図版は232ページもの分量。挿図にはそれぞれ何ていうものなのかちゃんとキャプションがついているし、出所も別のページに明記されている。
どんな文物が取り上げられているかは下記の目次からの抜粋を参照のこと。
一 衣服、はき物/二 かぶり物、その他身につける物/三 染織/四 建物/五 什器/六 農具/七 乗物/八 娯楽/九 楽器/一〇 武器、旌旗/一一 書契
例えば、「二 かぶり物、その他身につける物」(つまり冠や綬など中心)のところだと、続漢書の輿服志の記載の流れにそって出土史料と対応させながら先行する研究の原田淑人/著「漢・六朝の服飾」(東洋文庫1937年発行)をふまえ、漢代の文物について論じている。
※追記
林 巳奈夫 先生、死去
※追記
孫機/著『漢代物質文化資料図説』
※追記
メモ:三国創作のための扶助会
※追記
『中国古代の生活史』復刊(2009年12月15日)
※追記
メモ:鎧 and リンク:東アジアにおける武器・武具の比較研究
※2011年4月7日リンク追記
・林 巳奈夫「漢代の飮食」(『東方學報』48巻、京都大学人文科学研究所1975年12月10日)
http://hdl.handle.net/2433/66533
※22:45:28に「林巳奈夫氏の「漢代の飲食」(東方学報)」と検索されたんで、何かと思ってCiNiiで検索すると、無料公開されていることに気付く。冒頭を読むと、元々は『漢代の文物』の一章として計画されたとのことで、確かに論法が似ている。
※追記
リンク:「漢代の飮食」
※追記
リンク:模範解答でいいのか(ニュースな史点2012/4/30の記事)
※追記
議事録:三国創作における視覚的研究材についての情報交換会(仮題)(2012年7月5日)
※追記
京都で哲舟さんを囲む会(2013年2月5日)
※追記
メモ1:三国志フェス2013(2013年9月28日)
※追記
中国における墓主図像の研究(神戸大学2002年9月30日)
※追記
レポ:7/26北九州 兀突骨で酒池肉林?! ラウンド3(2014年7月26日)
※追記
十大三国志ニュース2015
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(ここに書くことじゃない?)
拙サイト掲示板にお声かけ頂いたのにレスが遅れてしまったので、こちらへ参りました。すみません。
『漢代の文物』いいですねえ!! これが近くの図書館にある清岡さんがうらやましいです!図版も多く、思わぬものの記述があって、個人的にはウヒャアとなったりしております。(むかし絵に描く時に分からなくて、テキトーに描いたモノの考証があったり。)
でも、私の日本語(漢文?)読解力のなさのせいか、よく分からない所もあり。。。。
今度どこかの絵チャットでも使って、『漢代の文物』を読む会でも開きませんか?(オイ)
今年もよろしくお願いします。
あ、あの書き込みは元々、スルー前提の書き込みなので(汗)、お気になさらずに。
ご丁寧にここに書き込んでいただきありがとうございます。
「漢代の文物」の本文はまだまだ読んでいないところが多いですが(汗)、冠のところまででもかなり発見が多いですね。
挿図だけをぱらぱら見ていても、既存の三国志もののドラマや漫画と全然、ちがうので、逆に「漢代の文物」に忠実にすると、目新しくて良いんじゃないかと思うぐらいです。
(個人的には武冠付きの[巾責]や膝をついて乗っている馬車がみたいです・笑)
絵チャット、良いですねー……というか他に参加者がでるかどうか気になるところです(汗)
人数がそろってちゃんと開けたら、なんか既存イメージが崩されて面白そうなんですがね。
『漢代の文物』では、研究者レベル・学会レベルではある程度知られていた本で、自分などはあれをもとに三国時代をイメージしていたものです。本来は研究所内の報告書ということで初版発行部が少なく、また市販されなかったと聞きます。再版出版時に林先生は図版を足すなり補足をするなりしたかったらしいですが、出版事情でそれもかなわなかったそうで。。。それでもあの仕事はすばらしいですね。
ちなみに(おそらく『漢代の文物』をぱくってor意識して作られた本で)中国で出版された『漢代物質文化図説』という本があり、こちらは古書店でたまに見ます。4000円弱ですから、図版数や分量がはるかに及ばないものの『漢代の文物』的な目的でイメージをつかむことができますよ。
おぉ、「漢代の文物」を元にイメージしてたんですか。それはうらやましいですね~
私は三国志ものの漫画やゲームをみては、頭の中で、イスのある光景や腹巻きタイプ(?)の鎧や堅そうな箱形の小さな冠のイメージを消してました。消したのは良いのですが、それにかわるイメージがないのでもどかしい思いをしていたものです。
「漢代の文物」の増補版、出てたらよかったですね。残念です。でも確かに今のでも充分、素晴らしいです。
http://cte.main.jp/newsch/article.php/207#comments
↑以前、おっしゃっていた「漢代物質文化資料図説」ですね。それぐらいの値段でしたら、買っておくのもいいかもです(笑)
…といういきなりわけのわからんノリで始めますが、そういえば一年ぐらい前にすごくひっかかることをネット上で見かけたことを今、思い出しました。
http://cte.main.jp/newsch/article.php/62#comments
↑ここのコメント参照です。
今だったら、件の疑問に答えられるようになったんだなぁ、と感慨深いものがあります……いやこれもみなさまのおかげなんですが。
後漢時代の県長クラスの冠は一梁の進賢冠です。武弁大冠は基本的に武官の冠です。
まず進賢冠と武冠の記述について続漢書(後漢書)輿服志より。
進賢冠、古緇布冠也、文儒者之服也。前高七寸、後高三寸、長八寸。公侯三梁、中二千石以下至博士兩梁、自博士以下至小史私學弟子、皆一梁。
(略)
武冠、一曰武弁大冠、諸武官冠之。
というように武冠は基本的に名前の通り武冠がかぶるものでしょうね(多分、県長は武官ではないかと)。
一方、進賢冠は上記にあるように位により梁の数が変わります。
中二千石以下、博士までが兩梁(二つの梁)で、博士以下から小史や私學弟子は一梁とのことです。
ここで博士の位はどれくらいかというと、続漢書(後漢書)輿服志の注に引く東觀書によると、
尚書・諫議大夫・侍御史・博士皆六百石
ということで、六百石のようです。
県長は続漢書(後漢書)百官志によると、
屬官、毎縣・邑・道、大者置令一人、千石;其次置長、四百石;小者置長、三百石;侯國之相、秩次亦如之。
ということで、県の大きさによって、四百石か三百石なので、おそらく一梁進賢冠ってことになるでしょう。
……というのが答えなんですけど、今さら書き込みに行くのも……って私のことだから書き込んでそうですが(汗)